医療体制「首の皮一枚」 長崎県医師会が「コロナ対策再強化宣言」 高齢者増なら崩壊危機に

共同記者会見で説明する長崎大学病院の泉川教授=長崎市、県医師会館

 〈県医師会、長崎大、長崎大学病院は3日、長崎市内で共同記者会見。「コロナウイルス対策再強化宣言」を出し、県内の医療体制について極めて厳しい状況との認識を示した。同病院感染制御教育センター長、泉川公一教授の医療現場からの報告要旨を紹介する〉

 感染状況に応じて専用病床確保数を定めた5段階のフェーズは本土地区で3になった。3日現在、確保病床数は208で病床占有率は15.4%。宿泊施設のベッド数は157で占有率は22.2%。自宅療養(受診待ち含む)は10人以上。
 数字上、病床確保はできているが安心はできない。コロナ患者は通常の疾患に比べると数倍の負荷が医療従事者にかかる。肉体的、精神的にも余裕が必要だ。医療従事者には常に不安とストレスがかかっている。
 県内の最も重症だった40代の患者は軽快して退院したが、治療中はたくさんの機械がつながれていた。医療従事者は個人防護具、マスク、ガウンなどを着て治療し、検査のために移動しないといけない。搬送も他の人と接触しないよう交通整理しないといけない。すごく大変な肺炎だった。たった一人の重症者でも、ものすごい負荷がかかる。個人防護具を着て夏に診療すると、体力も奪われる。われわれは訓練をしたプロなので諦めないが、重症者が増え、本県の医療がつぶれることがないよう強く願う。
 7月は飲食店、特にアルコールを提供する店から感染者が出た。長崎市の指定医療機関である長崎大学病院、長崎みなとメディカルセンター二つとも影響を受けた。みなとメディカルでは90代の患者が治療を受けている。高齢者は重篤になりやすく危険だ。患者は治療後に施設に移ってもらわないといけない。施設とのリンクは必ずある。
 指定医療機関で感染者が出ると、施設にも感染が拡大していく。高齢者施設にはわずかな医療従事者しかいない。クラスター(感染者集団)が起きると大変になる。施設の中で診療せざるを得ない。飲食店からは学校にも感染が広がった。予想を超えて子どもたちが感染した。家庭で感染を防ぐのは難しい。
 主な感染経路は若い人の県外移動に伴うものだ。高齢の感染者が増えて重症化すると医療崩壊の危機に陥る。実際の医療体制は極めて厳しい状況だ。特に県央で感染者が著しく増え、長崎市も逼迫(ひっぱく)している。県北もしかりだ。今は首の皮一枚でつながっている。
 できるだけ控えてほしいことは、(1)同居者以外との会食(特に夜にアルコールを提供する店)(2)県外への移動(特に若い社会人、学生、医療職、介護職)。
 控えるのが難しい場合は店の従業員と客は「接触確認アプリ」を使用してほしい。3密が避けられる店、特に換気されている店を利用し、食事をするとき以外はマスクを着ける。県外に移動する場合は感染対策を徹底し、接触確認アプリを使い、行動記録と移動後2週間の健康記録を付け、可能な限り外出自粛をしてほしい。大学など教育機関では新しい生活様式の徹底、マスクの着用、手洗いの徹底をもっと強く指導してほしい。

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