MotoGP初戦、クアルタラロが待望の初優勝をスペインGPで達成。マルケス兄はまさかの転倒リタイア

 MotoGPクラス初戦が、スペインのヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエトで幕を開けた。2020年シーズン、最初のウイナーとなったのは、ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)。マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)は終盤にハイサイド転倒を喫し、リタイアとなる波乱の初戦となった。中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は10位フィニッシュを果たしている。

 この決勝レース前、予選で激しい転倒を喫して右肩の骨折、脱臼を負ったアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)の欠場が発表された。リンスはQ1からQ2に進出していたが、Q2セッション終盤、11コーナーでクラッシュを喫していた。

 また、ウォームアップセッションでは、終盤にカル・クラッチロー(LCRホンダ・カストロール)が8コーナーでクラッシュ。この転倒によりクラッチローは脳震盪と首を痛めたため、決勝レースを欠場した。

 また、決勝レース前には、新型コロナウイルス感染症の世界的な影響を鑑み、黙とうの時間が設けられた。

 気温32度、路面温度53度のドライコンディションの下、MotoGPクラスの初戦が幕を開けた。抜群のスタートを切ってホールショットを奪ったのはマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)、その後ろにはマルケス兄、ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)が続く。

 3番手走行中のクアルタラロだったが、ジャック・ミラー(プラマック・レーシング)、さらにフランセスコ・バニャイア(プラマック・レーシング)のふたりに交わされ、オープニングラップで5番手にまでポジションを落とす。

 トップのビニャーレス、2番手のマルケス兄は接戦を展開。3周目、6コーナーで早くもマルケス兄がビニャーレスをとらえ、トップに立つ。ビニャーレスもマルケス兄に食らいつくものの、4周目にはその差0.368秒。じりじりとその差が広がり始めたかに思われた。

 しかし5周目、マルケス兄がまさかのコースアウト。4コーナーであわやスリップダウンというところ、ぎりぎりこらえてマシンを立て直し、アウト側のグラベルにコースアウトしながらも転倒を避けるというアクロバティックな回避を見せた。マルケス兄は16番手にまでポジションを落とすも、再びレースに加わり追い上げを開始する。レースは序盤。マルケス兄が追い上げる時間は十分にある。

 マルケス兄が後退したことで、トップに立ったのはビニャーレス。6周目にはいったんミラー、バニャイアに交わされたクアルタラロも2番手に浮上し、ヤマハライダーがワン・ツー体制を築いた。

2020MotoGP第2戦スペインGP:マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

 ビニャーレスに続くクアルタラロは7周目にはビニャーレスのすぐ後ろ、0.2秒差にまで迫る。さらにクアルタラロの0.3秒後方にはミラー、そして少し離れてバニャイアが続く。上位陣は接近した等間隔を保ちながら周回を重ねていく。

 9周目、13コーナーでバランスを崩したビニャーレスを、クアルタラロがオーバーテイク。追従するようにミラーもビニャーレスを交わし、ビニャーレスは3番手に後退。クアルタラロがトップ、ミラーが2番手に浮上した。

 トップのクアルタラロは、2番手のミラーとの差を1秒以上に広げながらトップを走行。その後方では、マルケス兄がファステストラップを叩き出しながら追い上げていた。12周目を終えた時点で、マルケス兄は8番手、トップのクアルタラロとの差は約8秒。

 クアルタラロは、14周目終了時点でミラーに対し約2.5秒の差を広げ、独走態勢を築く。一方、レースペースに自信を見せていたビニャーレスは、3番手を維持しており、2番手のミラーよりも4番手に迫るアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)との差が詰まりつつあった。そしてさらに後方から、マルケス兄が迫る。18周目にはビニャーレスとマルケス兄との差は2秒ほどになっていた。

 マルケス兄は19周目に4番手のドヴィツィオーゾを交わす。マルケス兄の前方には、クアルタラロとミラー、ビニャーレスのみとなった。そのビニャーレスもミラーを交わし、2番手に浮上する。

 20周目、マルケス兄が最終コーナーでミラーをとらえるも、ミラーも負けじと1コーナーのブレーキング勝負でマルケス兄からポジションを奪還。続く2コーナーで再びマルケス兄がオーバーテイクするとミラーを抑え、3番手ポジションを手にした。

 ついに追い上げたマルケス兄。ここから5秒前方を走るトップのクアルタラロを追い上げるかに思われた。しかし、まさにその最中、衝撃的な映像が飛びこんできた。残り4周、3コーナーでマルケス兄がハイサイド。激しくマシンから放り出されたマルケス兄は路面に叩きつけられ、さらにマシンに接触しながらグラベルに滑っていった。2019年シーズン王者の2020年シーズン初戦は、転倒リタイアという結果となったのだ。

 波乱含みとなったMotoGP第2戦スペインGP、クアルタラロがそのまま4秒以上の差を守り切ってトップでチェッカーを受けた。クアルタラロにとって最高峰クラス初優勝。2019年シーズンに何度もつかみそこねた優勝を、ついに手にした。

 2位フィニッシュとなったのはビニャーレス。トップを走りながらも何度かマシンのバランスを崩し、接近戦のなかでポジションを落としそのままトップ奪還はならなかったが、見事に表彰台を獲得した。

 3位には、終盤にミラーを交わして浮上したドヴィツィオーゾが入り、4位はミラー。5位にはフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)が入った。ポル・エスパルガロ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)が6位フィニッシュを果たしたのも注目したい点だろう。

 マルケス兄は転倒後、メディカルセンターに運ばれたと伝えられている。また、バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)はレース中にリタイア。週末を通じてセクター4に苦戦していた中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は14番手付近で健闘していたが、10位でフィニッシュを果たした。

 翌週月26日には、同じくヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエトで行われるアンダルシアGPが予定されている。

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