NISAやiDeCo活用で積極運用の年収1150万会社員「人生の3大支出への備えは万全?」

今回の相談者は、34歳会社員の男性。年収が1150万円もあり、さらに、ジュニアNISAやiDeCoやつみたてNISAで積極的に運用をしています。「人生の3大支出」への備えは万全でしょうか。FPの秋山芳生氏がお答えします。

人生の3大支出への備えについてアドバイスをお願いします。

・教育費はジュニアNISAで準備。

・住宅費は401k.+退職金+iDeCoの一括受取で準備。

・老後資金はつみたてNISA+特定口座で準備と考えています。

資産配分目標はリスク資産8割、無リスク資産2割とかなり積極的に、リスク資産は全てインデックスファンドで運用しています。

教育費(大学費用)はジュニアNISAだけで足りるのでしょうか?

住宅は人口減少社会において、購入ではなく生涯賃貸でも選択肢になり得るのでしょうか?購入の場合は住宅ローン控除を使える現役時代に、購入する方がメリットが大きいでしょうか?

老後生活は年金額の減少と年齢の先延ばしが予想されています。今現在どのような対策を取るのがいいと思われますか?

<相談者プロフィール>

・男性、34歳、既婚(妻、33歳、会社員)

・職業:会社員

・子ども:2人(3歳、5歳)

・同居家族:相談者(転勤族)は単身赴任で一人暮らし

・住居の形態:相談者は借上げ社宅、妻子は義親所有のマンション

・毎月の世帯の手取り金額:56万円(借上げ家賃1.4万、生損保1.5万天引き含む)

※相談者:年収1150万円、妻:年収60万円(パート)

・年間の世帯の手取りボーナス額:210万円

・毎月の世帯の支出の目安:30.5万円

(仕送り15.5万円、単身赴任生活費15万円※ほぼカード払い)

【毎月の支出の内訳】※借り上げ家賃、天引き生保以外

・住居費:6万円(仕送り、義親への家賃)

・食費:6.3万円(仕送り)

・水道光熱費:1万円(相談者生活費)

・教育費:3.2万円(仕送り)

・保険料:1.3万円(天引き以外)

・通信費:1万円(相談者生活費)

・車両費:1万円(相談者生活費)

・お小遣い:4万円(相談者食事代)

・その他:3万円(相談者帰省代)

【資産状況】

毎月の貯蓄額:24.8万円(401k✕2、積立NISA✕2、ジュニアNISA✕2)

現在の貯蓄総額:700万円(MRF360、個人年金310、普通預金30)

現在の投資総額:2300万円(先進国株式9割、新興国株式1割)

現在の負債総額:なし


秋山: ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの秋山です。ご収入も高く、将来に向けて税制優遇制度も活用したインデックスの積立投資をしっかりとおこなっていらっしゃいますね。支出も抑えられており、それほど無駄づかいをしているわけでもない。それでも、人生の三大支出といわれる「教育、住宅、老後」は不安なものですよね。

ご相談内容を一つ一つ見ていきましょう。

ジュニアNISAだけで大学の教育費は賄えるか?

まず、大学の教育費についてですが、お子さんがどのような大学・学部に入るかによっても異なります。令和2年3月日本政策金融公庫発表の「教育費負担の実態調査結果」によると、入学金と4年間の学費の合計は以下のようになります。

国立大学 入学金71.4万円 4年間学費428万円 合計499万円
私立文系 入学金86.6万円 4年間学費630.4万円 合計717万円
私立理系 入学金84.5万円 4年間学費737.2万円 合計822万円
※入学金には、受験費用・学校納付金・入学しなかった学校への納付金を含みます。

大学費用がジュニアNISAで足りるかどうかについては、いつから始めており、現状いくら積み立てているかが不明なのですが、仮にお子さんが生まれてすぐから制度を利用しているとすると、年間80万円の積立が5年間可能なものになりますので、最大元本400万円が非課税で運用できます。

仮に、お子さんが生まれてすぐに投資を始めて5歳で400万円が運用できている場合、大学入学時の18歳まで複利で3%で運用できていたとすると、13年目に587万円になります。また、複利で5%で運用できたとすると754万円ということになります。国公立であれば足りるけれど、私立になると少し心もとないということになりますね。

不足分は児童手当を積み立てていくことで対応されるとよいと思います。児童手当を大学の入学費用に充てていけば、5000円×12か月×18年で108万円ほどになります。児童手当は、通常3歳まで1万5000円、それ以降も中学卒業まで1万円支給されますが、所得制限があります。ご相談者様は年収が高く、所得金額が698万円を超えていると思われるので、1か月あたり5000円となっていると思います。

新ルールで使い勝手が良くなったジュニアNISA

今まではジュニアNISAで学費を貯めることはあまりお勧めできませんでした。というのも、入学のタイミングで今回のコロナショックのような株式相場の暴落にあった場合は、入学金が不足するということもあり得るからです。

しかし、今年の税制改定に伴い、18歳以降(3月31日時点で18歳である年の1月1日以降)まで払い出しができないというルールが、2024年以降は解約が自由になったので使い勝手がかなり良くなったといわれています。ジュニアNISAで貯めていく場合は、入学の5年前くらいからタイミングを見て徐々に現金化した方がリスクコントロールできると思います。また、投資だけで大学費用を準備するのが危険だと思う場合は、投資額を減らし現金預金と併用して準備されるとよいと思います。

購入と賃貸の差はわずか。価値観や状況で検討を

住宅については、仕事を退職されてから終の棲家を考えられているのですね。

「住宅費は401k.+退職金+iDeCoの一括受取で準備」とありますが、「401k.」という制度は日本にはなく、米国の制度になります。日本版の「401k.」と言えるのが企業型確定拠出年金なので、ここでは企業型確定拠出年金のことと理解して話をすすめていきます。

企業型確定拠出年金、iDeCo、退職金で家を家を買うというのは、それぞれの金額がわからないのですが、老後資金も計算した上で問題なければ買うのはよろしいかとも思います。

もちろん賃貸でいるのも問題ないと思います。空家率が非常に高くなってくることが予測されていますので、住む家にこだわりがなければ、老後住む場所に困るということはないと思われます。

義理の親御さんがマンションをお持ちで、現在は家賃を支払われていますが、そちらを相続する可能性もあると思うので、その時の状況に合わせて考えられたら良いのではないでしょうか。計算上は、賃貸でい続ける場合と、住宅購入の場合をくらべると、計算の仕方にもよりますが住宅購入のほうが「やや安くなる」ことが多いです。しかし、固定資産税やメンテナンスコストを支払い続ける場合を考えると、それほど差が出ないことがほとんどです。

購入の方が所有感もあり、部屋の仕様が良かったり、広い場合が多いこともあり、満足度は高いと思いますが、このあたりはその人の価値観によりますね。少なくとも、現在は単身赴任で、奥様と子どもは義理の親のマンションに住めており、無理に住宅の購入を急ぐ必要は無いのではと思います。

知っておきたい住宅ローン控除

参考までに、令和3年12月31日までに住宅を購入し入居した場合に適用される住宅ローン控除についても触れておきましょう。コロナ禍の影響で一部制度の変更もあります。なお住宅ローン控除の適用は、令和3年12月31日以降については現状では決まっていません。

控除の内容は、ローンを借りる状況によって異なりますが、基本的には4000万円までの住宅ローンの残債に対して1%の税額控除が10年間受けられます。また、消費税率10%が適用される住宅を購入し入居した場合は、13年間の控除が受けられ、消費税2%増額分を還元される特例措置があります。この特例措置は、入居期限が令和2年12月31日まででしたが、コロナ禍のため、条件を満たした上で令和3年12月31日までに入居すれば、特例措置の対象になることになりました。対象になれるかは詳しく調べてみると良いでしょう。

ゆとりある老後を送るために大切なことは?

老後については、退職金や確定拠出年金の具体的な金額がわからないのでなんとも言えません。ただ、5月末に年金の制度改定の法案が可決され、2022年から変更になってきます。大きなポイントとしては、年金を75歳まで後ろ倒しでもらうことが可能になったことで、75歳まで繰り下げ支給を頑張った場合、65歳の支給開始に比べて最大で84%も支給額が増える計算になります。

この制度改定により繰り下げ受給できる期間が伸びたことで、「ではいったい、いつもらったら有利なのか?」ということが疑問になると思います。

ざっくりした計算によると、65歳受給開始にくらべて、70歳受給開始は年金額が42%多くなります。となると、累計の年金受給額が並ぶのが81歳で、82歳になると70歳受給開始のほうが有利ということになります。また、65歳受給開始に比べて、75歳受給開始は、年金額が最大84%多くなり、累計の年金受給額が並ぶのは86歳で、87歳からは有利になります。ということで、長生きすればするほど、繰り下げていたほうが「お得」ということになります。

年金制度の変更からも読み取れるように、今まで60歳で定年だったことが、65歳定年は当たり前、さらに70歳、75歳まで働くというのがスタンダードな世の中になっていくことが予測されますし、できる限り繰り下げしていくことで、働けなくなってからの年金が多くなっていくことを考えると、自分の老後を支えてくれる一番の要因は健康ということになります。

また、年金受給開始を遅らせるために、退職後もすぐに年金をもらわず、退職金や確定拠出年金を取り崩して生活することも戦略的に必要になってくると思います。現役と老後の年金ぐらしをつなぐ、中継ぎのような考え方です。

現在の家計と資産を拝見するに、十分に資産運用にまわしていらっしゃるので、これ以上の投資の必要はないかとも思います。それでも老後のことを心配するようであれば、健康への投資や、高い年収をキープできるよう常に新鮮な自分でいられるよう自己投資をなされると良いと思います。

以上、ご参考になれば幸いです。

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