2006年ア・リーグMVPの再投票 MLB公式サイトが特集

今年1月、全米野球記者協会の投票で「準満票」を獲得してアメリカ野球殿堂入りを決めたデレク・ジーターは、華々しいキャリアのなかでレギュラーシーズンのMVPを受賞した経験がない。しかし、MVP投票で3位以内に3度ランクインしており、なかでも2006年はジャスティン・モーノーに14ポイント差の2位だった。この年のモーノーはMVPに相応しかったのだろうか。メジャーリーグ公式サイトのマーク・フェイサンドは、同サイトの記者たちによる再投票の結果について特集記事を公開している。

2006年のモーノーは、リーグ8位の得点数に終わったツインズ打線のなかで打率.321、34本塁打、130打点、OPS.934の好成績をマーク。しかし、打撃3部門の数字で見れば、デービッド・オルティス(.287/54/137)、ジャーメイン・ダイ(.315/44/120)、トラビス・ハフナー(.308/42/117)、ブラディミール・ゲレーロ(.329/33/116)なども好成績を残していたし、そもそもモーノーのOPSはリーグ8位に過ぎなかった。

一方のジーターは、214安打、118得点、97打点、34盗塁と各部門でハイレベルな数字を残し、打率.343はリーグ2位。ハンク・アーロン賞やゴールドグラブ賞を受賞した。一塁手のモーノーとは異なり、遊撃手としてこれだけの成績を残していることは称賛に値するだろう。

これらを踏まえ、まずは実際のMVP投票のトップ5を見てみよう(所属は当時)。

1位 ジャスティン・モーノー(ツインズ)
2位 デレク・ジーター(ヤンキース)
3位 デービッド・オルティス(レッドソックス)
4位 フランク・トーマス(アスレチックス)
5位 ジャーメイン・ダイ(ホワイトソックス)

これに対し、現在の価値観に基づいてメジャーリーグ公式サイトの15人のライターが再投票した結果は以下の通りである。

1位 デレク・ジーター(ヤンキース)
2位 デービッド・オルティス(レッドソックス)
3位 ヨハン・サンタナ(ツインズ)
4位 グレイディ・サイズモア(インディアンス)
5位 トラビス・ハフナー(インディアンス)

実際のMVP受賞者であるモーノーは、再投票では7位まで順位を落とした。Baseball-Referenceが算出しているWARによると、モーノーはサンタナ、ジョー・マウアー、フランシスコ・リリアーノに次ぐチーム4位に過ぎない。それは再投票の結果にも表れており、サンタナは再投票で3位、マウアーは同6位にランクインした。

モーノーのMVP受賞を後押ししたのは、不調でスタメンを外された6月7日以降、104試合で打率.362、23本塁打、92打点、OPS1.023という猛打を見せ、チームの逆転地区優勝を牽引した点だろう。6月7日時点で25勝33敗と低迷し、首位から11.5ゲーム差も離されて4位に低迷していたツインズは、シーズン159試合目で首位に並び、最終的には96勝66敗で地区優勝を果たした。

そして、再投票でモーノーに代わってMVPに選ばれたのがジーターだ。15人の記者から得た1位票は6票に過ぎなかったが、15人全員からバランスよく票を集め、オルティスを上回って1位となった。投手三冠を達成して満票でサイ・ヤング賞を受賞したサンタナが3位に入り、サイズモアとハフナーのインディアンス・コンビも順位を上げた。一方、実際の投票でトップ5に名を連ねたトーマスは11位、ダイは8位へ順位を落としている。

2006年にモーノーが見せた活躍は確かに素晴らしく、チームの逆転地区優勝の原動力となっていた。しかし、同僚のサンタナやマウアーも同様に見事な成績を残していたことを考えると、モーノーの貢献度が過大評価されたことも否めないだろう。当時、ニューヨークのメディアやヤンキースのファンが「ジーターがMVP受賞の最大のチャンスを奪われた」と感じたのは当然のことだったのかもしれない。

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