FIELD OF VIEWデビュー25周年記念激レアベスト レビュー&トレーラー映像公開!

2020年5月13日にリリースされるFIELD OF VIEWのデビュー25周年記念ベストアルバム『FIELD OF VIEW 25th Anniversary Extra Rare Best 2020』。トレーラー映像が公開となった。さらにレビューも到着。

『FIELD OF VIEW 25th Anniversary Extra Rare Best 2020』レビュー

2020年、東京は56年振りのオリンピック開催で沸いている。

と思っていたら、突然降ってわいた新型コロナウイルスの全世界的流行の脅威(これを書いている時点では、まだ収束の兆しは見えていない)という物凄い時代の幕開け、一体この年はどこへ向かい、何が起こるのか? わずかな月日でまさに激動の年として忘れられないであろうことを印象付けている2020年、そんな年にデビュー25周年、四半世紀を迎えるバンドがいる。

その名をFIELD OF VIEWという。

ヴォーカル浅岡雄也を中心とした4人組は、1995年、シングル「君がいたから」でデビュー。90年代にはミリオンヒットを含むヒット作を多数輩出、ブリティッシュ調のスマートなスーツ姿で一斉を風靡し、2002年の解散までJ-POP界を牽引したバンドとしてその存在感を放っている。

今でも「突然」や「DAN DAN心魅かれてく」といったシングル曲は、歌い継がれるスタンダード・ナンバーとして人気が高い。

また、FIELD OF VIEWといえば、1990年代、B’z、ZARD、WANDS、T-BOLAN、大黒摩季、DEEN、B.B.QUEENS ほかミリオンセラー・アーティストを配し、J-POP界に一大ムーブメントを起こした音楽プロデューサー長戸大幸率いる制作者集団ビーイング、その一派に属するバンドとしても、つとに有名だ。

だからこそ、2012年『BEING REGEND Live Tour 2012』というビーイング・アーティスト合同イベントで FIELD OF VIEW名義としてライブを披露したのだろう。だが、あの時は完全再結成というよりは期間限定復活ライブという色合いの強いものだった。

あれから8年、ところがFIELD OF VIEWはただの90年代レジェンド・バンドとしてその使命を終えたわけではなかった。

1月26日、現在もソロとして精力的な活動を続けている浅岡雄也のホームページに、突如、FIELD OF VIEWデビュー25周年、ベストアルバムリリースの告知がなされる。通常ならば、周年もののベストアルバムといえば、レコード会社が企画し、すでに在る音源だけを編集してリリースするというのが常套手段だろう。

ところが、どうも今回のこの

『FIELD OF VIEW 25th Anniversary Extra Rare Best 2020』

と名付けられたアルバム、相当に毛色の違うベストアルバムの体裁なのだった。

内容としては、2枚組 全30曲のボリューム、さらに収録時間61分にも及ぶDVDを付属させてのリリース、21世紀のサブスクリプション時代真っ只中にあって、このパッケーシは、いかにもJ-POPのCD全盛時代、パッケージ文化を牽引してきたビーイングらしい。

アルバムの品番はZACL-9115〜9116…これは、FIELD OF VIEWがデビュー時に所属していたビーイングが作ったメジャーレコード会社であるZAIN RECORD(ヅァインレコーズ)からの品番である。そのレーベルが現存しているのにも驚かされるが、ここからも今回の作品が、ビーイングからの系譜を踏まえてのリリースだということが伺える。

選曲は、浅岡雄也が中心となって選曲。それ故に、ただシングル曲を年代順に並べただけのベストアルバムとは一線を画するまさにRare(まれな)選曲となった。当然、彼らの代表曲を網羅しているのはもちろん、今回アルバム初収録となるシングル曲のカップリング曲や、アルバムからのナンバー、さらに未発表曲までをふんだんに含む内容、また、2枚組みの曲順も凝った流れになっている。

これはアーティストの当事者でなければなし得ない贅沢な内容と言えるだろう。(例えば、ビートルズ不朽の大名盤ベストアルバムに通称赤盤「THE BEATLES1962-1966」と青盤「THE BEATLES 1967-1970」があるが、これはメンバーのジョージ・ハリソンが選曲したと言われている)

また、代表的なシングル曲であっても今回は、未発表テイクとして収録されている曲が5曲、アルバム初収録ナンバーが4曲、さらに未発表新曲が5曲も収録されているという初出し物だらけ。ビートルズのメインレコーディングスタジオであったロンドンのアビーロード・スタジオミックスも収録されている。

そして、さらにExtra(エクストラ)レアな内容といえば、この FIELD OF VIEWの未発表新曲5曲を令和2年の2020年2月、新たに浅岡雄也が歌い直し、歌詞も2019年に書き下ろして収録されているのだ。

そういった内容にしてベストアルバムを出そうという魂胆、そこには並々ならぬ音楽家&クリエイターとしての意欲を感じるのは僕だけだろうか?

ただ、FIELD OF VIEWもそうであるが、25年もの月日を経れば、ベストアルバムと名のつく作品も何度もリリースしていて、アルバムとしての魅力や鮮度が落ちてくるのではないか?未発表テイクや未発表新曲とは言っても、新録音と言っても、それは当時のバンドを知るファンに向けたコレクターズ・アイテム的な内容に終始するのではないか? と思われがちであろう。ところが、今回の作品は、奇跡的にそのどちらでもあり、どちらでもない作品に仕上がっている。

まず、気になるのは[T- ]と記された彼らの代表曲であるシングル曲の未発表テイクだ。テイク違いだからそれは商品化されたオリジナル・ヴァージョンが1番良いに違いないと考えがちだろう。ところが、収録されているのは一聴しただけではオリジナル・ヴァージョンと聞き分けられないほどの完成ヴァージョン・テイク。実際恥ずかしながら筆者にはオリジナルと何が違うのか聞き分けられなかったと白状してしまおう。

そして、このきらびやかな90年代J-POPサウンドのどれもが、四半世紀を経てもなお古さを感じさせない新鮮さに溢れているマジック。メロディーも歌詞も歌声も、エヴァーグリーンな輝きに満ちていたのは驚嘆に値するものがあった。それはつまり、当時熱狂的な支持をしていたファンを安心させると共に、初めて聞くリスナーをも虜(とりこ)にする魅力を秘めているということだ。

そして、聞き進むうちにアルバム初収録のシングルカップリング曲や、見過ごされがちだったアルバム収録曲がまるでFIELD OF VIEWの新曲のように立ち上ってくるのを感じるだろう。さらに、注目したいのが浅岡雄也が新たに歌い直した未発表新曲の数々だ。これが、オケは当時のままを使用しているというが本当だろうか?

サウンドは全く現代に遜色なく、しかも革新性すらある。愕然とさせられるのは、ヴォーカリスト浅岡雄也のヴォーカル力である。25年前の歌声の作品もあれば2020年の歌声もあればそこに差異が生じるのは当然だろう。しかも、ソロ活動で17年を誇るヴェテランの浅岡の歌声が、この新録音では青くて、新しいのである。

FIELD OF VIEWのイメージそのままの歌声がそこに響いている奇跡的な融合の記録がこの未発表新曲なのだ。

浅岡は、この未発表新曲5曲をわずか3日間でレコーディング、当時の音楽プロデューサー長戸大幸が関西で始めたギザ・グループの所有するレッドウェイスタジオで、レコーディング・チームには当時のディレクター寺尾広直伝の精鋭が集結して作業を行ったという縁もあるのかもしれない。素晴らしい作品に仕上がった。

これは、確かにベストアルバムと銘打っているからベストアルバムだ。それに浅岡雄也以外当時のメンバーが新しくレコーディングに参加しているわけではないから新作とは呼べない。だが、まるで今作はビートルズの「ホワイトアルバム」みたいだ。

瑞々しさがあってFIELD OF VIEWの新作として聴いても違和感がないと感ずる人もいるだろう。

そう感じさせてしまうのは、浅岡雄也がこの25年間、誇りをもってFIELD OF VIEWの世界観を守り、表現し続けてきたからに他ならない。

ひょっとして、この作品がきっかけになって再びFIELD OF VIEWが復活するのも夢ではないのでは?そんな希望を抱かせてくれる作品だ。

是非、この作品を手にしたからには、何度でもじっくり聞きこんでみて欲しい。

TEXT: 斉田才

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