「胸がいっぱいに…」スタンドにファンがいる喜び 球団チアたちの“開幕戦”

11日の楽天戦でデビューを果たした新メンバー「Misaki」さん【写真:福谷佑介】

鷹「ハニーズ」の新キャプテンMAYUMIさん「本当に感動しました」

7月10日についに再開されたプロ野球の有観客試合。新型コロナウイルスの感染拡大による開幕延期、そして公式戦の無観客開催と、ファンにとっても苦しい時間が続いた。まだ上限の設定こそあれ、ファンにとっては待ち望んでいた時がようやくやってきたと言えるだろう。

この有観客試合の再開を待ち望んでいたのはファンや選手たちだけではない。ファンと共に選手へ声援を送り、チームとファンの架け橋となる存在の各球団のチアリーディングチームたちも、この瞬間を待ち望んでいた。

ファンの前でついにパフォーマンスを行うことが可能となった各球団のチアリーディングチームたち。ソフトバンクのオフィシャルダンス&パフォーマンスチーム「ハニーズ」のメンバーもまた、10日の有観客試合再開とともに、ファンの前でのパフォーマンスをスタート。彼女たちも特別な思いを胸にこの時を迎えた。

今季で3年目を迎え、新キャプテンに就任した「MAYUMI」さんはメンバーの思いを代表して語る。「反応が返ってくることに胸がいっぱいになりましたし、本当に感動しました。今まで無観客の中でもパフォーマンスはできていたんですけど、反応とかがなかったので……」。直に伝わるファンの反応、送られる拍手、そしてスタンドに見えるファンの姿……。胸が熱くなった。

新型コロナウイルスの感染拡大によって開幕が延期となり、緊急事態宣言によりステイホームを強いられた。「ハニーズ」の面々も自宅待機を余儀なくされ、練習もままならない状況が続いた。MAYUMIさんは「野球があるのが日常、パフォーマンスできる日常があったんですけど、それができなくなった。環境があることがありがたい、当たり前じゃなかったんだなというのは感じました。辛かったですし、寂しかったです」。彼女たちもまた苦しい思いを抱えて日々を過ごしていた。

この期間で人一倍不安を抱えて過ごしていたのが、今年から加わった新メンバーたち。本来、お披露目となるはずだったオープン戦も無観客になり、開幕も延期。パフォーマンスを行うどころか、晴れ舞台にさえ立てないままの日々が続いた。

11日の楽天戦でデビューを果たした新メンバー「Misaki」さん【写真:福谷佑介】

新メンバー「Misaki」さんが抱えていた不安「デビューできないかも」

今季から「ハニーズ」に加わった「Misaki」さんは当時の胸中を明かす。「今年はデビューできないかも、と正直なところ思っていました。いつになったら練習してきたものをお披露目できるのか、本当に不安でした」。自宅にこもり、ダンスの復習や過去の先輩たちのパフォーマンスを動画でチェック。いつかファンの前でパフォーマンスをできる日を思い描き、少しでも成長できるようにと努力してきた。

Misakiさんは11日の楽天戦でついにデビューを果たした。グラウンド上で笑顔を弾けさせ、スタンドのファンのためにと全力でパフォーマンスを行った。「念願でした。デビューできるか分からない状況だったので、めっちゃ嬉しかったです。やっぱり目の前にお客様がいる、目の前にいる人に届けることができたので、すごく嬉しかったです」。こう語る表情には再び可憐な笑顔が弾けた。

有観客試合が再開され、ソフトバンクは3連勝。そこまで苦しんできたチーム状況が一気に上向いた。スタンドのファンと一体となり、チームの後押しをできる喜び。MAYUMIさんは「パフォーマンスチームも早くお披露目したい気持ちが強かったので、それができたので倍以上の思いが溢れたと思います」と語る。

“デビュー戦”が白星となり、試合後の「勝利の花火」まで体験できたMisakiさん。「初めてお客さまがいて、勝利の瞬間までいられたので、めっちゃ感動しました。勝利の花火、めっちゃびっくりしました」と喜び「もっとお客さんが入ったときにどうなるのかすごく楽しみ。それを楽しみにもっと頑張ろう、お客さんに負けないパフォーマンスをできるようにしたいと思いました」と気持ちも新たにした。

試合を戦うのは選手たちだが、ファンや彼女たちチアチームがそれを後押ししているのは紛れもない事実だ。ついに始まった有観客試合。多くの人たちが、様々な思いを胸に抱えて、この時を迎えていた。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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