「上昇相場」でありがちな失敗、「下げたから買う」が危険なワケ

日本の株式市場も米国の株式市場もつい数か月前には「市場最大の下げ幅」などといって大きな下落となったものが、今度は「史上最高値更新」というような状況になっています。


「買い場」がわからない

世界の株式市場は景気が良くなったということでもないなかで、2020年3月の安値から下落を全て取り返すように大きく上昇しています。これだけ大きく上昇すると投資の失敗もないだろうと思われますが、ところがどっこい! これだけの上昇相場でも投資に失敗はつきものなのです。上昇相場時の失敗をしっかりと検証してみると、誰でもやってしまいそうな失敗が多く見えてきます。そしてこうした失敗を頭に入れておけば、一つ二つは失敗するかもしれませんが、三つ、四つと失敗を繰り返すようなことはなくなると思います。

投資初心者にありがちな失敗として、株価の水準が分からなくなるということ、そして単純に「前もこうだったから」と少し前に経験したことが当たり前のことと考えてしまうことがあります。

例えば、日経平均を見てみると、3月に底値を付けた後急騰しています(急騰したから「底値」となったのですが)。その後いったん大きく下げる場面もあったのですが、すぐに切り返してその後はじりじりと上昇したのです。

こうした時の失敗としてはいくつか挙げられるのですが、まず第一に失敗しやすいのが、「もういいだろう」として買ってしまうことであり、買ってから株価が下がると心配になってもっと下がるのではないかと売ってしまうことなのです。2020年2月から暴落を始めた日経平均ですが、3月に入ってからすぐに「もう十分下がっただろう」と勝手に決め込んで買うと、まだまだ下がるということになってしまいました。そして、まだまだ下がるので不安になって売ると、売ったところが底値になったというケースです。

また、底値を付けた後に大きく反発となって、「よし、ここからは上昇だ!」と買ったはいいが少し下がると不安になってすぐに売ってしまい、売ってしまった後に買い値を超えるどころか大きな上昇が始まったということになるのです。

これは「買い場」ということがわからないことによる失敗なのですが、株価の底値がどこなのかは終わってみなければ誰もわからないことなのです。ただ、株価の水準をチェックするということは大切なことであり、「これ以上誰も売らない水準なのかもしれない」とか、「ここからは誰も買いたくはないのだろう」というように想像することはできると思います。

「確認」が大切

前回のコラムでも述べたように、株価の動きを想像する、予測することが大切なのですが、予測が必ずしも当たるものでもないですし、想像通りにうまくいくというわけにはいきません。そこで、予測すると同時にその予測を確認することももっと大切なことなのです。先の例に示したように、どこまで下がるかわからないものをもういいだろう、と憶測(予測ではありません)して買うと不安になって慌てて売って失敗するのですが、本来であれば「底値だ」と確信して買ったのであれば、その「底値である」ということが確認できているうちは不安にならず株を持ち続ければいいということなのです。

いずれにしても、底値であることが確認されれば買えばいいのですし、上昇ということが確認できるのであれば、多少高いところを買っても慌てて売ることもないのです。逆に確認を怠ると不安ばかりが先走って、あたふたとした投資となってしまうということなのです。

また、今回のような上昇が続いている相場の後は、3月の底値を付けた直後のように急騰した後、少し下がったところで買っておけば大きく利益を出すことができました。結果的に絶好の買い場となったのですが、次があるという確信は持てないはずです。ただ、大きくじりじりと上昇する相場であれば、「買い損なった」という意識が強く、ちょっとでも下がったところで買おうと思うものです。

ここで一番気を付けなければならないのは、4月初めの「ちょっと下がったところ」という株価の水準と現時点のような大きく上昇した後の「ちょっと下がったところ」は全く違うものだということです。4月初めの「ちょっと下がったところ」は2月から3月にかけて大きく下落した後、反発した後で「ちょっと下がった」のですが、現在の水準は4月初めから、特に5月になってから大きく上昇したところで「ちょっと下がる」ということなのです。

つまり、株価の水準が全く違うわけですし、「ちょっと下がる」時の市場参加者の損益や気持ちも全く違うものなのです。「ちょっと下がった」という事象だけで判断することになり、今度は同じことをしても失敗となる可能性もあるということです。ですから、ここからは「ちょっと下がった」だけで投資をするのではなく、「下落の始まりではなかった」ということを確認してから投資をするということが失敗せずに成功する秘訣なのです。

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