BTCC:公式タイヤテストはインディペンデント王者の新型フォード・フォーカスSTが最速

 シリーズ再開が待たれるBTCCイギリス・ツーリングカー選手権の公式タイヤテストが7月7~8日にスネッタートンで開催され、ミックス・コンディションとなった2日間で2019年インディペンデント王者のロリー・ブッチャーが第4世代に進化したフォード・フォーカスSTで全体最速をマーク。フルウエットの2日目には、新たにインフィニティQ50BTCCのステアリングを握る2017年王者アシュリー・サットンが最速を記録している。

 3月に開催された公式テスト“メディアデイ”に続き、シリーズ開幕前2度目の公式テストでは、今季からワンメイク供給が開始されるグッドイヤータイヤの習熟と同時に、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響で失われたトラックでの走行時間を稼ごうと、26名のレギュラー全員がノーフォーク州のサーキットへと集結した。

 その初日午前のセッションから勢いを見せたのは、今季から古巣Motorbase Performanceに復帰した2019年インディペンデント・トロフィー王者のブッチャーだった。

 2020年に向け新造されたブランニューマシンは、コースインの際にピットロード出口でストップするマイナートラブルに見舞われたものの、その後すぐにスピードを上げ、今季はMotorbaseからBTC Racingに移籍を決めた2番手トム・チルトン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR)や、2020年はGAZOO Racingのステータスを得て参戦するSpeed Works Motorsportのトム・イングラム(トヨタ・カローラBTCC/TOYOTA GAZOO Racing UK with Ginsters)らを抑え、1分56秒504という堂々のトップタイムを記録している。

「今日はすべてが順調に進んだし、スネッタートンで競合と張り合えるパフォーマンスを示せたのは素晴らしいことだ」と手応えを口にしたブッチャー。

「この新型マシンは実質的なシェイクダウンにも関わらず、走り出してすぐに良いフィーリングを伝えてくれた。今朝は少し微妙な問題が発生し、電装系トラブルの影響でピットロード出口でダウンしてしまったが、それ以降はトラブルもなくテストプログラムを順調に消化することができた」

 続いて午後に行われたセッションでは序盤からトラック上に雨粒が落ち始め、最終的にTeam HARDのジャック・ゴフ(フォルクスワーゲンCC/RCIB Insurance with Fox Transport)が最速を記録したものの、タイムは2分3秒496となり午前の結果がオーバーオール最速となった。

首位ロリー・ブッチャーから0.757秒遅れの2番手に付けたのは、そのMotorbaseからBTC Racingに移籍したトム・チルトン
初日午後のセッションでトップタイムを記録したTeam HARDのジャック・ゴフ(フォルクスワーゲンCC/RCIB Insurance with Fox Transport)も、雨絡みで全体最速には届かず
ドライの初日3番手、ウエットの2日目も2番手と、両路面で速さを見せたトム・イングラム(トヨタ・カローラBTCC/TOYOTA GAZOO Racing UK with Ginsters)

■スバルで王者獲得のサットンが、インフィニティで最速マーク

 その条件は続くフルウェットのテスト2日目にも引き継がれ、初日午前のタイムを更新するドライバーは現れなかったが、この条件下で競争力を見せたのは2017年にTeam BMRでタイトルを獲得し、今季はFRのスバル・レヴォーグGTから同じくFRのインフィニティへとスイッチしたLaser Tools Racingのサットンだった。

 2020年は参戦休止を決めたBMRのクルーを引き連れ、Laser Tools Racingにジョイントする形で移籍を決めたサットンは、新たにリビルドされた2台目のインフィニティQ50BTCCをドライブし、午前・午後ともに最速をマーク。レインタイヤで唯一、2分13秒台を切る2分12秒519を記録した。

 前回のシルバーストンではチームメイトであるエイデン・モファットとマシンをシェアし、充分なマイレージを稼ぐことができなかった元BTCCドライバーズチャンピオンは、初日のドライセッションで7番手を記録したのち、ウエットでの堅実なパフォーマンスに「とても勇気づけられた」と語った。

「COVID-19のパンデミックにより、本当に長い間コクピットから離れる期間が続いていたが、こうしてシートに座りステアリングを握れて最高だし、一瞬で時間が取り戻せた感じだ」と続けたサットン。

「個人的にはすぐにマシンの“グルーヴ”を感じ取ることができ、ウエットで最速だったのも素晴らしいことだ。でも隣のガレージにいる皆が何をしていたのか把握していないし、ここからすべてを判断するのは時期尚早だ」

「でもウエットでのグリップ感はあったし、このチャレンジングなスネッタートンで競争力があるのは良いことだ。ドニントンパークでシリーズが開幕すれば忙しい時間が続く。でもこの挑戦に打ち勝ち、この最高のチームと最高の結果を手にすることを楽しみにしている」

 この2日目には、今季からマーク・ブランデルが代表に就任したMB Motorsport accelerated by Blue Squareで開発ドライバーに起用された22歳の女性ドライバー、エスミー・ホウキーもBTCCデビューを果たし、初の前輪駆動ツーリングカーでウエットという難しい条件下ながら、27台中23番手のタイムを記録。

 またホンダUKのファクトリー・バックアップを受けるHalfords Yuasa Racingからは、長年エースを務めるマット・ニールの子息ヘンリーも、父のFK8型ホンダ・シビック・タイプRを引き継いでトラックデビューを飾っている。

「ドライの周回が制限されたのは残念だが、僕らはトップで戦える最高のチーム」と、自信を深めるアシュリー・サットン
直前に参戦休止を表明したアンドリュー・ジョーダンを除く2台で参加したWSRは、タイムを追わないテストプログラムに終始した
「このコンディションでも各ティントごとに進化できたし、タイムも期待以上だった」と、上々のBTCCデビューを飾ったエスミー・ホウキー

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