みなとメディカル診療休止 長崎市医師会・松元会長 転院の可能性も

長崎市医師会 松元定次会長

 長崎市の長崎みなとメディカルセンターが、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)発生に伴い、一般診療を全面休止している。同市と近郊の医療の中核を担っているだけに地域への影響は大きく、同市医師会と近隣の西彼杵医師会はセンターの患者受け入れに協力している。同市医師会会長の松元定次氏に現状を聞いた。

 -長崎みなとメディカルセンターが地域で果たしている役割は。
 センターは周囲の医療機関と連携し地域医療を守る「地域医療支援病院」。専門性の高い長崎大学病院に近い診療態勢を取っており、開業医らからの紹介でより高レベルの治療が必要な患者を受け入れている。患者の病状が落ち着けば、今度は逆に地域の医療機関に患者を紹介する。500超のベッドがあり収容力が高い。

 -クラスター発生をどう受けとめたか。
 ついに来たか、と。何とか防げなかったのかという思いはある。診療の全面休止が決まった12日夜、市医師会は市内の約470の医療機関にファクスでセンターに患者を紹介できなくなると連絡し、同時にセンターの患者受け入れも要請。15日には市医師会病院部会と西彼杵医師会でウェブ会議を開き、患者受け入れに協力することを確認した。

 -ウェブ会議の議論は。
 センターの各診療科の医師が、各医療機関に受け入れを要請し、リスト化していた。参加した医療機関からは「他の診療科も受け入れ可能」といった意見が出され、センターでリストを作り直すことになった。今まで経験したことのない事態で、どの病院にとっても他人事ではない。分担すれば対応できるとして、異論なく協力をいただいた。

 -地域医療への影響は。
 センターの外来は1カ月または3カ月に1回の受診などとスパンが長いことが多く、受け入れ医療機関に過度な負担はかからないだろう。ただ、急を要する場合は同じ地域医療支援病院の日赤長崎原爆病院や済生会長崎病院などで診てもらうことになるかもしれない。問題は入院患者。センターからの転院で病床を空ける必要がある場合、比較的病状が落ち着いている患者に退院をお願いするなどの調整が必要になるかもしれない。

 -市医師会はドライブスルー方式で感染の有無を検査する長崎地域のセンターも運営している。
 4月下旬の開設当初の検査数は1日30件弱。6月以降は10件前後に落ち着いていたが、クラスターが発生してからは1日50~60件に増えた。保健所からの行政検査の依頼増に加え、市民の不安、医師の危機感が高まった結果だと思う。

 


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