AIが最適ルート設定 乗り合いタクシー実証始まる 五島・富江

 タクシー会社の拠点がなく、移動に不便が生じている長崎県五島市富江町で1日、人工知能(AI)を活用した乗り合い送迎サービスの実証事業が始まった。複数の利用客が予約した乗降地点や到着時刻に応じて、AI搭載の運行管理システムが最適なルートを割り出す。来年3月末まで実施し、本格運行を目指す。
 同市と五島タクシー、トヨタ自動車グループのアイシン精機(愛知県)が取り組む共同事業。システムはアイシン精機が開発し、愛知県豊明市や鹿児島県志布志市など全国10自治体(五島市含む)で導入されている。本県では初めて。
 五島市によると、富江町では昨年11月、地元に営業拠点があったタクシー事業者が廃業。町内でタクシーを利用する場合は、福江地区から呼ぶための回送料金が必要になり、住民から不便さを訴える声が上がっていた。
 送迎サービス名は「チョイソコごとう」。実証事業では乗用車1台を使い、乗客は原則、一度に最大3人まで乗車可能。富江半島内の約4200人が対象で、無料の会員登録をすれば利用できる。半島内を運行区域とし、富江商店街や富江病院、銀行、会員宅の最寄りのごみボックスなど200カ所以上の停留所を設ける。
 会員は予約センターに電話し、会員番号、乗り場と行き先、到着したい時刻などを予約。複数人の予約情報を基に、運行管理システムが効率的な走行ルートを計算し、五島タクシーのドライバーがこのルートに沿って走行する。1回の運賃は大人300円、小学生と障害者150円。月曜から金曜の午前8時~午後3時に運行する。
 1日に市富江支所前で出発式があり、野口市太郎市長は「地域の高齢者の足を守ることは課題。五島市全域にも広め、住民と一緒に持続可能な交通を目指したい」と期待を込めた。

「チョイソコごとう」の出発式で、テープカットをする関係者と使用車両=五島市富江支所

 一方、富江町で同サービスの対象外となる太田、琴石、丸子各地区では、富江まちづくり協議会が、住民ボランティアによる移動支援サービスを開始。住民からの予約があれば、太田-富江支所間を自家用車で送迎する。

 


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