ギラギラしないグランエース
昨年末に発売が開始されたトヨタ グランエースは、ASEANなどに向けて作られている商用車のハイエース(日本国内向けとは異なる)をベースに開発されました。従ってアルファードやヴェルファイアのようなFFではなくFRとなります。
ただし、商用車ベースとはいえその存在感は十分。アルファードなどのギラギラ感が薄れており、こちらの方が好ましく感じる方も多いでしょう。
室内のレイアウトは、3列シート6人乗りに加え、4列シート8人乗りの2タイプを設定。3列シートの「Premium」は、2列目ならびに3列目の4席それぞれに、ゆったりとくつろげる専用のエクゼクティブパワーシートを採用し、座り心地の良さに加えて、ロングスライド機構やパワーリクライニング機構、パワーオットマン、快適温熱シート、格納式テーブルなどを装備し利便性や快適性の良さも追求しています。
また、4列シートの「G」は、2列目にエグゼクティブパワーシート、3列目にレバー操作でシート調整可能なリラックスキャプテンシートを設定。4列目には、ワンタッチで座面が跳ね上がる6:4分割チップアップシートを採用するなど、乗車人数や手荷物の量にフレキシブルに対応しています。
Vクラスは累計3万台のロングセラー
一方のメルセデス・ベンツ Vクラスも、商用車ヴィートをもとに作られています。
1998年に欧州のミニバンとして初めて日本に導入された「Vクラス」は、ワイドでスクエアなスタイリングと広く上質な室内空間にアレンジ自在なシートを備え、プレミアムミニバンというセグメントを創出しました。
その後も、2003年、2015年のフルモデルチェンジを経ながら、7名乗車のシートレイアウトや左右両側の電動スライドドア、リアエンターテインメントシステムなど日本のユーザーニーズにあわせて装備や専用アクセサリーの拡充を図ってきたことで、累計販売台数約3万台となるロングセラーモデルとなりました。
現行Vクラスは、全ての乗員が快適に過ごすことが出来、3点式シートベルト一体型のシートや多彩なシートアレンジが可能なシートレイアウト、FRレイアウトなどこれまでのVクラスのコンセプトを継承しながらも、安全性、快適性や質感などあらゆる面で進化しています。
なおグランエースはディーゼルエンジンのみですが、Vクラスはディーゼルとともにガソリンエンジンもラインナップしていることも大きな特徴といえるでしょう。
サイズはほぼ一緒ながら、エンジンはグランエースが大きい
では諸元表をベースにサイズなどを比較してみましょう。
グランエースのサイズに合わせてVクラスは注文生産のエクストラロングを選びましたが、全長5,140mmのロングであれば764万円、同じく4,895mmのアバンギャルドであれば740万円という値付けとなっています。
ボディサイズはほぼ一緒ですが、Vクラスのホイールベースが210mm長いのは注目すべき点です。つまり、室内がそれだけ広くなっていると捉えられるからです。
一方、エンジンに関しては排気量が約600cc少ない分、Vクラスの方が出力、トルクとも小さくなっています。ただし、トランスミッションは1速Vクラスの方が多いので、その分きめ細かい制御が可能となっています。
シートの使い勝手の良さはグランエースの勝利!
さて、3列、グランエースでは4列仕様もあるシートレイアウトのやりやすさですが、これは圧倒的にグランエースです。とにかく操作がしやすく軽いのですが、Vクラスは全てが重い。まず非力な女性には操作は不可能と思ったほうがいいでしょう。
多人数乗車で疲れないのはVクラス
では、運転支援システムはどうでしょう。どちらも必要にして十分な装備が搭載されていますが、アクティブクルーズコントロールが完全停止維持まで出来ないのはグランエースの惜しいところです。
Vクラスは0-200km/hまで対応可能ですから、高速の渋滞時でも疲労の軽減には貢献しますし、更にその精度もメルセデスならでは。不満はほとんどないといっていいレベルです。
こういったクルマは多くの場合、多人数での移動で使われることが多いでしょう。都内などでの移動以外に、空港までの送迎や中、長距離の高速移動も考えられます。
そういったシーンで輝くのはVクラスです。ミニバンのように背が高いクルマでは、どうしても横風に弱くなるもの。それに対してVクラスは強い横風を検知すると、その強さと方向に応じて車両がコースから外れないように自動的にサポートする、クロスウインドウアシスト機能があるので安心です。特にこういったシチュエーションでは細かいステアリングの修正舵が入るので、後席住人は妙にゆすられてクルマ酔いを誘発してしまうことが多いのですが、それを防いでもくれます。
また、直進安定性が非常に高いので、同じ理由で後席は快適に過ごすことが出来るでしょう。そういったことを踏まえると、同じ商用車出身とはいえ、明らかにVクラスの方が、後席でも快適に過ごすことが出来るといえるのです。
[筆者:内田 俊一]