シカ革で赤ちゃんのファーストシューズを 主婦ら“職人”に

五島・玉之浦 プロジェクト始動

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玉之浦町で捕獲されたシカの革で作られたファーストシューズの見本

 長崎県五島市玉之浦町で、地元で捕獲されたシカの革を活用し、赤ちゃんが初めて履く「ファーストシューズ」を作るプロジェクトが動きだした。有害鳥獣対策に取り組む市地域おこし協力隊の野澤努さん(53)が呼び掛け、地元の主婦らが“靴職人”として協力。月に約10足の限定販売で、野澤さんは「島の温かさが伝わる贈り物として、玉之浦に根付かせたい」と意気込む。

 野澤さんは昨年4月に着任後、市内で1年間に数百から千匹以上が捕獲されるシカの「地産地消」を目指して活動。シカ肉料理の試食会やレザークラフト教室などを開催してきた。
 こうした活動を知った市民から、福岡県在住で五島出身の靴職人を紹介され、靴作りを模索。シカ革は柔らかく肌触りが良いのが特長だが、大人用の靴としては丈夫さなどに課題も。そこで歩き始めたばかりの赤ちゃんの足を優しく包むファーストシューズとして、革を生かすことにした。
 製作には、玉之浦町活性化協議会の女性メンバー4人が協力。靴職人にファーストシューズの見本や型紙を提供してもらい、同町の交流施設の古民家「松ノ下」で既に作り始めている。間もなく第1弾の靴が出来上がる見込み。完成次第、五島で子育てをする親や祖父母、島出身者ら向けに販売を始める。価格は8500円の予定。
 材料は地元で捕獲したシカ革だが、なめし加工は島外の業者に外注。野澤さんは今後、島内に加工拠点を設けて、捕獲から革のなめし、靴の製造まで一連の流れを島内で完結させ、新たな産業や雇用の創出にもつなげたい考えだ。
 「ファーストシューズの取り組みの狙いは、単に革を有効活用するだけではない」と強調する野澤さん。将来的には地元の高齢者にも靴の製作に協力してもらい、獣害対策、高齢社会における生きがいづくり、地域を挙げた子どもの見守り-が一体となった「福祉のバトン」を目指している。

型紙に合わせて切り抜いたシカの革を、針と糸で縫い合わせていく女性たち=五島市、古民家「松ノ下」