持ち家と賃貸どっち?「賃貸派」が考える身軽な暮らしのメリット

「持家vs借り家」論争というものは、ネットで常に活発化するものですが、お互いポジショントークをしている面があるんですよね。買った人は「資産価値があるからいずれ売れる。家賃を払い続けるのはもったいない」と言うし、賃貸派は「資産価値が下がるかもしれないし、台風や地震で倒壊したらどうするの?」と言います。

ここでは、「賃貸派」で生きてきた私なりの一旦の持論を述べます。


持ち家のリスク

正直、持ち家はリスクあるな、と思います。何しろ昨年10月の台風15号と19号が千葉県を襲った時、ゴルフ場の鉄塔が倒れて多くの家が破損しました。ゴルフ場も営業が継続できない状況に追い込まれただけに、損害を補填するほどの余裕はないでしょう。

あと、たとえば4,000万円で買った家の35年ローンをそれ以上のお金を払って70歳で完済し、その家が3,500万円で売れたとしましょうか。そこから小さなマンションを2,000万円で買い、手数料などを除いて1,000万円の預金ができたね、という老夫婦がいるとします。

売却益が出たとしてもしょせんはこのぐらいなんですよ。ローンの場合金利が乗せられているため、1,000万円の預金ができたとしても、それはその方がこれまで頑張って働いてきたからのこと。そして、少子高齢化で人口が減少する今の日本、空き家問題が深刻になっているだけに、いくらでも家はある。だからこそ、売却益が出るような家を持っている人なんて、都心の駅近住宅を持っている人ぐらいに限られてしまうのではないでしょうか。

私の実家は1984年に3,360万円で東京・多摩地区に父親が買った家ですが、果たしてこの家がどれぐらいの資産価値があるかはまったく分かりません。途中、数百万円をかけてリフォームもしましたし、これから両親が亡くなる場合この家の固定資産税をどうするか、といった問題まで発生してしまう。

正直、建物の価値はもはやなく、土地代だけで2,000万円で売れれば御の字ではないかと思います。しかし、その2,000万円を獲得するために不動産屋と契約をし、いつ売れるかどうか、といったモヤモヤする時間が過ぎていく。さらには更地にするための工事費用もかかるでしょう。

将来、首都直下地震が来たら、この家も破壊されてしまうかもしれません。そうなれば、引越を余儀なくされてしまう。

「昭和の理想」は幻想?

もし大災害が起きて自宅が破損してしまった場合、持ち家がなく、賃貸であれば「じゃあ、しばらくはホテルで住むか」という選択ができるんですよね。不動産を所有するということは、その土地に縛られることを意味します。昨年10月の台風でブルーシートをかけざるを得ない人生を送ることとなった千葉県の方々は、今年7月の報道でもまだブルーシートがかかっていました。

台風発生当初は業者の手配もままならず、ブルーシートで生活をせざるを得なかったのでしょうが、あれから9ヶ月が経ってもまだブルーシートなのです。業者がまだ忙しくて対応できないのか、あるいは諦めてその家を出てしまったのかは分かりませんが、賃貸の身であれば、ブルーシートになった時点で「解約お願いします」で終了です。

「解約するのならば1ヶ月前までに言いなさい」なんて言われても「はい、1ヶ月分の家賃は払いますね。ただ、敷金はちゃんと返してくださいね。屋根がぶっ壊れたことは私のせいではなく、台風が悪いんです」と主張するだけでいい。

かつての日本は「三種の神器」などに加え「夢のマイホーム」「子供は私立のエスカレーター式に」といった「理想の家族像」がありました。

ただ、もうそんな価値観なんて不要なんじゃないですかね。財産を持つこと自体がリスクでしかなくなっているんじゃないかと思うんですよ。昨今の大雨でも自家用車が浸水し、使い物にならなくなっているじゃないですか。あれも貴重な財産。「ただ走ればいい」といった10万円ほどの軽自動車を中古で買い、車検が来たら廃車にする――そんなライフスタイルも合理的として評価される時代になっているかもしれません。

そういった意味では、よっぽど見栄を張りたい人以外は立派な持ち家を買う必要はないと思います。 「年寄りに貸すのは……」と躊躇する大家さんに対しては毎度半年分の家賃を一気に振り込めばそれでリスクの低い人生を送れるのでは、ととみに考えるようになりました。

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