購入すれば総額2億円… なぜ鷹はキモカワ“ロボット応援団”を結成&増強したのか?

人型ロボット「Pepper」らで構成された応援団【写真:福谷佑介】

無観客のスタンドに「何かソフトバンクらしさを出したい」

7日にPayPayドームで行われたソフトバンク対楽天戦。この試合でお披露目された、とある“応援団”の姿がプロ野球ファンに衝撃を与えた。人型ロボット「Pepper(ペッパー)」20台と四足歩行型ロボット「spot(スポット)」20台による“ロボット応援団”。レフトスタンドに設置された特設ステージで一斉にダンスする姿は大きな反響を呼んだ。

左翼席にズラリと並ぶ無数のロボットたち。ソフトバンクが点を取れば、一斉に喜びを表す動きをする。7回の攻撃前には「いざゆけ若鷹軍団」に合わせて一斉に踊る。その奇天烈な動きにファンは騒然。ツイッターなどで一躍トレンド入りするなど、まさに衝撃を与えた。

しかし、ソフトバンクはなぜこのような“ロボット応援団”を導入しようとしたのだろうか。

ソフトバンクでイベント企画などを担当するマーケティング企画課の貞包武課長が“ロボット応援団”結成への経緯を明かす。「無観客開催ということで、どうしてもスタンドがガランとしてしまっていて球団としても良くないな、と感じていました。応援ボードを掲出するなどいろいろな取り組みはしていましたが、その中で、何かソフトバンクらしさを出したいな、他球団との差別化を図りたいという思いがありました」。そこで発案されたのが、ソフトバンクが開発したロボット「Pepper」だった。

6月19日からのロッテとの開幕戦3連戦で「Pepper」を5台、右翼スタンドの一角に設置し“ロボット応援団”がスタートした。この時に中継映像などで「Pepper」による一糸乱れぬダンスが注目され、SNS上でも大きな反響を呼んだ。貞包課長も「かなり大きな反応をいただき、驚きました」と言うほどだった。

当初はPepper5台だった応援団は総勢40台にスケールアップ

チームが2週間の遠征に出ている間に「その中でもっと面白くしよう、無観客で暗い雰囲気の中で少しでも野球を通じてファンの人に楽しんでもらいたい、笑ってもらいたいという話になりました」と球団内で“増強”が決定。「Pepper」を4倍の20台にし、さらに、新たにボストンダイナミクスが開発した四足歩行型ロボットの「spot」を20台、“仲間入り”させることにした。これだけの台数でパフォーマンスをするのは、史上初の試みだったという。

開幕してから無観客での開催が続いているプロ野球。テレビやインターネットを通して声援を送るファンを少しでも楽しませられないかと考え、ソフトバンクはこの“ロボット応援団”を結成、増強した。貞包課長は「選手を鼓舞する応援団としてもですが、少しでも新しいファンの楽しみになれば、と思っています」と言う。賛否両論あれど、その狙い通りにファンを楽しませる1つのアイデアとして成功したと言えるだろう。ちなみに購入するとなると、「spot」は1台800万円、「Pepper」は1台200万円ほど(ともに弊社調べ)で、総額2億円にもなる“高級応援団”だという。

そこで1つの懸念がある。“ロボット応援団”が設置されているのは左中間スタンドの中段。ともすれば、ホームランボールが飛び込み、高額なロボットたちに直撃する恐れもある。ただ、貞包課長は「それは野球の試合ですから可能性はあります。ただ、それはそれで盛り上がるのではないでしょうか。もちろん敵チームの人に当てられるのはイヤですが、ホークスの選手のホームランが当たれば得点が入るので嬉しいですし、話題にもなります。もちろんそれによって壊れないことを願っていますけど……」と語り、そのリスクさえもポジティブに捉えている。

7月10日からは有観客試合が再開されるが、入場者の上限が5000人までのうちは、この“ロボット応援団”は設置されたままとなる。「スタジアムに来られるファンの方々には、もちろん野球観戦がメインですけど、こういうのもあるんですよ、と見ていただけたらと思います」と貞包課長。PayPayドームの新たな名物になるかもしれない? この“ロボット応援団”。この先また更なる進化、変化があるのか、注目したい。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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