MotoGP第6戦:KTMのミゲール・オリベイラが初優勝の快挙。赤旗中断で中上の表彰台は幻に

 MotoGP第6戦スティリアGPの決勝レースがオーストリアのレッドブル・リンクで行われた。MotoGPクラスのレースはアクシデントにより赤旗中断となり、再開されたレースで、ミゲール・オリベイラ(レッドブルKTMテック3)が自身初優勝を飾った。中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)はレース2で7位フィニッシュだった。

 決勝レースは気22度、路面温度35度のドライコンディションで行われた。予選で3番手タイムをマークしたヨハン・ザルコ(エスポンソラーマ・レーシング)は前戦オーストリアGPのフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)との接触、クラッシュに対しペナルティが科され、ピットレーンからのスタートとなった。

 ホールショットを奪ったのは、4番手スタートのジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)。ポールポジションスタートのポル・エスパルガロ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)が2番手につけていたが、4コーナーでエスパルガロ弟がラインを外し、その先の5コーナーで2番グリッドスタートの中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)と軽く接触。トップはオープニングラップでジャック・ミラー(プラマック・レーシング)に代わり、ミル、中上、エスパルガロ弟、その後ろにアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)が続く展開。

 中上は3周目に1分24秒839のファステストラップを記録。3番手を走行しながら、4周目には2番手のミルのインを伺う動きを見せる。ミルは4周目の10コーナーでミラーを交わしてトップに立つと、再びレースをリード。5周目にはファステストラップを記録しながら、少しずつ2番手のミラーとの差を広げていく。ミラーは予選日のフリー走行3回目で転倒し、右肩を強打。フリー走行4回目の走行をキャンセルしたが、決勝レースでは上位を争う力強い走りを見せる。

 3番手につける中上は、ミラーの約0.2秒後方にぴたりとつけて周回を重ねていた。7周目に入るころには、トップのミル、2番手のミラー、3番手の中上の3人がトップグループとして抜け出す形になる。この集団は4番手に交代したエスパルガロ弟以下に対し、約1.5秒のアドバンテージを築いていた。

 エスパルガロ弟の背後にはぴたりとつけ、4番手争いを展開。その約0.5秒後方にはアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)、ブラッド・ビンダー(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング))、ミゲール・オリベイラ(レッドブルKTMテック3)が続く。

 こうしたなか、ヤマハ勢は全体的に苦戦。ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)は10周目で11番手付近を走行。マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)、バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)も10番手以下でのレースとなる。

 13周目に入るころには、ミルが少しずつミラーと中上を引き離し始める。その差は1秒以上に広がった。一方、2番手のミラー、3番手の中上は僅差でのバトルを展開。16周目には中上が一時、ミラーの前に出るも、ミラーがストレートの加速で再び中上をオーバーテイク。さらに中上がミラーのインに飛び込み交わすと、2番手に浮上した。

 しかし17周目、1コーナーの先のエアフェンスに突っ込んだビニャーレスのバイクが炎上。このためレッドフラッグが提示され、レースは一時中断となった。状況としては、1コーナーの進入で、230km/hのスピードが出ているマシンからビニャーレスが落下。ほぼ直立状態のビニャーレスのマシンはライダーを失ったまま直進し、1コーナーアウト側のエアフェンスに突っ込んだ。ビニャーレスは無事だった。

■レース2でフロントロウからスタートした中上だが……

 中断から9分後、レース再開に向けてピットレーンがオープン。2度目のスタートは、16周目終了時点のポジションがグリッド順で、12周で行われることとなる。ミルがポールポジション、中上が2番手、ミラーが3番手のフロントロウ。

 レース2のスタートでも好スタートを切ったのはミル、そしてミラーだった。中上はスタートで遅れ、3番手以下の集団に飲み込まれてしまう。一方、トップはミラーが奪取。新品のソフトタイヤを前後に装着したミラーは、2周目(以下、レース2の周回数)にはファステストラップを叩き出しながら、レースをリードする。

 ミラーの後ろで2番手につけていたミルだったが、エスパルガロ弟、さらにはオリベイラに交わされ、4番手に後退。2番手に浮上したエスパルガロ弟は、トップのミラーの背後につけると、7周目の9コーナーでミラーをオーバーテイク。トップに立った。しかしミル、オリベイラ、ミル、さらにはドヴィツィオーゾが僅差で連なる状況。この5台がトップ集団を形成し、その約0.6秒後方に中上が6番手で続く。

 残り4周となると、3番手のオリベイラと4番手のドヴィツィオーゾとの差が広がり始める。トップは変わらずエスパルガロ弟。しかし最終ラップ、3コーナーでエスパルガロ弟のラインがワイドになり、加速が鈍る。そのすきを逃さずミラーが続く4コーナーでエスパルガロ弟をオーバーテイク。エスパルガロ弟が9コーナーでミラーのインに入り、ミラーと接戦を演じながら最終コーナーへ。ミラーはエスパルガロ弟のインにつけるが、ともに膨らみ、立ち上がりでマシンの挙動が不安定になる。そこへすぐ後方の3番手につけていたオリベイラが、最終コーナーの立ち上がりで一気に加速すると、ミラー、エスパルガロ弟を交わして優勝を飾った。

 優勝したオリベイラはMotoGPクラスでの初めての勝利を手にした。また、ポルトガル人として初のMotoGPクラスウイナーとなる快挙。さらに、レッドブルKTMテック3にとってもKTMのサテライトチームとなって初めての優勝となった。2位にはミラー、3位にはエスパルガロ弟が入り、激戦のスティリアGPのトップ2にKTMライダーが入った。

 中上はレース2ではスタートから後退し、7位フィニッシュ。レース1でトップを走行したミルは、レース2では優勝争いに加われず、4位フィニッシュとなった。

2020年MotoGP第6戦スティリアGP ポル・エスパルガロ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)
2020年MotoGP第6戦スティリアGP ミゲール・オリベイラ(レッドブルKTMテック3)
2020年MotoGP第6戦スティリアGP ミゲール・オリベイラ(レッドブルKTMテック3)
2020年MotoGP第6戦スティリアGP マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)
2020年MotoGP第6戦スティリアGP バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

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