あと6日で秋分の日というのに残暑が続いている。朝晩は空気に涼しさを感じるようになりつつあるとはいえ、日中の最高気温が30度を超える地域はまだまだある。気象庁の3カ月予報(9月から11月)も、気温は東日本(関東甲信、北陸、東海)、西日本(近畿、中国、四国、九州)と沖縄・奄美で高く、北日本(北海道、東北)で平年並みか高いとしている。
熱中症など暑さ対策はもうしばらく必要となりそうだ。同時にもう一つ、注意しなければならないことがある。蚊やゴキブリといった害虫への対策だ。「ごきぶりホイホイ」などで知られる殺虫剤大手・アース製薬(東京)で虫ケア用品シニアブランドマネジャーを務めている渡辺優一さんに気温と害虫の関係や取るべき対策などを聞いた。(共同通信=榎並秀嗣)
▽気温が落ちる夜に活動
一口に害虫といっても、活動しやすい気温は違っている。
蚊は気温が25~30度で、ゴキブリは20~30度だ。適度な湿度はともに必要。気温が下がると当然、活動は弱る。冬にその姿をほとんど見ないのはそのためだ。
一方、気温が30度を超えても活動は鈍くなり、35度以上になると動きを止めるとされている。猛暑が続いていた8月下旬に、気象情報会社ウェザーニューズ(千葉市)が実施した「今夏の蚊、どうだった?」という調査によると、参加した8754人のほぼ3分の2に当たる66%が「いつもより少なかった」と回答している。
新型コロナウイルスの感染拡大で外出を控えていたことは無視できない。それでも、最高気温が30度を超える「真夏日」が連続するなど今年の夏が連年より暑かったことも一因と言えるだろう。
これについて、渡辺さんは「(害虫)対策をしなくていいと言うことを意味しているわけではない」と指摘する。人家周辺で見られる蚊やゴキブリが主に活動する夕方から夜間に掛けて、気温は低くなるからだ。人間にとっては寝苦しいとされる気温25度以上の「熱帯夜」も、害虫にとってはベストな環境といえる。
▽殺虫剤が効かない種類も
アース製薬のホームページでは日本で活動する蚊やゴキブリの種類や生態について紹介している。
一般に見られる蚊はアカイエカとヒトスジシマカ。夕方から夜に活発となる。耳元でプーンという羽音で飛ぶのはほぼ、このアカイエカと考えていい。
ヒトスジシマカはヤブ蚊とも呼ばれる。主にやぶや公園、墓地などに住み、昼から夕方に活動する。
一方、一般的なゴキブリはクロゴキブリとヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリ、チャバネゴキブリの4種類がいる。
中でも私たちに身近なのは、主に家庭で見られるクロゴキブリとビルや飲食店などに生息するチャバネゴキブリだ。中でも、チャバネゴキブリはやっかい。全長は11~15ミリと大きくはないが、殺虫剤に対する抵抗性を持つものが出てきているのだ。
▽建物への侵入は防げない
蚊は気温が15度以下、ゴキブリは同10度以下になると動きが鈍くなる。気象庁の統計データでは、10月の平均気温は東京で16・5度だ。日本列島は南北に長いので平均気温には差がある。そこで、気象庁の「メッシュ平年値」も参照してみる。すると、関東より西の沿岸部を中心に10月でも平均気温は15度以上あることが分かる。
今年はこれよりも暑いことが予想されている。蚊やゴキブリといった害虫も長い期間活動することになりそうだ。
どう対策すればいいのだろう。
渡辺さんは「家屋への侵入を完全に防ぐことはかなり難しい。そこで、必要に応じて殺虫剤などを使い分けることが有効」とする。
現在はさまざまな種類の殺虫剤が各社から販売されている。例えば、ゴキブリなら「ごきぶりホイホイ」のような「捕獲器」や直接吹きかけて殺すもの、殺虫成分の入った煙や霧で駆除する「くん煙剤」、ゴキブリが好む誘引物質を含む餌に殺虫成分を混ぜた「毒餌剤」などだ。
これらを建物の中だけでなく、外に設置する。それぞれの殺虫剤には有効期間があるので、そこにも注意しなければならないことは言うまでもない。