読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、56歳で退職し、再就職を目指す男性。再就職が決まるまでは、妻の収入と失業保険でやりくりしていきたいといいますが……。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPががお答えします。
今まで、夫婦別々に家計管理をしてきましたが、家計を一つに合わせてやりくりができるようになりたいと考えています。
会社の人間関係のトラブルで、引継ぎが終了したら退職することにしました。すぐに再就職先を見つけたいと思ってはいますが、年齢的にも、今のコロナ感染、自粛などの状況からいっても、すぐに見つけることは難しいかもしれないと考えています。
そうなると、しばらくは妻の収入と失業手当に頼って暮らしていくこととなります。今まで貯金もしてきましたが、それは老後のために減らしたくないので、収入の中で暮らせることが目標です。ですが、現状の支出だと全くの赤字で、貯金を頼らざるを得ないことが明らかです。
できるだけ収入の中で暮らせるような、やりくりのコツを覚えたいと思います。
<相談者プロフィール>
・男性、会社員(退職予定、役職定年後 56歳)
・同居の家族:妻(会社員、51歳)
・毎月の世帯の手取り収入:相談者20万4000円、妻26万2000円
・年間の手取りボーナス:夫約50万円、妻約60万円
・退職した場合の失業手当の見込み額(待機期間経過後):約15万円
・資産:貯金530万円、DB約760万円、56歳時退職金(見込み)1000万円
<支出状況(総支出額:38万5000円)>
・住居費(住宅ローン):10万2000円
・食費:8万3000円
・水道光熱費:2万8000円
・通信費:1万2000円
・日用品代:1万円
・医療費:1万4000円
・小遣い:7万円
・その他:6万6000円
FP: 退職の覚悟をすることは、大変だったと思います。おそらく数年で迎える60歳以後の暮らしなども不安に思われたのではないでしょうか。今後やるべきことを考えてみましょう。
夫婦の財布は1つに合わせ、やりくりの相談を
相談者さんもおっしゃるように、夫婦の財布は1つに合わせたほうがよいでしょう。減収に対応するというよりは、家計の無駄を省き、貯金を作りやすい家計を作るには、財布を一つにしている方が効率が良いのです。
昔は収入を1つに合わせて生活することが当たり前でしたが、共働きが増えてきてからは、夫婦別財布で家計管理をすることが主流になっています。ですから無理に1つにするというよりは、互いの収入、支出、貯金額などを共有できていることが大切になります。毎月いくらの収入があり、支出にいくらかかり、貯金がいくらできている。これらを互いに知っていることが大切です。
そのうえで、支出に無駄がなかったか、いつまでにいくら貯めたいかなど、お金の使い方、考え方の共有ができると、無駄が少ない、スッキリした家計管理ができ、貯金を増やすことも考えていけるでしょう。
支出の圧縮は必須。でもやりすぎは禁物
相談者さんが退職され、収入がなくなるのなら、支出の圧縮は当然に検討していかなくてはいけません。今の支出状況を見ると、毎月貯金はできていますが、全体的に支出が多めの傾向にあります。必要な支出、そうではない支出を振り分け、削減できる部分を見つけていきましょう。前述したような「互いの収入・支出状況を把握する」ことができていると、このような話し合いもスムーズにできるでしょう。
支出を減らすときに注意してほしいことは「何でもかんでも節約しないこと」です。無理な節約はストレスもかかりますし、リバウンドの原因にもなります。何より、相談者さんご夫婦らしく生活するために、大切にしたい支出は優先して払い、それ以外の支出を削減することを考えていきましょう。つまり、メリハリのある支出ができることを目指すのです。
退職後の生活で把握しておきたいお金のこと
相談者さんが退職され、仕事が見つからなければ失業給付を受けるつもりとのことですが、失業給付はご存知のように120日、150日などと有期です。その期間は退職の理由や被保険者期間などにより決まりますが、やがてなくなります。しかも、住民税の負担がありますし、社会保障費もかかります。家計の負担が大きくなるのは必須ですから、きちんと把握しておきましょう。
そして忘れてはいけないのは、相談者さんは60歳目前であるということ。老後資金を減らさないために、長く収入を得ることを意識する年齢になります。やりたいこと、挑戦したいことがあればそちらでもよいと思うのですが、やはり長く働けるような職場が望ましいのではないかなと思います。再度就職活動をすることは大変ですしね。65歳の年金受給までとは言わず、もっと長くご夫婦の収入だけで暮らせると、年金の繰り下げができ、年金生活に入った時が楽になるでしょう。繰下げをすると1か月ごとに0.7%受給額が増え、5年繰り下げると42%も増えるのです。
また、会社でやっているDCはiDeCoに移管しましょう。退職しても拠出していけますから、老後資金作りのために、継続してください。ただし、年金保険料を支払っていなければ掛けていくことはできません。
就職も大切ですが、老後も視野に入れた行動をとるようにしていきましょう。