コロナ禍でメイクする男性が増える?40代の半数以上が自分の”老け”に直面

新型コロウイルスの感染拡大は、男性の身だしなみ感を変えてしまうかもしれません。男性のコスメブランドを持つ化粧品メーカーマンダムの調査によると、40歳代の男性の54%が、PCやディスプレイ上では「自分の顔が老けて見える」と感じていることが分かりました。

同社が先月行ったオンラインセミナーでは、コロナ禍によって他人との対面コミュニケーションが変わり、ミドル男性の身だしなみ意識はむしろ高まっている点が指摘されました。私は男性美容研究家として、ビジネスシーンにおけるメンズメイクの有用性を常々述べてきましたが、コロナ禍により、この流れは加速するかもしれません。


PC画面に映る自分の顔が気になる?

マンダムは2020年4月16日~5月25日の緊急事態宣言の過ごし方について、全国の20~69歳の男女1,110名人にインターネット上で調査を行いました。それによると、9割以上(96.0%)の人が「直接、人と対面するコミュニケーション機会が減少した」と回答。そのうちの過半数の58.3%の人はコロナ禍以前に比べて、6割未満に減少したとも答えました。

会社や学校に行く機会が極端に減り、様々なマイナスの影響がでてきた一方、自分と自分の肌や見た目に気を遣う男性が増えてきたと、同社でマーケティングを担当する田渕智也さんは話します。ZOOMなどのオンライン会議において、自分の映像を否応なく見せられるのが原因だそうです。

筆者自身も、オンライン会議に参加するときは、出かけるときと変わることなくヒゲを剃り、スキンケアをして臨んでいます。今までのように漫然と鏡に映してヒゲを剃るのとは違い、オンライン会議上では他人の目にもさらされつつ、自分の映像とも対峙しなくてはならないという特殊な状況です。

ミドル男性がオンライン会議で気づく“老化”

若い世代ならばInstagramやTikTokで自分の画像や動画を、他者目線で注視することに慣れているでしょう。しかし、多くのミドル男性は違うでしょう。今回のコロナ禍で初めて他者目線から自分の見た目を意識したという人も多いと思われます。

その時に気になるのが、思った以上に進行している老化現象。多くのミドル男性が、シミ、シワ、たるみ、肌の赤みやマスク日焼けなどによる色ムラとトラブルをじっくりと観察する羽目になりました。

同社が7月、40代男性約400人を対象に、「画面に映る自分の顔はどう見えるか」と聞いたところ、「若く見える」と答えたのはわずか7.5%。「老けて見える」と答えたのが54.1%、「変わらない」と答えたのが26.9%でした。

セミナーでは、顔の印象がどう決まるかを研究する早稲田大学の中村航洋さんが、自分が認識してきた顔とPC画面に映される顔に違和感を覚えるのは、肌の明るさとカメラの角度によるものが大きいと分析。「男性でも若々しくありたいと思うのは自然なこと」と話しました。

肌がくすんでいるだけで、若々しさは著しく減ります。また、シミが目立つと魅力度は下がるという調査結果もあるほど、見た目はその人自身の印象を大きく左右します。

印象は対面でも変わる

これはオンライン会議だけではなく、対面時でも同様です。男性の肌を研究する同社の山口あゆみさんは「マスクをすると目にフォーカスがいきます。だからこそ目周りのシワやクマが余計に目立つのです」と説明します。

先ほどの中村さんも「目は重要なコミュニケーションパーツ。とくにアジア系の人々は相手の感情を目から読み取ろうとする」と指摘します。つまり、口元が隠されている今、目はことさら重要な意味をもっている。まさに「目は口ほどにものを言う」とはこのことです。

すでに浸透し始めているメンズメイク

筆者は5年以上前から「メンズメイク」時代が到来すると言ってきました。2018年、ポーラ・オルビスグループから日本発の本格的メンズコスメブランドである「FIVEISM × THREE」が発売され、同時期にシャネルからファンデーションやアイブロウなどを揃えた「ボーイドゥシャネル」もンラインで発売開始しました。それが2年前です。

マンダムも、ミドル男性に特化したブランド「ルシード」で、シワなど特定のトラブルに対応するスキンケアや、メンズメイクを勧めています。

近年、資生堂のメンズブランド「UNO」が出した男性用オールインワンのスキンケアが大ヒット。肌の色ムラを解消するアイテムも登場しました。さらに男性用の本格的なBBクリームも売れています。

さらにデパートコスメである「ラボ シリーズ」には、肌の色味を整えて“インスタ映えする”と話題になったインスタントモイスチャラーザーというアイテムもあります。発売してすぐに欠品になったというほど人気で、男性の肌の色ムラに対する意識が変わってきたことの証拠です。

コロナ禍で男性の美容意識は変わるか

メイクと聞くと、中年以上の保守的な男性は「自分には関係ない」と拒絶してしまう人も多いと思います。しかし、そのかたくなな姿勢は世の中の動きとは逆行しています。

大学生の中にはコンビニに行くのにも「スッピンで外を歩けない」という男性もいますし、瞬時に好印象を得られるというメイクの持つメリットを認識し、ビジネスの場面で実行している男性たちも多くいます。それをあえて人前で語らないだけなのです。

自分の見た目に対する危機意識を、このコロナ禍で養えるか否かで、事態が収束してコミュニケーションが元に戻った時に、大きく見た目の差がついているのかもしれません。

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