工事集中する諫早市 「3密」、県外往来…現場の感染予防策は? マスク着用で熱中症リスクも

業務開始前、非接触型体温計で作業員たちを抜き打ち測定する担当者=諫早市永昌東町

 諫早駅周辺再開発や地域高規格道路、民間企業の工場増設など大規模な公共工事が集中している諫早市。新型コロナウイルスの影響が各地に広がる中、多くの作業員が従事する「3密」や、特殊工種に伴う県外業者の出入りが避けられないケースが多い上、今後、マスク着用による熱中症対策が新たな課題に浮かび上がっている。感染症対策を模索する現場を訪ねた。
 13日朝、諫早駅東地区再開発ビルⅠ棟の建設現場事務所。協力業者約10社、約100人の作業員が朝礼を終えると、工事受注元の松尾建設(佐賀市)の担当者による抜き打ちの体温測定が始まった。
 「36度3分、はい、OKです」。非接触型体温計を額に当てて確認後、現場へ送り出した。同社は3月上旬から、危険予知活動用紙に体温記入欄を追加、抜き打ち測定を導入。これまで体温が高く、入場できなかった作業員はいない。
 島内孝典所長は「今後、心配なのが熱中症。マスクを着けたままの仕事は過去にないだろう。マスクの内側に冷却シートを入れるなどの対応が必要になりそう」と新たな熱中症対策を視野に入れる。
 国土交通省は4月、全国での緊急事態宣言に伴い、公共工事の受注者の申し出に応じて、工期見直しや契約額変更などの措置を講じるよう通知。民間企業にも同じ通知を送付した。
 市内では、同市と島原半島を結ぶ地域高規格道路「島原道路」の建設工事が進む。その一部にあたる一般県道諫早外環状線の長野栗面工区(延長3キロ)を発注する県県央振興局は「工事中止も含め、受注者から要請があれば柔軟に対応する」と説明する。
 本県の緊急事態宣言は解除されたが、県内での移動がベース。同省長崎河川国道事務所が発注する森山拡幅工事は現在、約40社、約115人が従事。このうち、専門工種を担う県外業者が約2割。同事務所は「県外業者は各現場の作業期間によって数週間から数カ月間、県内に滞在する。県外との往来自粛を引き続き要請している」とする。
 一方、市内の建設会社の中には県外業者の出入りを制限。「落ち着くまでやむを得ない。発生したら、工期延長や費用負担の増加などのリスクが高い」と苦しい胸の内を語る。
 各現場では▽マスク着用▽消毒液増設▽こまめな手洗いやうがい▽密接状態での作業の回避▽休憩室のパーティション設置▽休憩時間の分散-などを徹底。「互いの健康と安全に注意する感染予防策は、従来の災害防止対策の延長線上にあるともいえる」。島内所長や国、県の担当者はこう口をそろえる。危険を伴う工事に携わるからこそ、敏感な危機管理意識が培われている。


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