海外では「インフィニティ EX」として売られたプレミアムSUV
世界的ブームよりも随分早くに登場したプレミアムクーペSUVの先駆け
「日産 スカイラインクロスオーバー」は、2009年7月に日本デビューした。他のスカイラインと共通のFRプラットフォームに流麗なクーペ風のSUVボディの組み合わせという高級クロスオーバーモデルだ。クーペSUVの世界的なブームはここ数年のことだから、随分と時代の先端を行っていた。
ボディサイズは全長4635mm×全幅1805mm×全高1600mm、ホイールベースは2800mm。
ただし主な価格帯は500万円前後で、エンジンもV6 3.7リッター仕様のみ。当時同時に売られていた2代目「ムラーノ」(2008年発売/価格帯:300万円~500万円)との競合を恐れたのか、スカイラインセダンで売れ筋の2.5リッター版といった廉価仕様の設定もなく、果たして本気で売る気があったのか今となっては疑問が残るほどだ。
もう少しちゃんと売っていたら、今頃はハリアーの好敵手だったのに
結果、スカイラインクロスオーバーは目立ったセールスを記録することもなく、2016年には日本での販売を終えてしまった。ちなみにムラーノはというと、2015年には国内販売を終了。日産のプレミアムSUVは国内から消滅してしまうという体たらくだった。現在同クラスはほぼトヨタ ハリアーの独占状態で、なんとも勿体ない状況にある。
このスカイラインクロスオーバー、北米や欧州などでは日産の高級車ブランド「インフィニティ EX」(のちにインフィニティ QX)として販売されていた。ちなみにベースのスカイラインも「インフィニティ G」(のちに「インフィニティ Q50」)である。
2代目はFFプラットフォームに変身し実用性重視のスタイルに
世界初の革新的機構「VCターボ」を搭載
インフィニティ版は2017年にフルモデルチェンジし「Q50」となった。2代目はFFプラットフォームに変更され、エンジンは直列4気筒2リッターターボ。しかも世界初の可変圧縮比エンジン「VCターボ」という革新的な機構も備わり、低燃費とパワーを両立させている。また日産の先進運転支援技術「プロパイロット」も搭載した。
ただし写真を見ての通り、初代のクーペルックとは異なり、より実用性を重視したパッケージングとなっている点は賛否両論あるところだろう。
ボディサイズは全長4695mm×全幅1900mm×全高1680mm、ホイールベースは2800mmだ。
2020年11月、クーペSUVモデル「インフィニティ Q55」を追加予定
ただし、日産もその辺りはしっかり心得ていたようだ。2020年11月11日に派生モデルのクーペSUV「インフィニティ Q55」を発表すると事前告知を行っており、初代スカイラインクロスオーバーの雰囲気が再び帰ってきそうだ。
リリースでも「スポーツクーペ」のフォルムだとしているが、そのルーフラインは、かつて一世を風靡したインフィニティの名車、スポーツクーペSUV「FX」のそれをイメージしたと書かれているからさらに驚きだ。
ポルシェよりもカッコいい! インフィニティ FXとは
スポーツカーのようなロングノーズ・ショートデッキフォルムにFRプラットフォームを組み合わせたインフィニティ FXは、ポルシェ カイエンなどのプレミアムスポーツSUVのライバルとして2003年デビュー。大胆なフォルムは世界的な衝撃を与えた。
日本への導入も検討されたようだが、全長4.8m、車幅1.9mの巨大サイズということもあって取りやめとなったようだ。
なおFXは2008年に2代目となっているが、キープコンセプトで初代同様のスポーティなフォルムを継承した。のちにQX70と名称を変更している。
初代・2代目共に並行輸入で少数が国内に入っており、日本でも少なからずファンがいる。2020年9月27日現在、ネット上では25台の中古車在庫が見つかった。
それにしてもインフィニティ FX、今見てもなかなか大胆でカッコいいスタイルだ。北米では2017年で生産を終えてしまっているのが返す返すも残念なところだ。
その全容はまだ明らかではないが、インフィニティ QX55のティザー画像にチラっと写るリアエンドの雰囲気には、確かにFXのオーラも!?
最近の日産 スカイラインは、インフィニティ Q50とはデザインを変え、日本オリジナルのスタイルとなった。もしインフィニティ QX55が日本にやってくるなら、同じように日本オリジナルのデザインで、2代目スカイラインクロスオーバーを襲名し、ハリアーをギャフンと言わせて欲しいところだ。
最近の日産は再び日本市場を重視する! と宣言したばかり。これは大いに期待したい!
[筆者:トクダ トオル(MOTA編集部)]