富士通研究所、顔写真などによる他人へのなりすましを防止できる技術を開発

近年、生体情報を用いた認証方式においてセンサー部分に触れることなく非接触で本人認証ができる手段として、カメラで撮影した顔画像で認証を行う技術が注目されている。例えば、スマートフォンやパソコンなど個人端末のアクセス管理やテレワーク時の社内システムへのログイン認証に加えて、空港の搭乗ゲートや自治体、病院での本人認証など利用シーンは多岐に渡る。しかし、顔画像はSNSなどでインターネット上に公開されている場合も多く、顔写真付きのIDカードなどの紛失により画像が盗まれる場合も考えられるため、指紋や手のひらの静脈等ほかの生体情報と比較して他人の情報を容易に利用できてしまうという問題がある。さらに、不正に取得した他人の顔画像をカメラに提示して他人になりすます偽造物攻撃に対する懸念もあるため、カメラに写った顔が本物か偽造物か判定する技術が必要とされている。

IDカードなどを使った顔認証システムに対する他人へのなりすましの例その手法として、近赤外線カメラや被写体とカメラの距離を測る深度カメラなど専用のカメラを用いて偽造物特有の特徴を捉える方法や、偽造物では再現が困難なまばたきや顔の向きを変えるなど、顔画像以外に動きの情報を追加することで本人認証を行っている。しかし、これらの手法は専用カメラ本体のコスト増や一般的なカメラを使用する際に必要な動き情報の追加作業による利便性低下などの問題があるため、安価な一般的なカメラかつ利便性を損なわずになりすまし検知ができる技術の開発が課題となっている。株式会社富士通研究所は、顔画像を用いた認証方式において、印刷した写真やインターネットに公開されている画像などをカメラに提示して他人になりすます不正行為を一般的なカメラで検知できる以下の2つの技術を開発した。

1. 偽造物特有の写り方の違いに基づく偽造特徴抽出技術(トップ画)
2. 取得環境による写り方の変動に対応した偽造物判定技術

今回、一般的なオフィス環境やオフィス外でのテレワークを想定した環境などで収集した当社独自の評価データセットにおいて評価を行い、専用のカメラや利用者による所定の動きがなくても従来と同程度の精度で他人へのなりすましを検知できることを確認した。これにより、安価かつ利便性を損なわずに不正アクセスを防止し、テレワークなど社外からのリモートアクセス時のセキュリティ向上や本人認証技術の高度化によるDXへの貢献が期待できる。富士通研究所は、同技術の2020年度中の実用化を目指している。プレスリリース提供:富士通研究所

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