熊本豪雨 球磨川氾濫で波紋広がる「石木ダム建設事業」

反対派「必要」の世論を警戒 建設で不安解消求める声も

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東彼川棚町の石木ダム建設予定地。中央が川棚川に注ぐ石木川=昨年9月

 記録的豪雨で熊本県の球磨川が氾濫し、多数の流域住民が死亡したことを受け、長崎県と佐世保市が東彼川棚町の川棚川支流に計画する石木ダム建設事業を巡り波紋が広がっている。球磨川支流に治水目的で建設予定だった川辺川ダムは11年前に計画が中止されたが、熊本県内の地元では建設を巡る議論が再燃する可能性が指摘されている。長崎県内では石木ダム建設反対派が「世論が極端にダム必要論に傾くのではないか」と警戒。一方、豪雨に不安を募らせる地元住民からは「夜も眠れない。ダムを建設して不安を解消してほしい」との声が漏れ聞こえてくる。
 川辺川ダムは、洪水被害が続いていた球磨川流域の治水対策で、国が1966年に建設を決定。だが2008年に蒲島郁夫熊本県知事が「ダムに頼らない治水対策を目指す」として反対を表明し、09年に当時の民主党政権が中止を決めた。その後、国と地元が治水代替策を検討したが、最終的な整備方針は未定だった。
 今回の球磨川氾濫を受け蒲島知事は「ダムによらない治水を極限まで検討する」と述べたが、具体的な方策には言及しておらず、今後の対応に注目が集まる。石木ダム建設予定地に住む石丸勇さん(71)は「石木と川辺川ではダムの規模や治水効果も全く異なるが、ダム反対を訴えづらくなったり、世論が極端にダム必要論に傾いたりしないか」と危惧。市民団体「石木川まもり隊」の松本美智恵代表も「どこかで豪雨災害が起きたら石木ダムに関連づけて、行政や議会から『治水対策にはやはりダムが必要』という話が出てくるのではないか」と警戒する。
 今回の九州豪雨では10日、川棚町でも1時間に80ミリの猛烈な雨が降ったが、川棚川の氾濫は確認されていない。それでも、川の下流域に住む80代女性は「大雨が心配で夜も眠れない。これからも続くと思うと苦しい。県の言う通りダムを造って不安が解消されるのであれば、ぜひお願いしたい」と声を上げる。一方、利水面でダム建設を求める佐世保市の水道局の担当者は「コメントする立場にない」とする。
 国は今月、近年の気候変動による豪雨災害を防ごうと、ダムや堤防など従来の治水対策に加えて、貯水池の整備や避難体制強化など地域全体で総合的に対応する「流域治水」を進める方針を打ち出した。本年度中に本明川(諫早市)など全国109の1級河川で治水、防災対策を策定。その後、川棚川など県管理の2級河川にも対象を広げる方針だ。
 川棚川について県は既に河川改修などハード面の整備に加え、水位計や雨量計の設置などソフト面を合わせた対策に取り組んでいるという。「石木ダム建設に反対の住民の方々にも治水対策に協力してもらえるよう努力したい」としている。