「賃貸で月20万は馬鹿らしい。購入したほうが得?」都内住み妊活中夫婦の悩み

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、30歳、会社員の男性。現在妊活をしながら子育て可能な物件への引っ越しを検討中とのことですが、賃貸と購入、どちらがよいか迷っているそう。FPの高山一惠氏がお答えします。

ベンチャーで仕事バリバリ夫婦です。賃料20万円の賃貸に住むか、マンション購入するか迷っています。

現在夫30歳と妻29歳の夫婦です。妊活を始めており、子どもができることを望んでいます。現在住んでいるのは、13.5万の23区内の賃貸ですが、子ども禁止の物件のため、妊活をしながら引っ越しのタイミングをうかがっています。ただ、子どもを育てるための広さの物件を東京(23区を出たとしてもなるべく都心に近いエリア)で探すとなると、ある程度の物件のレベルだと賃料が安くても20万円ほどになってしまいます。郊外も考えたいのですが、二人ともベンチャー企業に勤務しており、夜遅くまで働くこともよくあるので出来るだけ勤務先に近いところに住みたいのです。もはやマンション購入を考えたほうがいいのかとも思っていますが、今の年収はベンチャー企業勤めでバリバリ働いている恩恵であり、大企業のように今後雇用が安定したり、年齢とともに収入が上がっていく保証もありません。マンションを購入したら、賃貸のように収入が下がった際にすぐに引っ越すという選択肢は出来なくなると思い、少し我慢しても物件のレベルを下げて賃貸にするのが妥当かとは思っていますが、探しても探してもいい物件はなく、賃貸で20万円以上を支払うのは馬鹿らしい気もしています。どうしたらよいでしょうか。

最近二人とも昇格し、世帯年収が額面で1300万円ほどになりました。二人で喜んではいるものの、この収入をずっと維持するのは難しいと現実的にとらえています。子どもができると今ほどバリバリ働くことは出来なくなるかもしれませんし、そもそも勤め先がベンチャーなので、ビジネスが安定しているとも限りません。将来のことも考えて正しい選択をしたいと思っています。(※一部割愛)

【相談者プロフィール】

男性、30歳、会社員、既婚

同居家族について:妻、29歳、ベンチャー企業で働いており、年収は400万円ほど

住居の形態:賃貸

毎月の世帯の手取り金額:78万円

年間の世帯の手取りボーナス額:50万円

毎月の世帯の支出の目安:53万円

【毎月の支出の内訳】

住居費:13.5万円

食費:5万円

水道光熱費:2.5万円

保険料:7万円

通信費:1万円

お小遣い:6万円

その他:18万円

【資産状況】

毎月の貯蓄額:10万円

ボーナスからの貯金:0

現在の貯蓄総額:400万円

現在の投資総額:70万円

現在の負債総額:0


高山:ご質問ありがとうございます。賃貸か家を購入するかで迷われているようですね。確かに、新型コロナウイルスの影響が長期化し、先行き不透明な中、賃貸でいくべきか、購入するべきか悩みますよね。賃貸か購入かは、永遠のテーマですが、どちらもメリット・デメリットがあります。メリット・デメリットを比較した上で、ご自分たちのライフプランをよく考えて決めることが大切です。今回は、家についてのご相談にフォーカスし、マネーの面からのお得度やもし家を購入するとなった場合の注意点をお話します。

住宅購入のお得度を検討する際の3つのポイント

先行き不透明な中、家をどうするかについては、悩むところでしょう。ご相談者さんもおっしゃっているように、全ての条件を満たす物件はありません。物件の質もエリアも求めれば、家賃が高くなりますし、家賃を重視すれば、物件の質やエリアを妥協することになります。まずは、何が一番の優先事項なのかをご夫婦で明確にすることが必要です。

都内の賃貸物件の場合、エリアや広さ、駅からのアクセスなどにこだわると、ご相談者さんがおっしゃるように、どうしても月に20万円以上の家賃は覚悟しなくてはならないでしょう。

では、いっそのこと、同じようなクオリティの物件を購入するということも選択肢に上がると思いますが、賃貸と購入ではどちらがお得なのでしょうか?

家を購入するのが良いのか、賃貸の方が良いのかは、昔からよく議論されるところですが、実際のところ、(1)これから先、何年生きるかがわからない(2)将来の住宅価格がどう動くかがわからない(3)マイホームに対しての価値観が人によって異なるのでどちらがお得かは、一概にはいえません。

マネー面からのお得度は、賃貸と購入ではほとんど差がない

参考までに、ざっくりした試算ではありますが、お金の面から賃貸と購入のお得度を比べて見ましょう。例えば、「賃貸で家賃20万円、3LDKの場合」と「広さなど条件が同程度の3LDK、物件価格5,500万円」の場合を考えてみましょう。購入の条件は、ローンの期間を35年、金利1%、頭金1,100万円(物件価格の2割)とします。

【賃貸の場合】
敷金40万円、礼金20万円、家賃(35年)8,400万円、更新費用(2年に1度)340万円。合計8,800万円。

【購入の場合】
頭金1,100万円、諸経費(物件価格の7%と仮定)385万円、毎月のローン(35年)約5200万円 、管理費・修繕積立金(35年)1,260万円、固定資産税(35年)400万円。合計8,345万円。

一見すると、購入の方が若干安いですが、建物が古くなったらリフォームなどのメンテナンスをする必要があります。また、今は住宅ローンの金利が低いから返済額が少なくなっているということもありますし、頭金の金額などによっても変わってくるでしょう。いずれにせよ、マネーの面からみると、そんなに大きな違いはないということです。

ですから、大切なのは、自分のライフプランの中で「住宅」をどう活用したいのかです。いつ、誰と、どんな風に暮らすのか、「現役時代」「定年後」「介護が必要になったら」と人生を3タームに分けて考えてみると、プランニングしやすいでしょう。

無理のないローン返済はどれくらい?

では、仮に家を購入するという選択をした場合の注意点についてお話します。

ご相談者さんも心配しているように、お子さんが生まれた場合、今と同じように働けない可能性が高いですし、今後、コロナの影響が長期化すれば、収入が減少する可能性も高いでしょう。とすると、大切なのは、家計を圧迫しない住宅ローン返済のプランを組むことです。

現在、ご夫婦の年収を合わせた世帯年収は、1,300万円とのことですが、今後の状況の変化なども考え、手堅く見積もり、世帯年収が1,000万円程度になったと想定して考えてみたいと思います。年収1000万円程度というと、手取り年収にすると、700万円程度。月額にすると60万円程度になります。

一般的に住居費用は、手取り金額の25%以内に収めるのが理想といわれていますが、都心部のマンションの場合、価格が高いので、35%以内までは許容範囲とします。

5500万円の物件で試算すると

仮に上記でお話しした5,500万円の物件を頭金200万円(現在の貯蓄額から手元資金として残しておいた方が良いお金などを考慮した結果)、金利1%で35年間借りた場合、毎月のローンの返済額は、約14万9,000円。マンションの場合、管理費・修繕積立金が加わるので、2.5万円程度を加えると、毎月約17万4,000円程度支払うことに。住居費用の家計に占める割合は29%程度です。

では、実際、金融機関がどれくらいの金額のローンを貸してくれるのかですが、一般的に金融機関が住宅ローンとして貸してくれる金額は、「年収負担率(総返済負担率)」で35%まで(年収400万円以上の場合)。この年収負担率というのは、年間のローン返済の総額を税込年収で除した金額のこと。ただし、実際には、年収負担率35%まで借りられるのですが、家計を圧迫しないラインで考えると、年収負担率は25%以内に抑えたいところです。

年収1000万円の場合、年収負担率が25%だと、年間のローン返済額は240万円程度になります。月額にすると、20万円程度ですから、上記の試算は、年収負担率からも妥当と言えます。

今回はざっくりとした試算ですから、実際に家を購入するとなった場合には、頭金や返済方法、返済期間、金利等、様々な側面からシミュレーションして、家以外の教育費や老後費用なども貯蓄できる余裕があるか、家計が破綻しないかなど、確認することが大切です。

「一生住む」ことにとらわれないことが大切

ご相談者さんの場合、年齢がまだ若いということもあるので、今後ライフスタイルが色々変化するでしょう。賃貸だと、ライフスタイルや家族構成に応じて、住むエリアや間取りを臨機応変に変えたり、古くなったら新しい物件に住み替えたりできる気楽さがありますが、家を購入すると決めた場合でも「一生もの」という気負いは捨てて、臨機応変に買い換える可能性もあるくらいの気持ちで購入するのも良いのではないでしょうか?

実際、多くの方が一生住み続けると思って家を購入したけれど、様々な事情で、売却したり、人に貸したりしています。

購入するときに「貸す」「売却する」ことは考えにくいものですが、これらの可能性もあることも踏まえて、売却をする時には、ローンの残債金額を上回って売却できる、人に貸す時には、毎月のローンの金額を上回った金額で人に貸すことができる、そんな資産価値の高い物件を購入することが大切です。

そうでなければ、家は資産どころかお荷物になってしまい、住み替えをしたいと思っても、自分たちの意志に反して一生住み続けなくてはならない可能性もあります。

ライフプランの変化に対処するには、資産価値の高い物件を!

資産価値の高い物件を購入することで、ライフプランの変化に柔軟に対応することが可能です。先行き不透明な今の時代、家を購入するのであれば、将来、どれくらいの価格で売却できるかが重要なポイントになるでしょう。

賃貸するにしても家を購入するにしても、目先のことだけにとらわれず、将来に渡るご自分たちのライフプランもしっかりと考えて決めていただければと思います。今回のアドバイスが少しでもお役に立てれば幸いです。

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