核廃絶へ当事者意識を 長崎平和宣言骨子 新型コロナ絡め

2020年長崎平和宣言(骨子)

 長崎市の田上富久市長は30日、8月9日の長崎原爆の日の平和祈念式典で読み上げる長崎平和宣言の骨子を発表した。核問題を新型コロナウイルスという人類共通の課題に重ね合わせ、核兵器廃絶に対しても当事者意識を持つ必要性を世界に訴える。日本政府が反対している核兵器禁止条約の署名・批准については、政府に加え、新たに国会議員にも呼び掛ける。
 市役所で会見した田上市長は、今年が被爆と国連創設から75年、核拡散防止条約(NPT)発効から50年の節目として「核廃絶の原点を思い出そう、というメッセージにしたい」と述べた。宣言には、長崎原爆に妻子を奪われた被爆者で、作曲家の故・木野普見雄さんの手記を引用。壮絶な体験を語り続けてきた被爆者らに感謝し、拍手を送る。
 核軍縮に逆行する国際情勢への危機感も表明。ローマ教皇フランシスコが昨年11月に長崎を訪問した際、核廃絶には「全ての人の参加」や「信頼」が必要と説いたスピーチを引用する。
 2017年に国連で採択された核禁条約の批准国数は30日現在40と、発効に必要な50に近づいている。田上市長は、日本も「被爆国として核廃絶の先頭に立つべきだ」と強調。広島や沖縄との連帯、恒久平和実現への決意を示す。政府には憲法の平和理念の堅持や、被爆者援護の充実、「被爆体験者」の救済も求める。
 宣言は、被爆者や核軍縮の専門家ら15人の起草委員が5月以降、内容を検討してきた。文字数は前年より1割超多い2239字と、田上市政で最多。8月9日に市長が読み上げ、英語や中国語、フランス語など10カ国の翻訳版も市ホームページで公表し、世界へ発信する。

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