ジープ「ラングラー・ルビコン」4WDの老舗が見せた“世界最高の安心感”

道なき道を走らせたら右に出るものはない、とまで言われるジープ。まさにオフロード4WDを象徴するブランドですが、中でもラングラー・ルビコンというモデルは“キング・オブ・ザ・オフロード”というクルマです。可能な限り自然に近いフィールドでジープ本来の実力を試す機会として、長野県白馬「Blue Resort 白馬さのさか」へと向かいました。


ジープブランドの悪路に強い専用モデルが勢揃い

今回はジープブランドのフルラインアップ試乗会という催しで、スキー場の斜面を走り回るという、めったにないチャンスです。オフローダーとして知られるラングラーから、都会派のチェロキー、そしてコンパクトファッション系SUVのレネゲード・トレイルホークまで揃っています。

そのラインナップをよく見ると、ルビコンとかトレイルホークといった仕様ばかりが並んでいます。例えばラングラー・ルビコンですが、ノーマルでさえも相当に悪路に強いと言われているラングラーをベースに、さらに悪路の走破性能を向上させたスーパー4WDがルビコンなのです。一大決心をする時に“ルビコン川を渡る”という表現が使われますが、まさにモデル名の由来もそれです。決死の覚悟で臨むような場所でも、走りきって見せましょう、というメーカーの自信がみなぎるモデル名でしょう。

同じようにトレイルホークのバッジが与えられたモデルですが「街乗り派のSUVでも、可能な限りラングラーに近い走破性があります」という仕様です。ジープと名乗るからには4WDのスキルでも手は抜いていません、と言うことです。各モデルのトレイルホーク仕様のフェンダー部分には「TRAIL RATED」という赤いバッジが与えられています。実はこれ、地球上でもっとも険しいオフロード「RUBICON TRAIL」で行なわれた性能試験に合格した証なんです。トラクション、渡河性能、機動性、接地性、最低地上高の5つの項目を総合的に評価し、合格したモデルだけに与えられますから、オンロードの走行ばかりではなく、オフロードの走破性も、まさにジープの名に恥じない証明です。

ルビコンにトレイルホーク。メルセデスで言えばAMG、BMWならばMスポーツのような「スーパースポーツ」のポジションにあたるモデルでしょう。

悪路の王者が本領発揮です

まずチョイスしたのは最強のラングラー・ルビコンです。走り出しは一般路、最近のクルマとしてはそこそこワイルドな操作感と乗り味ですが、不快ではありません。ノーマルよりわずかに硬い印象ですが、街乗りやリゾートでもストレス無く乗れそうです。いよいよ、そこからオフロードに進入します。今回、特別な仕様が揃えられた意味をここで理解します。ラングラー・ルビコンに与えられたルートはチェロキーやレネゲードに与えられたコースよりもさらに過酷でした。

タイヤのサイド部分にまでブロックを配したオールテレンタイヤも過酷な状況では必須

シーズンオフのゲレンデは背丈を軽く超える草が生い茂り、おまけに天候は雨が上がったばかりで、相当にぬかるんでいます。いくらラングラーを持っていても走りたいとは思わないコースです。斜面の草はこれまで走った人たちによってなぎ倒され、泥以上に滑りやすいところもあります。斜度は10度から30度までと変化に富んでいます。

そんな状況でもルビコンには専用のギア比が与えられた「ロックトラック4×4システム」があります。さっそくローレンジをセレクトして走り出すと、初級者レベルのゲレンデの角度なら苦も無く登って行きます。装着されたタイヤもこうした状況に強いマッドテレインタイヤを装着していますから、ガッチリと大地を掴んでいる感覚が伝わってきます。

徐々にコースの角度は増し、おまけに石がゴロゴロと露わになっているところでも、まさに涼しい顔で登っていきます。ジープの優れたトルク制御のお陰で、タイヤが空転するような場面はほとんどないまま、折り返し地点まで登り切ったのです。

次は中級者コースのゲレンデの下りです。すでに前走車が作った轍に沿って急坂路を下ります。草が倒れ、コースらしきものはあるのですが先も路面も見えません。まさに草藪の中をクルマの走破性だけを頼りに下るのです。当然ですが慎重さは必須ですが、ぬかるみ、滑りやすい草の上、さらには小さな石がゴロゴロとしているガレ場が次々に走り抜けていきます。30度近い下り坂でも、4輪を絶妙に制御して、4輪が路面をガッチリ掴みながらゆったりと確実に降りていくのです。その安心感の高さは驚異です。このテの本格的な4WDにとって重要なのは速くオフロードを駆け抜ける性能ではなく、いかに確実に路面を掴んで不安を感じさせずに走り抜けられるか、ということなのですが、その点においても優れていることが分かります。この世界最高の安心感が612万円(ラングラー・アンリミテッド・ルビコン)と言うのであれば、かなりコスパは高いと言えます。

悪路を軽快に駆け抜けるならレネゲード

次はジープブランドのエントリーモデル、レネゲードですが、それでもトレイルホーク仕様です。コンパクトなボディは見切りが良く、市街地でもキビキビと走る印象があるモデルですが、悪路走破性でもジープブランドとしての走りを存分に発揮してくれました。ラングラーより全長が短く、軽量でコンパクトと言うことを生かして軽快に悪路を走れるのです。

レネゲード・トレイルホークはコンパクトなボディのシティはSUVですが、悪路でも軽快に走って行けます。

ゲレンデに設定されたルートはやはりぬかるんでいて滑りやすく、藪の中に分け入って走る感じで、途中には石がゴロゴロとしているのですが、それなりに速度を上げられるような場所もあります。装着しているタイヤはサイドにまでトレッドがある、BFグッドリッチのオールテレインというオフロードでのグリップ力が高いタイヤですから、足元の備えも万全です。

コースインとともにギア比を低レンジにする4WD LOWをセレクトします。こちらはそれなりに速度を上げて走れるコース設定なので、ホイールベースが短く、ボディがコンパクトなレネゲードでの走行はストレスがありません。もちろん中間にある開始ポイントからの下りでは、さらに整地の滑りやすいコースをも安定して下っていきます。ダウンヒルで向けのときに威力を発揮するヒルディセントコントロールのボタンも押します。するとスロットルペダルを踏まずとも適切な速度をクルマ側が安定を保つように制御され、ハンドル操作だけで急坂路を降りれるのです。ジープ独自の電子制御による4×4システムが、どれだけ頼りになるかをこのときに実感できます。

見切りの効く軽量ボディを生かして、ガレ場が連続するコースをかなりの速度(それでも20km/hぐらいですが)グングンと駆け抜けることが出来ます。実は今回試したジープ各車の中で、もっとも軽快でスポーティにオフロードを走れたのが、このレネゲード・トレイルホークだったのです。

町中から郊外までごくごく普通に快適に走りながら、イザとなれば高次元の走破性を見せつけてくれて387万円(レネゲード・トレイルホーク)。小さな都市型SUVがとてもたくましく見えた瞬間です。

同時に4WDの老舗、ジープブランドの底力を改めて感じたテストでした。これから迎えるウインターシーズン、あるいは災害時にも頼りになることを再認識できました。

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