強い励ましに 長崎「被爆体験者」原告ら 「黒い雨」訴訟 原告勝訴

 「強い励ましになる」-。被爆者と認めるよう訴えている長崎県の「被爆体験者」訴訟の原告らは29日、「黒い雨」訴訟の広島地裁判決を「画期的」と歓迎し、自身らの訴訟の追い風になることを期待した。
 国が定める長崎の被爆地域は爆心地から南北12キロ、東西7キロといびつな形。同じ半径12キロ以内でも、被爆地域の外で原爆に遭った人たちは被爆体験者と呼ばれ、被爆者とは国の援護に大きな差がある。長崎市などに被爆者健康手帳の交付などを求めた集団訴訟は第1陣、2陣ともに昨年までに最高裁で敗訴が確定した。第1陣は長崎地裁に再提訴し係争中。第2陣も再提訴に向け準備している。
 被爆体験者訴訟弁護団の三宅敬英弁護士は、今回の判決に「想定外」と驚きを隠せない。同訴訟のように被ばく線量が争点とならず、「黒い雨を浴びた」との証言と、国が手帳の交付対象とする疾病の発症で、被爆者と認めた広島地裁判決を「画期的」と評価した。
 三宅氏は、長崎の場合、原爆投下直後に米国が派遣した調査団による放射線量測定データがあり、再提訴した原告全員に手帳の交付対象の疾病もあるとして「広島と同じ論理なら、被爆体験者も被爆者と認められるのではないか」と指摘した。
 「身が震える思い。強い励ましになる」。第1陣の原告団長、岩永千代子さん(84)は広島地裁判決を歓迎し、決意を新たにした。第2陣の原告団長、山内武さん(77)も「良識ある判決だ。(広島市などは)絶対に控訴すべきでない」と強調した。
 国に対し、長崎の被爆地域の拡大を求めている長崎市の田上富久市長は「裁判の行方を重大な関心を持って注視する」とのコメントを出した。

 


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