1か月足らずで打率.391は.333に… 鷹・柳田、打撃不調の要因を元コーチが分析

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:藤浦一都】

打撃不振でも若手の頃から変わらぬ「必死さ」に飯田氏は感心

■ロッテ 5-4 ソフトバンク(5日・PayPayドーム)

超人ギータのバットが湿っている。ソフトバンクの柳田悠岐外野手は9月に入ってから5試合で21打数3安打の打率.143、本塁打と打点は共にゼロとなっている。5日にPayPayドームで行われたロッテ戦では2安打を放ったものの、いずれも打ち損ないの内野安打で、持ち味の豪快な打撃は影をひそめている。

今季トータルで見れば、トップの中田に3本差の20本塁打、打率.333、50打点と文句の付けようがない。しかし、8月12日のオリックス戦を終えた段階で.391あった打率は1か月足らずで6分近くも下がった。主砲の失速に呼応するかのように、パ・リーグ首位のチームも勢いが出ず、9月は1勝3敗1分とくすぶっている。

元ヤクルト外野手で、昨年まで5年間ソフトバンクのコーチを務めた飯田哲也氏は「現状の柳田はバットが下から出て、スイングが波打っている。こうなると、バットの軌道と投球の接点がピンポイントしかなく、確率が低くなる。おそらく、自分では芯でとらえているつもりなのに、バットの根っこに当たってしまっているのでしょう」と解説。「普段の柳田はレベルスイングで、投球を線で捉えることができるのですが…」と首をひねった。

ヘッドスライディングでの本塁生還は野手の心理を察知した好判断

もっとも、どんな大打者にも、多かれ少なかれスランプはある。そんな中でも、飯田氏は柳田の試合に臨む姿勢に感心するという。ソフトバンクはこの日、1点を追う6回、グラシアルの中前適時打で同点とした後、なおも1死二、三塁から栗原が痛烈なライナーを放ち、相手二塁手・中村奨のグラブを弾いた。

中村奨があわててボールを拾い一塁へ送球する間に、三塁走者の柳田が猛然と本塁へ突入。ヘッドスライディングで勝ち越しのホームを奪ったのだった。「あの場面で、二塁手には三塁走者を見る余裕が全然ない。それを察知した上での好走塁です」と飯田氏は指摘する。

実績を積み、30歳を過ぎても、若手の頃と変わらず頭から滑り込む柳田の姿を「ああいう必死さが素晴らしい。1点を取りに行く執念を感じる。野球は個人がどれだけ打てるかではなく、あくまでどれだけ点を取れるか、どれだけ勝てるかが問題です。柳田の姿勢は必ずチームに好影響を与える」と称賛した。打撃不振であっても、走塁で魅せ、チームを鼓舞する柳田は、まさに超一流の域に達していると言えそうだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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