同士討ちのau TOM’S GR Supra関口、チームメイトとの関係性を気づかい「ごめんね」

 あとから2020シーズンを振り返ったとき、もしかしたらターニングポイントとなる接触になるかもしれない。レース44周目の5コーナー、トムスは同士討ちによって貴重なチャンピオンシップポイントを失った。

 第3戦まで、全戦表彰台を獲得。その安定性をして周囲から2020年のチャンピオン候補最右翼と目されてきたau TOM’S GR Supraだが、ランキングトップの宿命でもある搭載実ウエイト48kg+燃料リストリクター2ランクダウンが、もてぎの予選では“効いた”。

 auの予選は15番手。ランキング2番手につける僚友・KeePer TOM’S GR Supraも14番手。シーズン中盤を迎え、前半戦でポイントを稼いだトムス陣営は「確実にやれることをやって、チャンスがあれば行こう」(関口雄飛)という考え方でレースをスタートさせた。

 レース序盤こそ、2台で最後尾付近をランデブーする展開となったが、早めのピットでそれぞれ関口、ニック・キャシディへと交代したあと、状況が好転する。

「混戦のなかでGT300をうまく使えて、結構ポジションアップできた。単独では抜けないけど、前がやりあった時には刺せる位置にいられました」(関口)

 auより燃リスが1ランク大きいキーパーもまた、ピットで大幅にタイムをロスを喫しながらも好調で、キャシディが順位を上げてくる。

 だがここでピットから関口に衝撃の事実が告げられる。燃料がしっかりと入っておらず、ガソリンが足りないかもしれないというのだ。

 関口は「結構厳しいレベルの」燃費走法を強いられることとなり、前よりは後ろを見て少しでも順位をキープする作戦へと切り替えざるを得なくなった。

 関口6番手、キャシディ7番手。スターティンググリッドを考えたら、上々のポジションだ。接近する2台。そして“事件”は起きた。

■関口雄飛とニック・キャシディ、両者の言い分は平行線

 44周目の5コーナー、関口がインを閉める。そのさらにイン側に入ろうとするキャシディ。関口と右リヤとキャシディの左フロントが当たる。auは右リヤフェンダーやリヤウイング翼端板などを破損、キャシディは11番手まで順位を下げることになった。

 関口はマシンのダメージがひどく、「ダウンフォースがなくなって、3〜4コーナーが遅くなった。そこで差を詰められて5コーナーで抜かれる展開になってしまいました」と、キャシディらに先行を許し、後退していく。

 最終ラップには同様のパターンでModule NSX-GTの大津弘樹にもパスされたauは、ポイント圏外の11位でレースを終えた。

 一方のキャシディはその後もウエイトハンデを感じさせない勢いを終盤まで持続させ、6位にまで順位を上げてフィニッシュした。

 トムスの同士討ちに対する裁定はレーシングアクシデント。両者の言い分も平行線だ。

「俺からすると『いや、それは無理でしょ。なんでこっちが避けなきゃいけないの』っていう。だって当たった位置が横(同士)じゃなくて、(自分の)後ろだし。あれはニックが無理した」(関口)

「なぜ彼が僕の方に切り込んできたのか分からない。僕らは2台体制のチームなのに、受け入れ難いことだね。彼だってポイントを稼ぎたいのは理解できるけど、まだシーズンは長いんだから」(キャシディ)

 同士討ちへの見方はさまざまだろうが、接触がなければ両車ともさらに上位でゴールでき、ヘビーウエイト下で貴重なポイントを稼げていたことは事実だろう。

 チェッカー後、自分には非がないないと思いながらも同じチーム内での関係性を気づかった関口は、キャシディに「ごめんね」と声をかけたという。だが「ニックは怒ってましたね」と関口。“大人の対応”が通用しなかったことに、関口は困惑を隠さない。

 トムスの2台は張り詰めた緊張感を保ったまま、ランキング2&3位で後半戦に挑む。

「17号車(KEIHIN NSX-GT)は速すぎだけど、その次くらいにクルマは良かったし、(次戦の)富士でも行けると思う」と関口。キャシディも「ポディウムに登るスピードはあった」ともてぎで得た好感触を語る。

「もてぎより富士の方が燃リスは効く気がする」(関口)なか、さらに多くのマシンのウエイトがかさんでいく後半戦は、タイトル争いがさらに混迷を極めそうな予感がする。

 足早にサーキットをあとにする平川亮は、トムスの開幕戦ワン・ツー・フィニッシュを祝うTシャツを着込んでいた。次に2台が表彰台の上で笑顔を見せるのは、いつになるのだろうか。

2020年スーパーGT第4戦もてぎ KeePer TOM’S GR Supra(平川亮/ニック・キャシディ)

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