収容能力十分でない 長崎県医師会が「危機的状況宣言」 【インタビュー】森崎正幸会長

「医療の危機的な状況を県民に知らせたかった」と話す森崎会長=長崎市茂里町、県医師会館

 〈長崎市に停泊中のクルーズ船内で、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生したのを受け、県医師会は4月23日、「医療危機的状況宣言」を出した。このまま感染者の増加が進むと、通常の診療や救急医療への影響も避けられないと指摘。医療崩壊が危惧されるとして、感染拡大防止に向けた県民の協力を呼び掛けている。同会の森崎正幸会長(71)に、宣言の背景や長崎県の現状、見通しなどを聞いた〉

 -どのような判断で宣言を出すに至ったのか。
 医療の危機的な状況を県民に知らせたほうがいいと考え、4月上旬から県医師会内で検討を進めていた。福岡、沖縄で感染者が急増し、近県でも起き得るという危機感が強まった。その中でクルーズ船のクラスターが発生し、準備していた宣言を発表した。

 -これまで、対策にどのように関わってきたか。
 国、県、長崎大などと連携し、検査・医療提供体制の構築に協力してきた。長崎県は呼吸器感染症の専門家が多く、長崎大学病院感染制御教育センター、同大熱帯医学研究所もある。臨床、研究の両面で感染症には強いが、半面、患者の収容能力が十分ではない。(患者が急増すると)困ったことになる。

 -クルーズ船に関しては、市中感染の可能性が低いことなどが分かってきた。
 状況は推測でしかなく、感染発表(4月20日)から2週間経過する連休明けまでは目が離せない。市中で1、2人の感染が発生してもクラスターになり得る。少しでも感染の可能性があったら、かかりつけ医に相談して(車に乗ったまま検体を採取し、感染有無を調べる)「ドライブスルー検査」を受けてもらいたい。そうして早期診断・隔離を徹底しなければ、安心はできない。連休中の人の移動で感染が広がる恐れもあり、5月20日ごろまで状況を注視したい。

 -感染者の増加に備えた今後の取り組みは。
 県北、県央、県南でそれぞれ、感染症指定医療機関や協力病院以外に新型コロナ専用の病棟を確保できないか協議を進めている。また長崎市内の感染症指定医療機関の負担軽減のため、新型コロナ以外の患者をほかの病院で受け入れられないか協議中。ドライブスルー検査は県医師会の会員医師が協力しており、宿泊施設での管理にも医師が寄与できないか検討している。

 -会員医師にはどんな対策を呼び掛けているのか。
 感染者を診察しても、サージカルマスクの着用や手指の消毒の徹底など、濃厚接触者にならない対応を取っておけば感染することはなく、病院を閉鎖する必要もないということを強調している。常に感染者を想定しておかないと、いざというとき防御できない。ただ、マスクなどの防護具が十分になく、県医師会としても供給に努めている。

 -緊急事態宣言は延長の見通しで、問題の長期化は避けられない。
 ワクチン開発はすぐには難しく、治療薬開発も難航している。予防が重要だ。感染の波が来るたびにその都度、早期発見していかないと拡大は防げない。対応する医療従事者の身体的、精神的なサポートも必要。行政、医療者とも一つの方向に向かって進んでいる。ぜひ県民に支援してほしい。


© 株式会社長崎新聞社