MotoGP第5戦:ドヴィツィオーゾが1年ぶりの優勝。大クラッシュ、上位陣転倒の荒れたレースを制す

 MotoGP第5戦オーストリアGPの決勝レースがレッドブル・リンクで行われ、MotoGPクラスはアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)が優勝を飾った。大クラッシュが発生し赤旗中断となるなど、波乱のレース展開となったが、1年ぶりの勝利を手にした。中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は堅実な走りで6位フィニッシュを果たしている。

 決勝レースは気温28度、路面温度49度のドライコンディションで始まった。ホールショットを奪ったのはジャック・ミラー(プラマック・レーシング)だったが、序盤、トップに立ったのはポル・エスパルガロ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)。2番手にアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)、3番手にジャック・ミラー(プラマック・レーシング)などが続く。

 9周目、3コーナーに向かうストレートで8番手を走っていたヨハン・ザルコ(エスポンソラーマ・レーシング)と9番手のフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)が接触してクラッシュ。確認できている範囲では、ストレートでモルビデリのバイクのフロントタイヤが、前を行くザルコのリヤに接触し、この反動で2台のバイクが弾き飛ばされた、という状況のようである。

 マシンはストレートでハイスピードが出ている最中だったため、タテ回転しながら3コーナーアウト側に吹っ飛んだ。破片をまき散らし大破しながら転がっていくモルビデリのマシンは7番手走行中だったロッシに当たりそうになり、ロッシはスローダウンしエスケープゾーンにラインを外して、あわやという瞬間を切り抜けた。

 このクラッシュにより、二人のライダーもマシンから放り出された。ザルコは3コーナーのイン側に留まるように転がったが、モルビデリは勢いよくアウト側まで転がっていった。ザルコはすぐ、ふらつくように立ち上がったが、3コーナーアウト側に吹っ飛ばされたモルビデリはしばらく起き上がれず、ザルコが駆け寄って確認する様子を見せている。その後、モルビデリは自身の足で立っている姿が確認できた。

 このアクシデントにより、赤旗が提示されてレースは中断。約20分の中断を経て、8周終了時点のポジションをグリッドとして、20周でレースが再開された。以下、周回数は2度目のスタートを1周目としてカウントしていく。

 2度目のスタートをポールポジションで迎えたエスパルガロ弟はトップをキープするが、1周目でミラーがエスパルガロ弟を交わしてトップに浮上。エスパルガロ弟はアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)にも交わされ、3番手に後退する。

 一方、当初のポールシッターであり、2度目のスタートでは6番グリッドスタートだったマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は4周目あたりで大きく後退した。5周目には20番手以下にまでポジションを落としており、何らかのトラブルを抱えていたものと推察される。また、ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)は8周目には13番手を走行していた。

 9周目、チーム・スズキ・エクスターのアレックス・リンスとジョアン・ミルが3番手、4番手に浮上。5番手に後退していたエスパルガロ弟だったがミゲール・オリベイラ(レッドブルKTMテック3)とともに転倒を喫した。4コーナーでワイドに膨らんだエスパルガロ弟は、ラインを回復させている途中にイン側に位置していたオリベイラと接触。エスパルガロ弟とオリベイラはここでリタイアとなった。

 一方トップは10周目に交代。ドヴィツィオーゾがミラーを交わしてトップに立つ。さらにリンスがミラーを交わして2番手につけると、ドヴィツィオーゾをもオーバーテイク。トップに立ったと思われたがその直後、リンスはスリップダウンを喫してレースから脱落してしまう。

 リンスのクラッシュにより、ドヴィツィオーゾがトップ、ミラーが2番手、ミルが3番手というトップ3.その約2秒後方にブラッド・ビンダー(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)、中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)はトップから約5.6秒差の6番手を走行していた。

 ドヴィツィオーゾは終盤、少しずつ後方との差を広げていき、そのままトップでチェッカーを受けた。自身としては2019年シーズンのオーストリアGP以来の勝利。実に1年ぶりの優勝となった。

 2位は最後の最後にミラーを交わしたミルが入った。MotoGPクラス2年目のシーズンで、自身初の表彰台を獲得した。ラストラップにミルに交わされたものの、ミラーは3位表彰台を獲得している。

 週末を通してチームメイトに先行されていたビンダーは見事4位フィニッシュ。バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が5位、中上は6位でチェッカーを受けた。一方、フロントロウを獲得したヤマハのふたり、ビニャーレスとクアルタラロはレースで苦戦。ビニャーレスは10位、クアルタラロは8位という結果となった。

なお、レース1の大クラッシュによりメディカルセンターに運ばれたモルビデリは、ペトロナス・ヤマハSRTのプレスオフィサーからの情報によれば、「右手、右足、頭を打ったが、意識を失うことはなかった。CTスキャンの結果、大きな怪我はないことがわかった」と、大事には至らなかったということだ。

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