3連覇狙う西武、苦戦の要因はどこに? 元コーチが分析する課題と今後の鍵

西武などでコーチを務めた橋上秀樹氏【画像:パ・リーグ インサイト】

2016年から3年間、1軍作戦コーチを務めた橋上氏が語る西武

西武で2016年から2018年まで1軍作戦コーチとしてチームに貢献するなど、巨人やヤクルト、さらには日本代表でコーチを務めた名参謀の橋上秀樹さん。現在の西武の礎を築いた橋上さんに、今シーズンのチーム状況、3連覇の可能性について聞いた。(取材日は8月4日)

――現在(8/4)ライオンズはパ・リーグ4位。今のチーム状況をどう見ていますか?
「優勝候補の1つだったので、予想外ですね。なんといっても、今年は打てていない。森にしても山川にしても、打率が非常に低いですね。森にとってはプロに入ってきて初めて、特に大きな壁に当たっている感じがあります。昨年あれだけ素晴らしい活躍をしたということで、他球団が森への対策をしっかり立てて挑んできているというところが数字に出ているのかなと思いますけどね」

――昨年まで不動だった打線が今年は試行錯誤している状態です。
「源田は入団した時からずっと成績が良かったけれど、今年は良くないですよね。外崎にしても、森にしても、山川にしても、みんな調子が良くない。首脳陣としては、打線の調子が悪い時はどうしても打順をいじらざるを得ない。昨年まで不動でいけたのはそれぞれの選手が成績を残していたのでそれで良かったのですが、今年は不調の選手が非常に多いので、首脳陣もより良いつながりを探している段階ですね」

――鈴木将平、川越誠司などの新しい選手が台頭してきています。
「秋山翔吾が抜け、金子が故障していることによって出番がある訳ですから、チャンスを生かして頑張っていますね。だけど、長続きしない。チームの状態が良ければ、彼らも好調の時間がもっと長く続いたと思うんですよね。チームとして勢いというのが欠けているのかなと感じます」

不振の攻撃陣「連覇していることで気の緩みがあるのでは」

――攻撃陣の成績が良くない理由をどう考えますか?
「言い方は悪いですが、連覇していることで気の緩みがあるのではないかと思います。やはり、勝っているチームより負けたチームの方が必死になって策を練りますから。パ・リーグ5球団はしっかりと研究をして抑えているなと思います。だからこそ、何年も連続して勝つことは難しいんですよ」

――勝ち続けるためには何が必要でしょうか?
「勝ちに慣れていくと、選手がマンネリ化するとか、モチベーションが上がってこないとか、そういうところは出てきてしまいます。ところがチーム内の競争が激しいと、ウカウカしているとゲームに出られなくなります。その競争意識がチームを活性化される1つの大きな要因ですよね。つまり、選手層の厚さがチーム内の競争を激しくし、ひいてはチーム力を停滞させない、常勝といわれるチームの基本的な形だと思います」

――今年のライオンズは機動力を生かしきれていないイメージがあります。
「結局、動けないんだと思います。ランナーが塁に出ていないし、勢いがないのでスタートを切りづらい。去年や一昨年は盗塁でアウトになってもどんどんランナーが出ていたので、少々無謀でも仕掛けるところがありましたけど、今はランナーが出ていない。これだけ極端に出塁率が低下してくると、出たランナーに対して用心深くというか、丁寧な攻撃になりがちですよね」

「攻撃陣が機能していくことによって投手を助けていくのが西武の勝ち方」

――期待している投手は誰ですか?
「頑張っている選手はいるんですけど、僕はもうちょっと今井が勝てると思っていました。先発ローテーションを回せて、勝ちを計算できるのがニールと今井くらいかなと思っていたのですが、相変わらず中継ぎの平井とかに勝ち負けが付く。先発ピッチャーに勝ち負けがつかないのはチームとしてあまりよくないですよね。平良、平井、増田、この辺は中継ぎとしていい方なので、彼らにつなぐまでの先発、あとは中継ぎをもう1枚整備する。先発が6回までもたないことが多いので、先発をもう1イニング頑張らせるのか、6回を任せられるピッチャーを作っていくかというところですね。先発ピッチャーに関して言えば、今井、高橋光、本田とか、この辺の若いピッチャーがもうちょっと勝てると思っていたんですけどね」

――リーグ3連覇を目指す上で必要なことは何でしょうか?
「まだまだ30数試合の段階ですから、本来であれば先発ピッチャーがフレッシュな状態のはずです。それなのに現状では先発が機能していなく、中継ぎへの負担が大きい。これから疲れや暑さで調子が落ちてくることを考えると、なかなか苦しいですね。ただ、打線が回復すれば先発ピッチャーにも勝ちは付くと思うんですよね。今までライオンズが連覇してきたのも、ピッチャーが打たれてもそれ以上にバッターが打っていた訳で。攻撃陣が機能していくことによってピッチャーを助けていくのが本来のライオンズの勝ち方なので、そういう意味ではまだまだ上を目指していけると思いますよ」

――上位を目指す上で、キーマンを教えてください。
「森、源田というところが大きいですよね。山川の前を打つ選手が出塁率を上げていかないと、山川の長打というものが効果的に生きないです。調子が上がってこないことを本人たちは重々承知していると思いますし、元々彼らはすごく練習をする選手なので、今でもしっかり練習はしているはずです。若いのでその練習がいい結果として現れてくると思いますし、苦しい状況を乗り越えてさらに素晴らしい選手になっていってほしいですね」(「パ・リーグインサイト」本間奈保子)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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