中日が大野雄温存でローテ再編 2年目右腕の先発定着への課題を川崎憲次郎氏が分析

中日・勝野昌慶【写真:荒川祐史】

初回に打者一巡のビッグイニングを招くも、2回以降は追加点を許さぬ粘投

■巨人 3-2 中日(30日・東京ドーム)

中日は30日、敵地での巨人戦に2-3と競り負けた。首位を走る巨人に対し、セ・リーグで唯一勝ち越していたが、この日の黒星で7勝7敗1分の5分。本来、先発予定だった大野雄大に代わり、およそ3週間ぶりに1軍の先発マウンドに上がった勝野昌慶は、6回を投げて8安打3奪三振1四球で3失点(自責3)。初回に打者一巡の猛攻を受け、3敗目こそ喫したが、2回以降は追加点を許さない粘投を見せた。

「初回を3点で抑えられたこと、そして2回以降はポイントで併殺に打ち取れたことが大きかったですね」と語るのは、現役時代はヤクルトと中日でプレーした川崎憲次郎氏だ。

初回、プロ2年目の勝野は先頭の坂本勇人に左翼線二塁打を許すと、暴投で三塁まで進め、続く松原聖弥の中犠飛で、あっという間に先制された。ここから仕切り直しといきたかったが、続く亀井善行の一塁内野安打から4連打で、さらに2失点。なおも四球で1死満塁としたが、8番・若林晃弘を空振り三振、投手の直江大輔を二塁ライナーとして、打者一巡されながらも3失点で切り抜けた。

この回、まだ投げ始めたばかりの勝野を見た川崎氏は「上半身と下半身のタイミングが合っていない」と指摘していた。下半身から生まれるパワーを上半身にうまく伝えきれず、ボールに最後に一押しを加えきれないため、上下のコントロールが大きくブレてしまう。そのブレを修正しようと上半身に頼り過ぎると、さらにタイミングがずれる……。そんな悪循環に陥る勝野を見ながら「多分、何を投げていいのか分からなくなっていると思います」と続けた。

「実は僕も2年目に、2/3回で8失点した経験があるんです。神宮球場での巨人戦で、相手の先発だった槙原(寛己)さんにもセンター前にヒットを打たれて(苦笑)。正直、どこに何を投げていいのか分からなかった覚えがあります。今日の勝野投手は僕ほど悪くないけど、同じような心境だったと思いますよ。こうなると、もう真ん中に投げて相手のミスショット頼みをするしかない。あの場面をよく3点で抑えました」

ここで割り切ることができたのか、勝野は2回以降は調子が良くないなりにも連打を許さず。6回を87球で投げ終えるまで追加点を与えなかった。再びビッグイニングを作る危険性をはらみながらも、結果として勝野が粘投し、クオリティスタート(6回以上自責3以下)を達成できたのはなぜか。

川崎氏がポイントに挙げるのは「ウィーラーの2併殺」だった。

今後の成長に繋げたい課題とは…「初回をどう投げればいいのか」

3回、先頭の丸佳浩にセンターへヒットを運ばれたが、続くウィーラーはピッチャー返しで併殺。大城卓三も左飛とし、打者3人で回を締めくくった。まったく同じような状況が生まれたのは6回だ。ここでも先頭の丸に左前打を浴びるも、ウィーラーは遊ゴロ併殺。大城は二ゴロに打ち取った。

「振り返ってみると、あのウィーラーの2つの併殺は大きなポイントになりましたね。まず3回に1つ目の併殺に仕留めた後、続く大城もしっかりアウトに仕留めた。抑えるべきところを抑えたことで、勝野投手は流れを掴みます。そして6回。試合が大きく動きやすいイニングであることに加えて、この日の勝野投手は常に崩れる可能性を抱えていた。そこで先頭の丸選手にヒットを許して、少し危ないかなと思ったところで、ウィーラーを併殺と粘りました」

川崎氏が「2回以降はどんな考えを持って投げていたのか、勝野投手に聞いてみたい」と言うほどの切り替えに成功した2年目右腕だが、もちろん初回のピッチングには課題が残る。

「初回をどう投げればいいのか。これはしっかりと考えなければいけないでしょう。例えば、誰に打たれてはいけないのか。今日の場合は、犠牲フライで1点先制された後の亀井選手。あそこで打ち取れなかったことが連打を呼びました。あとは、上半身と下半身のタイミングが取れていないフォームをどう矯正していくか。次の登板に向けて、どう調整していくか。このあたりが今後の課題になるでしょう」

成長への課題が多く見つかったが、それでも「6回を投げきったことは自信にしていい」という川崎氏。この日、先発予定だった大野を9月1日から始まる広島3連戦の初戦に変更し、先発ローテ再編を図る中日だが、勝野に再びチャンスが与えられるなら、わずかでも成長の印を見せておきたい。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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