従業員の目が気になって接待費を経費にできない…30代経営者夫婦の悩み

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、小さな会社を経営する30代夫婦。会社の収入は安定しているものの、経費精算はせずに自腹を切ってやりくりしているため、夫婦の貯金が貯まらないといいます。家計再生コンサルタント横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

自宅に併設する形で、夫婦で小さな会社を経営しています。会社の収入は安定しており、2人いる従業員にも給料を払うことができているのですが、自分たちのお金がなかなかたまりません。

家計的には毎月余剰金もしっかり出ている計算なので、そのお金で老後に向けて国の制度を使いながら老後資金を作ったり、子どもの教育費準備もしたいと思っています。残るべきお金が残っていないのは、おそらく経費の清算をしていないせいだろうと思っています。

ただ、それを清算してしまうと、会社の経営状態が悪くなってしまうような気がしています。支出の内容も会食代や交通費が多く、会計帳簿をつけてくれている従業員にイヤな印象を持たれるかもしれないとも感じています。

現在の貯金は約60万円。これでは会社に何かがあった時の助けにもならないでしょうし、もっときちんと貯めたいです。どのくらいの貯金額を目標にして、やりくりをどのように変えていくとよいのでしょうか。

〈相談者プロフィール〉

・女性、37歳、既婚(夫:38歳、代表取締役)

・職業:会社役員

・子ども1人:娘(4歳、保育園)

・毎月の手取り金額:約59万円

・年間の手取りボーナス額:なし

・貯金:60万円

【支出の内訳(48.1万円)】

・住居費:15.6万円(住宅ローン)

・食費:8.4万円(外食代含む)

・水道光熱費:1.7万円

・通信費:0.6万円

・生命保険料:3.9万円

・日用品代:2.2万円

・教育費:1.6万円(保育園)

・被服費:1.8万円(クリーニング代が多い)

・小遣い:6万円

・その他:6.3万円


FP:ご相談ありがとうございます。経費の立替がご家庭の貯金に影響しているのですね。ただ、経費は事業のものですから、経費計上できないと正しい経営状況が分からなくなってしまいます。家計と事業はきちんと切り離すようにしたほうがよいでしょう。

「家計は家計、事業は事業」切り離して考える

相談者さんのおっしゃるように、確かに飲食代や交通費は、経理の人に見せるのが嫌だという心理が働きやすいかもしれません。小さな会社ではなおのことです。

ただ、会食というのは取引先を増やしたり、頼れる関係をつくる仕事を広げていくには必要な場であることが多いはずです。経理をされている方でそれをとやかく言う方はいないだろうとも思いますが、相談者さんの気持ちに区切りをつけるためにも、一度こういう理由で会食代や交通費がかかっていると事情をお伝えしてもよいかもしれません。

自営業や会社経営をしていると、事業費と家計費を混同してしまうことがります。そのため、家計が赤字になっているという人をかなりの数見てきました。ただ、真面目なことを言ってしまえば、本来、事業費と家計費は別のもの。きちんと切り離しておきたいものです。

家庭があっての仕事、仕事があっての家庭。互いに頼りあっている関係だからこそ、きちんと切り離して、どちらも健全な運営ができるようにしましょう。

全体的に“メタボ家計”、支出を見直して無駄の抽出を

ところで、相談者さんのご家庭はややメタボ家計といってよい状況にあることにお気づきでしたでしょうか。

会食が多い割に8万円を超える食費、日用品代や被服費、生命保険料など、極端な突出はないものの、小さなお子さんがいる一般的なご夫婦の支出としては全体的に多めです。

「ここにはお金をかけたい」と思っている支出もあるでしょうから、そこは大切にしてかまいません。そんなに必要ではないけれど以外にかかっていると感じた部分から、支出を減らすようにしていきましょう。

例えば日用品であれば、毎月使う分以上の日用品を購入し、買いだめを多くし過ぎている等はないでしょうか。買いだめにもルールを作り、これは2個まで、これは3個までとしておくと、保管するスペースも安定しますし、支出も安定します。

また、クリーニング代はこんなにかけずとも、家庭の洗濯で対応できそうとか、支出の優先順位が高くないものから削減を検討しましょう。きっと余剰金がもっと多く作れ、貯金や投資に回していけます。

経営者なら貯金は月収の1年分以上を目指して

会社員の方にはよく、使う貯金と貯める貯金で、月収の7.5ヵ月分は最低貯めましょう、などとお伝えするのですが、相談者さんご夫婦は経営者。自営にとても近い状況だと思いますので、できれば1年分以上を目指したいものです。

協会けんぽなどの健康保険や厚生年金には加入されているのでしょうが、経営者は雇用保険に加入できません。万が一商売をたたむようなことになっても、何の補助も得られないことになってしまいますので、貯金は多めに持っていてほしいと思います。

また、老後のためにiDeCoやつみたてNISAを検討されることもよいことです。貯金が順調に増やせる状態になったら、貯金の一部をiDeCoやつみたてNISA等の投資制度を利用して積み立てていきましょう。

iDeCoは今のところは60歳まで引き出せませんが、つみたてNISAはいつでも引き出すことができます。教育資金や万が一の場合、また事業資金にもできますので、老後資金目的以外にも活用できると思います。

せっかく貯金できるチャンスを逃さないよう、しっかりと貯められる体制を整えてください。

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