TCRオーストラリア:eシリーズ第2戦仮想バサーストはルノー・メガーヌR.S.TCRが勝利

 シリーズ単独開催となる新たなeスポーツ選手権『TCR Australia SimRacing Series』を開催中のARG(Australian Racing Group)は、7月7日(火)にオーストラリアの“聖地”マウントパノラマで第2戦を実施し、Garry Rogers Motorsportのディラン・オキーフ(ルノー・メガーヌR.S.TCR)がレース1で勝利。続くレース2をLK Racingのフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRをドライブするルーク・キングが制している。

 8月のシリーズ再開を前に再び新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の兆しを見せているオーストラリアだが、ARGはTCR規定を統括するWSCグループと協力し、リージョン選手権最高峰となるTCRヨーロッパ・シリーズでも使用する世界的人気シミュレーターの『Assetto Corsa(アセットコルサ)』をプラットフォームに採用し、TCR規定ツーリングカー全車を再現した全7戦のバーチャル・シリーズを立ち上げた。

 その第2戦の舞台は仮想空間のマウントパノラマとなったが、開幕戦のアルバートパークと同様に初戦レース1はテンポの速いクリーンな展開、レース2はリバースグリッドがもたらした劇的な山下りバトルが演出された。

 その予選セッションでは終盤に2分13秒台へとタイムを更新したベン・バルグワナ(プジョー308TCR/Burson Auto Parts Racing)が開幕に続くポールポジションを射止めたものの、肝心のレーススタートではまさかの失速。

 代わって主導権を握ったのが現eシリーズポイントリーダーでもあるTCRオーストラリア・レギュラーのオキーフで、その後は全9ラップにわたって首位をキープ。2番手ジョン・マーティン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/Wall Racing)の挑戦も退け、トップチェッカーを受けた。

「本当に素晴らしいレースになったし、とても楽しかった。僕も長らくシムレースに興じてきたけど、それにしても予選でのベン(・バルグワナ)のパフォーマンスは圧巻だったね」と、ライバルを称えつつシリーズ初勝利の喜びを語ったオキーフ。

「スタートで首位に立ってからは、とにかくジョンからのプレッシャーに耐え続けた。僕のレースペースはあまり良くなかったけど、つねに相対的なギャップを注視したよ。激しい勝負だったし、僕らはレース全体で予選を戦っているようなものだったね」

 続くレース2は、リバースポールからスタートしたジェイ・ハンソン(アルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR/Ashley Seward Motorsport AWC)が1コーナーを制すると、2番手には2019年初代TCRオーストラリア王者のウィル・ブラウン(ヒュンダイi30 N TCR/HMO Customer Racing)が追走する展開に。

ジェイ・ハンソン(アルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR/Ashley Seward Motorsport AWC)がリバースポールとなったレース2は混沌の展開に

 しかしブラウンは続く高速ダウンヒル・セクション“The Esses”でウォールの餌食となり、結果的に首位のハンソンは序盤戦でセーフティマージンを手にする。

 全長6.213kmのマウントパノラマで必死の逃げを打つハンソンだが、後続にはピーター・ボダノヴィッチ(ヒュンダイi30 N TCR/Racing Sims NZ)を先頭にトレイン状態で追走集団が迫り、迎えた5周目。ハンソンが“The Esses”で犯したミスを皮切りに、レースは混沌とした状況に突入していく。

 壁へのヒットで弾かれたハンソンのアルファロメオは、すぐ背後にいたボダノヴィッチのヒュンダイや、マーティンのホンダを巻き添えにサイドウェイ。その隙間を、4番手のルーク・キング(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR/Luke King Racing)が突破していく。

 そのまま混戦状態でバックストレートに飛び出した集団内では、ハンセンに弾かれたマーティンがスピンモードに陥りクラッシュを喫し、ハンセンもまたトニー・ダルベルト(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/Wall Racing)らにプッシングを受けグラスエリアを滑走。続く6ラップ目に入っても各所でバトルが頻発する。

 しかし、この展開で楽になったはずの首位キングは、その6周目にまさかの事態に。丘の頂点となる“Skyline”を通過した彼のゴルフは360°ターンのスピンを喫し、転がり落ちるように“The Esses”へ突入。2番手にいたボダノヴィッチにトップランを明け渡す失態を犯してしまう。

 それでもロスを最小限に留め、2番手追走を開始したキングは、7周目にスリップストリームの攻防ですぐに首位を奪い返し、後方のバトルを尻目にeシリーズ初勝利を手にした。

「なんだかとんでもないレースになったけど、楽しかったね」と振り返ったキング。「レースは最初から“スクラップ”状態で、混乱に乗じて首位のジェイをパスしたことも、その後の自分のペースが良いこともわかっていた」

「でも気づいたら、直後に丘のてっぺんで360°を決めていた(笑)。最終的に自分が勝ったなんて信じられないし、どうやってリードを取り戻したかも分からないけど、こんなラッキーがときどきあるものなんだね」

 2位ボダノヴィッチ、3位ローワン・シェパード(アウディRS3 LMS/Track Tec Racing)に続き、4位にはダルベルトとの激闘を制したバルグワナが入っている。

 続くTCR Australia SimRacing Series第3戦は、現実のシリーズ開幕戦の舞台でもあるシドニー・モータースポーツパークで7月15日(水)に争われる。

レース中に360°を決めながらも、大混乱のレースを制したルーク・キング(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR/Luke King Racing)

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