将棋はスポーツ

 「読まれたら刷り返す。倍増刷です」-ん? どこかで聞いたような決めぜりふ…発言の主はスポーツ総合雑誌「スポーツ・グラフィック・ナンバー」(文藝春秋)の宇賀康之編集長。今月初めに発売された「将棋特集」が大変な評判▲1980年創刊の人気雑誌。将棋の特集は初の試みという。表紙を飾ったのは18歳のタイトルホルダー、藤井聡太二冠。コロナ禍に沈む社会に爽やかな風を吹かせた夏の最年少フィーバーは記憶に新しい▲ところで将棋は「スポーツ」なのだろうか。と、編集後記にしっかり答えが。〈18歳の圧倒的な強さに「最強」が大好きな小誌も黙っていられませんでした〉〈知力をはじめ心技体全てを懸け真剣勝負を戦う棋士は紛れもなくアスリート〉-なるほど▲棋士がアスリートなら、年齢による衰えとは無縁でいられまい。思考に瞬発力が要求される早指し戦は「若手有利」が定説だし、局面の記憶力や終盤の計算力も落ちる▲ただ、何事にも例外はつきものだ。10月に開幕する竜王戦7番勝負、挑戦者に決まったのは羽生善治九段。2年ぶりのタイトル戦登場で、通算タイトル獲得100期の偉業に挑む▲羽生さんはあすが50歳の誕生日。自らの年齢と向き合いながら盤上の敵と戦う-その姿にもきっと爽やかな風が似合うはずだ。(智)


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