長崎停泊クルーズ船でクラスター タクシー会社休業 乗組員利用で 「怖い」住民ら動揺

 三菱重工業長崎造船所香焼工場(長崎市香焼町)に停泊中のクルーズ船内で、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した。県が感染拡大防止のため乗組員の乗下船の自粛を要請した3月13日以降、停泊しているクルーズ船3隻の乗組員がタクシーとバスで同造船所から移動していたことが22日、分かった。タクシー会社1社は休業を決めた。

 観光タクシー(長崎市)は4月以降も最近までクルーズ船乗組員の送迎を担っていた。22日の発表を受けて、5月6日までの休業を決めた。県の自粛要請は聞かされておらず、勤務を交代する乗組員らを乗車させ、長崎空港やJR長崎駅との間を往来したという。
 「検疫や2週間隔離を経て入国したはずで安全と信じていた。法的にも運送拒否はできない」と馬場雅朗社長。乗務員に発熱などの症状はないが、「感染者を乗せた可能性を否定できない。拡散を防ぐ社会的責任を果たす」として、休業と社名公表を決断した。
 別のタクシー会社は、4月以降も12日まで複数回、市の繁華街から造船所まで乗組員を乗せた。担当者は「感染者がいないといいが」と不安を口にした。
 県交通局は3月26日と27日に乗組員を市内のホテルや長崎空港に送るため、53人乗り(補助席を含む)の貸し切りバス1台を手配。何人乗車したかは確認できていない。同局は「帰国者がいると聞き、局独自の判断で対応した」としている。
 地元住民や造船所の従業員らの間に動揺が広がっている。香焼町内の自治会長、大石史生さん(42)は「近所の人通りがぱったりとなくなった」と地域の変化を明かす。乗組員に関する真偽不明のうわさも流れ「何が本当か分からない」。地元の学童保育で主任指導員を務める梅井琴恵さん(65)は「香焼と地名が出るだけで不安。休校も始まり、子どもたちが安心して過ごせるようにしたい」と話した。
 一方、造船所で働くパートナー企業の男性(63)は「客船の修繕受け入れは仕方ない」と複雑な様子。「ウイルスは目に見えないので自分にもうつるんじゃないかと怖い」と明かした。


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