ロシアGPでは「おもしろくなるはずだったレースを見るチャンスが損なわれた」と元F1ドライバー

 元ルノーF1のドライバー、ジョリオン・パーマーは、F1第10戦ロシアGP決勝でルイス・ハミルトン(メルセデス)にレース前の規則違反に対するペナルティが言い渡された件について、最高水準の戦いを見られるチャンスがこれで損なわれたと語った。

 この日ハミルトンは、グリッドへ向かう途中のスタート練習を指定エリア外で行ったとして、2度の5秒ペナルティを科された。

 これらのペナルティにより、ハミルトンは隊列の先頭から脱落し、最終的には3位にまで順位を取り戻したものの、優勝したチームメイトのバルテリ・ボッタスや2位に入ったレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンに追いつくことはできなかった。

「ルイス・ハミルトンがペナルティを受けたことで、面白くなるはずだった優勝争いのレースを見るチャンスが損なわれた」と、パーマーは『BBC Sport』に寄稿している連載コラムのなかで述べた。

 ソチやその前のイタリアGPではレーススチュワードが自分のレースを止めにかかっているように感じた、というハミルトン自身のコメントを踏まえて、パーマーは「今のハミルトンにとって、運営母体のFIAは不倶戴天の敵に見えているかもしれない」と付け加えた。

「現実は、2度ともハミルトンとメルセデスが規則を破ったというだけのことだ。僕はFIAのスチュワードがハミルトンに抵抗しているとは思わない。単に、規則違反を見つけてペナルティを適用しただけだろう」

「ハミルトンと優勝を争うライバルたちは、誰ひとりとしてモンツァで同じ間違いを犯していないし、ソチのピットレーン出口でスタート練習をして規則を破った者もいない」

2020年F1第10戦ロシアGP ピットストップ時に2つのタイムペナルティを消化したルイス・ハミルトン(メルセデス)

 FIA自身が、ハミルトンはこの問題でメルセデスのピットウォールから誤った指示を受けていたと認定したことを受けて、パーマーは「ハミルトンには同情する。両方のケースとも、必ずしも彼のミスとは言い切れないからだ」と述べた。

 ハミルトンがレースの先頭で優勝争いを演じられなかったことで、ソチのコースとしての問題があらわになったとパーマーは考えている。パーマーは「コース上ではほとんどまともな競い合いが演じられなかった」と書き、日曜日のグランプリについて「味気ないコースでつまらないレースが展開された」とまとめた。

「今年のレースを擁護するとしたら、ハミルトンへのペナルティさえなければ、異なるタイヤ戦略を採用したメルセデスのドライバーふたりによる面白い戦いが見られたはずだ。しかし、そうしたレースを見るチャンスが奪われたというわけだ」

「ソチでロシアGPが行われたのは今年で7回目だ。それなのに、いまだにまともなレースが行われたためしがない。セーフティカーが導入されることが多いにもかかわらず、オーバーテイクはやりにくいし、マシンは度々ばらけてしまう。日曜日に導入されたセーフティカーは、ムジェロのときと違ってレースを活気づけるきっかけにはならなかった」

 パーマーは、ソチの問題について、コースがほとんど平坦であることや、90度コーナーが多いことなどを挙げた。なかでもターン2については、ウイリアムズのドライバーのジョージ・ラッセルが「カレンダー上でも最もひどい箇所のひとつだ」と評している。

「トラックリミットが厳しすぎることと、オーバーテイクの少なさとが組み合わさって、多くの人も彼と同じような意見を持っている」とパーマーは見解を述べた。

■シート喪失危機のなかで4位に入賞したペレスを称賛

 しかしパーマーは、レーシングポイントのセルジオ・ペレスについては称賛の言葉を贈った。2020年末での契約終了をチームから通告されているペレスは、4位に入賞したのだ。

「逆境に直面しているにもかかわらず、彼は素晴らしいパフォーマンスを見せた。自身への評価を固めて、確実に他のチームのアンテナに引っ掛かるようにしたいということだろう」

「彼は、4位に入ったことで来シーズンも一流のマシンに乗る力があると自ら証明してみせた」

2020年F1第10戦ロシアGP セルジオ・ペレス(レーシングポイント)

 ペレスを来シーズンのシートから追い出したのはセバスチャン・ベッテルだ。しかし彼は、フェラーリで最後のレースを続けるなかで、日曜日には不十分な走りしか見せられなかった。

「今回のレース週末もベッテルにとっては忘れてしまいたい結果となった。確かにフェラーリは問題を抱えており、ベッテルはなかなか前に進めず苦しんでいる。しかしそれ以上に、彼とチームとの関係が悪化してしまった」とパーマーは語る。

「ベッテルは今年に入ってからずっと、フェラーリのストラテジストたちを信頼していないようだ。ベッテルが自分の走りを保てていないことがはっきりしてからは、ベッテルとチーム代表のマッティア・ビノットとの間で、シーズンを通して互いへのいらだちを隠そうとしていない」

「アストンマーティンF1での新たな挑戦がベッテルをもう一度活気づけるだろうし、彼は今すぐにでもそうしたいと思っているかもしれない」

2020年F1第10戦ロシアGP セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)

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