「人が変わったように成長」 西武辻監督を唸らせる160キロ右腕が新人王へ驀進

西武・平良海馬【写真:宮脇広久】

25日の楽天戦では2四球も無安打無失点、ここまで8試合8イニング連続無安打

■西武 5-4 楽天(25日・メットライフ)

今季パ・リーグ新人王の有力候補である西武の最速160キロ右腕、平良海馬投手は25日、本拠地メットライフドームで楽天戦の8回に登板し、2四球を与えたものの無安打無失点。9月4日の日本ハム戦以降、8試合(8イニング)連続無安打に抑えている。今季開幕から10試合9回2/3を無安打無失点に抑え、被安打0のまま27個を超えるアウトを取ったことから“ノーヒットノーラン達成”と話題になった男が、再び調子を上げてきた。

最近は8回に登板し守護神・増田につなぐセットアッパーの役割が定着。この日は1点リードで登場し、先頭の茂木への四球と送りバントで1死二塁のピンチを背負った。ロメロにはファウルで粘られた挙句、10球目のスライダーが暴投に。ボールが一塁ベンチ前まで転がる間に、二塁走者の茂木が一気に同点のホームを狙ったが、ベースカバーに入った平良は捕手・森からの送球を受けてタッチアウト。薄氷を踏む思いで無安打無失点を継続した。身長173センチ、体重100キロの巨体だが、辻監督が「うまくタッチしたね」と評したように、身のこなしは意外に軽快で、フィールディングもそつがない。

今季は10試合目の登板だった7月17日・楽天戦まで1本もヒットを許さず、2日後の19日の同カードでは自己最速を更新する160キロを計測した。この試合で浅村に今季初被安打の適時打を浴び、さらに内田に満塁本塁打を被弾して華々しく失点。夏場も失点するシーンがやや目立ったが、9月の声を聞いてから再び上昇気流に乗っている。

「投げたら0点で帰ってくることだけを意識する」と淡々と仕事をこなす平良

25日現在、36試合に登板し勝ち負けはないが、リーグ3位の19ホールドをマークし、防御率2.08の安定ぶり。沖縄・八重山商工からドラフト4位で入団し3年目を迎えた21歳は、同い年でロッテの4番に据えられている安田、楽天のドラフト1位ルーキー・小深田らとともに、新人王の有力候補とみられる。

新人王資格は、初めて支配下登録されてから5年以内で、投手は前年までの通算投球回が30イニング以内、打者は60打席以内とされている。平良の過去の1軍登板は、昨年の26試合(24イニング)が全て。安田も昨年までの通算打席数が60打席ジャストで、資格を残している。

球速ばかりが注目されがちな平良だが、決してストレート一辺倒ではなく、今季は145キロ前後のカットボール、140キロ前後のチェンジアップ、130キロ台のスライダーも精度を増し、辻監督を「人が変わったように成長した」と唸らせている。昨年のオフには、ハワイV旅行を辞退し、マリナーズ・菊池雄星とともに米アリゾナ州で自主トレを敢行するなど意識が高い。

5位に低迷するチームにあって、「投げたら0点で帰ってくることだけを意識する」と淡々と仕事をこなす平良。新人王争いの行方は、今後の個人成績はもちろん、チームの最終順位も記者投票に影響を与えそうだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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