<隠れた名盤>ゆあさみちる『私の花』昭和ポップス好きにもおススメ

 NHKのど自慢グランドチャンピオン大会の入賞後、GLAYの作品へのコーラス参加やCMソングの歌唱経験を持つ女性アーティストのメジャー・デビュー作。影響を受けたアーティストにカーペンターズと早川義夫が並ぶあたりからも、その音楽性の幅を予感させる。

 表題曲は、アコーディオンやトランペットの音色がメランコリックなミディアム調の歌謡曲で、運命に身をまかせつつ、自分だけの“花”を咲かそうと誓う人生応援歌。彼女のちょっとハスキーな声もセクシーで良いし、サビで情熱的に歌い上げる部分も上手い。花岡優平作曲のためか、あるいは彼女自身がヒットを意識したのか、どことなく秋元順子『愛のままで…』を想起させるが、カラオケで歌いたくなる人は多いだろう。庄野真代や大橋純子の昭和ポップス好きにもおススメ。

 一転して、カップリングの『花の名前』は、静寂の中で凛として歌う姿が、孤独に耐えながらも懸命に生きる少女を想起させる内省的なバラード。こちらはゆあさ本人の作詞・作曲で、「痛みを知るあなただから 命は美しい」という部分をはじめ言葉に説得力がある。

 かなり異なる2曲を聴いて、もしかすると器用にこなせる人ほど実は不器用な人生を選ぶこともあるのではと想像した。だからこそ、その紆余曲折の中で生まれた経験で成長していくタイプなのかもしれない。本作を聴けば、物事が上手くいく方法は1つとは限らないと発想がより豊かになるはず。

(テイチク・1227円+税)=臼井孝

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