カブスの苦労人右腕・ミルズが今季2人目のノーヒッター達成

【カブス12-0ブリュワーズ】@ミラー・パーク

ナショナル・リーグ中部地区の首位を走るカブスは、ブリュワーズに12対0で大勝。2位カージナルスがレッズに敗れたため、2位とのゲーム差を4に広げた。カブス先発のアレック・ミルズは打線の大量援護にも助けられ、終始安定したピッチングを展開。球団史上16度目、2020年シーズンではルーカス・ジオリト(ホワイトソックス)に次いで2人目となるノーヒッターを達成した。

野球の面白い点の1つは、大記録が予想外のところから誕生するということである。ミルズは大学の奨学金を得られず、トライアウトを経てテネシー大マーティン校に入学。そこからエースとなり、2012年ドラフト22巡目(全体673位)指名でロイヤルズに入団した。

しかし、大きな期待を背負ってプロ入りしたわけではなく、トップ・プロスペクトとして認識されることもなかった。プロ入り後は故障に苦しんだ時期もあり、2017年2月にはマイナーリーガーとのトレードでカブスへ放出。今季も故障離脱したホゼ・キンターナの代役として先発を務めているに過ぎなかったが、そんな「日陰」を歩んできた苦労人が大記録を成し遂げた。

ミルズは打者を圧倒するような球威を持っているわけではない。速球のスピードは90マイル前後と至って平凡。コマンドに優れ、速球と66マイル前後のスローカーブとのコンビネーションで打者を翻弄する技巧派である。今日の試合では速球が狙ったところに投げられないことに早めに気付き、女房役ビクトル・カラティーニとの相談の結果、スローカーブを普段より増やしてブリュワーズ打線を翻弄した。

ブリュワーズのクレイグ・カウンセル監督は「スローカーブが素晴らしかった。スローカーブでカウントを稼ぎ、速球を適度に混ぜ、強い打球を打たせてくれなかった」と脱帽。右翼を守っていたジェイソン・ヘイワードは6回付近で快挙達成を予感し、デービッド・ロス監督にミルズを交代させないよう進言したという。

114球を投げて奪三振5、与四球3という内容だったが、巧みなピッチングで見事にノーヒッターを達成。最後の打者をショートゴロに打ち取ると、ミラー・パークのマウンド付近に歓喜の輪が広がった。ずっと「日陰」を歩んできた苦労人がようやくスポットライトを浴びた瞬間だった。

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