横浜の新たな劇場、建設費と調査費で480億円 市が概算

新たな劇場の概算建設費などが示された基本計画検討部会の会合=横浜市西区

 横浜市は23日、林文子市長が整備に強い意欲を示す新たな劇場の概算建設費と設計調査費が現時点で計約480億円になる、と明らかにした。同日開かれた検討委員会の下部組織「基本計画検討部会」で示した。委員の意見は「おおむね妥当」が大半を占めたが、新型コロナウイルス感染症が収束せず、大幅な収支不足も見込まれるだけに、傍聴していた市議からは「今やる事業ではない」との指摘が上がった。

 市の説明によると、想定する劇場は地下1階、地上5階建て。延べ床面積は約4万4千平方メートルで、内訳は①ホールエリア(約1万7千平方メートル)②創造支援エリア(約7千平方メートル)③交流促進エリア④インフラエリア(約1万3千平方メートル)⑤その他(約7千平方メートル)。

 世界トップレベルのバレエ・オペラが日常的に公演される劇場を目指し、①に2500の観客席や舞台、ホワイエなどを、②にスタジオや練習室、道具庫などをそれぞれ配置する。③は民間活力を導入し、ホールエリアの施設と西側の3千平方メートルの敷地とでにぎわいを創出することも検討する。

 建設費は約460億円で、内訳は建築物が約320億円、地下部分が約45億円、舞台設備が約95億円。1平方メートル当たり約105万円で算出した。これは新国立劇場(約135万円)より安く、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール(約90万円)より高い。これとは別に設計調査費が約20億円かかるとした。建設費は市が事業化を判断するための数字になることから、委員がそれぞれ持ち帰り、慎重に検討することになった。

 公開された検討部会を、小粥康弘(立憲・国民フォーラム)、藤崎浩太郎(同)、荒木由美子(共産党)の市議3人も傍聴した。

 小粥氏は、委員が「おおむね妥当」とした建設費について「市民感覚ではどうか、が議論されていない」とし、「700億円以上の新市庁舎整備も市民から『ぜいたくに造るな』との意見があった。市民感覚で妥当か、われわれが議論しないといけない。市会の役割が大きくなる」と気を引き締めた。

 藤崎氏は、感染症や現時点で来年度に970億円の収支不足が見込まれていることを踏まえ、「今やるべきはコロナ対策。文化芸術は重要だが、まずは市民の生活、福祉が優先されるべき」と主張した。

 荒木氏は、建設費について「恐らく460億円で終わるわけではない」と推察。「年間運営費の収支見込みすら立っていないのも問題」と指摘した。

 市は新たな劇場の候補地をみなとみらい21(MM21)地区60.61街区としている。開館当初は自主事業を主体にし、徐々に貸し館事業の割合を高めることで、運営費を当初の45億円から開館10年以内に35億円まで抑えたい考えだ。

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