長崎・遠藤周作文学館 未発表小説「影に対して」初公開 開館20周年企画展 来年6月30日まで

未発表小説「影に対して」の直筆草稿などに見入る来場者=長崎市遠藤周作文学館

 長崎県ゆかりの作品を複数残した作家遠藤周作(1923~96年)の足跡を伝える長崎市遠藤周作文学館(東出津町)で1日、開館20周年企画展が開幕した。同館でこのほど発見された未発表小説「影に対して」の原稿が初公開され、来場者は熱心に見入っていた。会期は来年6月30日まで。
 企画展のリニューアルは2年ぶり。タイトルは「遠藤周作 珠玉のエッセイ展〈生活〉と〈人生〉の違い」。カトリックの洗礼やフランス留学、数度にわたる闘病などを経験した生涯をたどるとともに、「生活と人生とは違う」「人生には無駄なことはひとつもない」といった遠藤の思想を紹介している。
 会場には「影に対して」の自筆草稿(原稿用紙2枚)と清書原稿(同104枚)のほか、人生観がうかがえる言葉を膨大なエッセーから抜粋したパネルや、遠藤の写真など計約20点を展示している。
 川崎友理子学芸員(27)は「温かく、人生に根差した言葉があふれている遠藤先生のエッセーを多くの人に知ってもらいたい」とPR。同市栄町、看護師、山中真理子さん(53)は「生き方をテーマに書かれた『影に対して』は、コロナ禍の中で暮らす私たちにとって光となるような作品だと思う。早く読んでみたい」と話した。

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