長崎IR 事業者公募見合わせ 時期巡り関係者の思惑交錯 「余裕できプラス」「早く始め決定を」

県が実施するIRの事業者公募には国内外の3事業者が名乗りを上げている(写真はコラージュ)

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致で、県はIRを整備・運営する事業者の公募を当面見合わせる。新型コロナウイルスなどの影響で国の基本方針策定が遅れ、事業者からも延期を求める声が上がったのが要因。ただ一方で、早期に手続きを進めたい事業者もいる。公募の時期を巡って関係者の思惑が交錯している。
 「事業者から時期を待ってほしいという意見をもらった」。中村法道知事は8月25日の定例記者会見で公募の延期を示唆した。佐世保市のハウステンボスへのIR誘致を目指す県は、28日に朝長則男市長と協議。公募を当面見合わせることを決めた。
 本県のIR誘致に参加する意向を表明しているのは3事業者。香港のオシドリインターナショナル、オーストリアのカジノオーストリアインターナショナル(CAI)、そして、マカオのカジノホテルに携わる長崎市のカレントだ。県はこれ以外にも複数の事業者と意見交換を続けており、「(3事業者を含め)全体の8割超が延期を求めている」と説明する。
 公募延期について、名乗りを上げている3事業者の受け止め方は異なる。
 オシドリは公募までに余裕ができ、「プラス」ととらえる。フランスのカジノ企業「パルトゥーシュ」との連携を解消し、6月に米カジノ大手「MGMリゾーツ・インターナショナル」の元幹部を代表に迎えるなど体勢構築を急ぐ。
 オーストリア政府の支援を強みとするCAIは、有利か不利かは「どちらともいえない」。主に欧州で事業を展開し県内に事務所はない。新型コロナによる出入国制限の影響を受けているが、「時代の変化に合わせてしっかり準備していく」と強調する。
 一方「早く公募を始めて事業者を決め、入念な計画をつくるべきだ」と指摘するのがカレント。国や県が示したスケジュールに合わせて県内にいち早く事務所を構え、すでに準備を整えている。競争の公平性に問題が生じないか懸念する。
 3事業者は新型コロナによる経営への打撃について「ない」(オシドリ)、「最小限」(CAI)、「受けていないわけではないが、資金は十分に確保できている」(カレント)としている。
 県IR推進課は「競争性を保つため、できるだけ多くの事業者が参加しやすい環境で公募したい。条件が整えばできるだけ早期に始める」としている。
 IRを巡っては、全国の4地域が誘致を表明。うち大阪府・市と和歌山県が国の方針を待たずに公募を始めた。国は申請地域から最大3カ所を選ぶ。国の基本方針には感染症対策なども盛り込まれる見通し。

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