豪州SC:eシリーズ第6戦は実力者の競演。ランド・ノリスが2戦目で初勝利「とても楽しい夜だった」

 VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーのeスポーツ・シリーズ『Supercars All Stars Eseries』第6戦が5月13日(水)に開催され、直前にアメリカ・テキサスのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のみの開催に変更された3ヒートが催され、リバースグリッドのレース2でマクラーレンF1所属のランド・ノリスが早くも初勝利を飾り、仮想空間での強さを遺憾なく発揮してみせた。

 また、レース1とレース3はそれぞれ2016年VASC王者SVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)と、eシリーズ最多ポールポジション男のアントン・デ・パスカーレ(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)が勝利を分け合い、VASC連覇中の王者スコット・マクラフラン(フォード・マスタング/DJR Team Penske)が両ヒートで3位に入るなど、実力者たちが表彰台を占める結果ともなった。

 今週のSupercars All Stars Eseries第6戦に向けては、これまで同様豪華なワイルドカード参戦者が集結し、VASCを代表する人気ドライバーのクレイグ・ラウンズにガース・タンダーら大ベテランが仮想空間でのレースに初挑戦するのに加え、北米インディカーのスター、ウィル・パワーやNASCAR Xfinityの新星オースティン・シンドリック、そして第5戦に続いてランド・ノリスが再び登場し、スパ・フランコルシャンでの初参戦・初ポディウムを上回るリザルトを狙った。

 当初はテキサスのCOTAとフロリダのセブリング・インターナショナル・レースウェイでの開催が予定されていたが、第5戦同様に開催直前でCOTAでの3ヒートに一本化された。その予選では順当な速さを披露したSVGが幸先よくポールポジションを獲得し、フロントロウにパスカーレ、セカンドロウ3番手にマクラフランが並ぶお馴染みの顔ぶれが前線にそろった。

 11周の決勝レース1はオープニングからその3台がインサイドを直進して無事にターン1をクリアしていくと、その後方では地の利を活かして4番グリッドを獲得していたShell/Verizonカラーのウィル・パワー(フォード・マスタング/DJR Team Penske)が、リー・ホールズワース(フォード・マスタング/Tickford Racing)や予選8番手のランド・ノリス(ホールデン・コモドアZB/Walkinshaw Andretti United)らとサイド・バイ・サイドのバトルを展開。

 接触を繰り返す集団の混戦でパワーは一時ポジションを落としたものの、オープニングラップのコントロールラインを通過する頃には4番手を取り戻し、ピット義務を消化して以降も順位をキープ。優勝のSVG、2位パスカーレ、3位マクラフランに次ぐ自身最上位の4位を獲得した。

 一方、パワーと競り合ったノリスはキャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング/Tickford Racing)を追走中にターン10のシケインで追突し、ドライブスルーペナルティを課されることに。しかしこれが功を奏し、リバースグリッドのレース2に向け3番グリッドの好位置を手にした。

デビュー戦のスパでは予選3番手タイムを記録しながら縁石カットで抹消となっていたランド・ノリスだが、COTAではレース1に向け4番グリッドを確保した
シリーズ全戦でバトルを展開するシェーン-ヴァン・ギズバーゲンとアントン・デ・パスカーレも勝利を分けあった
レース1は最後尾に沈むも「レース2のフロントロウを確保するためハードに戦ったよ」と、笑顔を見せたクレイグ・ラウンズ

■レース2ではノリスが参戦2戦目での初優勝。次戦への参加にも意欲を見せる

 おなじく11周勝負のレース2は、今回のワイルドカード枠6人目のドライバーであるSuper2レギュラー、ジョシュ・ファイフ(ホールデン・コモドアZB/Brad Jones Racing)がリバースポールにつき、おなじくワイルドカード参戦のVASC3冠と『バサースト1000』7冠のレジェンド、クレイグ・ラウンズ(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)が並ぶフロントロウに。

 するとスタート直後から複数のマルチクラッシュが発生し、ホームストレート上ではファビアン・クルサード(フォード・マスタング/DJR Team Penske)が、ターン1出口では僚友の王者マクラフランが巻き込まれ、クルサードやホールズワースのマスタングはボンネットを失うほどのダメージを負ってしまう。

 この混乱を回避した先頭集団は、3番手スタートのノリスが素早くラウンズをかわして2番手に上がると首位のファイフを追走する。しかし、オープニングラップのトラック終盤で首位を奪ったのはBrad Jones Racingの伏兵トッド・ヘイゼルウッド(ホールデン・コモドアZB)で、3周目にノリスに首位を奪われるまでトップを死守する快走を見せる。

 その後、各車が義務ピットを消化するなか、ポールシッターだったファイフがピットアウト直後のターン1クリップ付近で慎重にターンインしたところ、システムの誤判定かいきなり横転を喫し激しくロールオーバーするアクシデントが発生。しかし順位に大きな変動はなく、2位ウォーターズ、3位ヘイゼルウッドを従えて、ノリスがワイルドカード枠で2人目、自身参戦2戦目でSupercars All Stars Eseries初勝利を挙げた。

「とてもとても楽しい夜だった。レース1はそうではなくて、どう言い訳していいやらお詫びの言葉しかないけれど、あれ(ウォーターズへの追突)は僕のミスだった。もしかしたら凄い追い風だったかもしれないね!」と振り返ったノリス。

「でもドライブスルーの結果28位で終わったことを活用し、レース2では勝利を狙う必要があった。正直に言うと個人的にはリバースグリッドのファンではないし、観戦する分には良いけれど、このシステムで勝つのは最高の栄誉……というわけじゃない。純粋なグリッド位置から勝ちたいからね。でもこの小さな勝利には満足しているよ」

 再び予選グリッド順でスタートが切られた20周のレース3は、ターン1出口でマクラフランと絡んで9位に終わったノリスだが、次週の第7戦開催地に予定されるNASCARの2大聖地、デイトナとシャーロットでのイベント参加にも意欲を見せている。

「もちろん100%準備OKさ。思わず聞き返したよ『デイトナとシャーロットってことは、次はオーバルなの!?』ってね」

 ノリスの言葉どおり、続くSupercars All Stars Eseries第7戦は北米連戦が続き、1.5マイルオーバルのシャーロット・モーター・スピードウェイと、デイトナではロードコースを使用して5月20日(水)に争われる。

レース3で序盤首位を走行したBrad Jones Racingのトッド・ヘイゼルウッドは初の3位表彰台を獲得した
レース3はアクシデント続きだった王者スコット・マクラフラン(フォード・マスタング/DJR Team Penske)だが、さすがの実力で3位までカムバック
ここまで幾度も接触バトルを展開してきたパスカーレとSVGは、今回のレース3最終ラップでも接触。SVGがバックオフし、パスカーレに軍配が上がる

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