「春色マスク」で需要創出 婦人服縫製会社「杉の沢」専務 下田純也さん(39)=南島原市布津町=

「春色マスク」を企画・製造した下田さん=南島原市布津町、杉の沢

 予定がびっしり書き込まれたホワイトボード。「やっと注文を処理できた」。表情に充実感が漂った。
 創業33年目の縫製会社2代目候補。野心的ではなく「時流に身を任せるタイプ」。「従業員の雇用は守れるのか」。不安がよぎったが、コロナ禍に耐えている。
 大手から発注を受け、婦人服などを製造。だが、大手百貨店の休業に伴い、受注は大幅減、生産ラインを止めることも考えた。そんな時、知人から電話が入った。「マスクが不足している。製造できないか」
 さまざまなタイプのマスクを調達して研究。「いろんなアイテムを製造できる。色とりどりの生地もある」という自社の「強み」に気付いた。さらに「マスクでおしゃれを楽しむ女性はいるはず」とも思った。
 初めて需要を創出する側になった。「春色マスク」と銘打ち販売。花柄や水玉模様、レース生地…。29種類もの多彩なマスクが女性の心をくすぐった。北海道から九州まで1日最大約100件の受注が入った。残布で製造したため廃棄ロスも3割削減。「短期的な需要だが、世の中の役に立ってうれしい」と言う。6月からは医療防護服の生産に取り掛かる。

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