最後はガス欠症状に見舞われながらも「僕たちの戦略はバッチリハマっていた」とコバライネン【第5戦GT500優勝会見】

 2020年スーパーGT第5戦富士スピードウェイの決勝を終え、ガス欠に見舞われながらもトップでチェッカーを迎え、今季初勝利を飾ったDENSO KOBELCO SARD GRスープラのヘイキ・コバライネンと中山雄一がシーズン前半戦の苦悩と、待望のファン動員したレースで勝てた喜びを語った。

ヘイキ・コバライネン第1スティント担当/ベストラップタイム:1分30秒565
「昨年のオートポリス以来の優勝ができて非常にうれしい。今年はCOVID-19の影響で世界中が大変な状況に陥った。僕も最初の2ラウンドは3戦できなかったしね。復帰したのは3戦目からだったけど僕たちのチームは前半戦で苦戦してて徐々に進化してきたと思う」

「今回のスティントで一番つらかったのは、最初の何周かタイヤのウォームアップに苦戦したことだ。そこは自分でも遅いと分かりながらも我慢して走っていた。そのあとはペースをつかめばいいペースで行けるのは分かっていたから、タイヤのことを考えながら頑張ったよ。僕のスティントでは前のNSXとGT-Rに近い位置をキープすることが目標だった。それもうまくできたと思う」

「あとはピットストップがすごく速かった、そのタイミングも完璧だった。僕らの戦略はバッチリハマったね。後半はチームメイトが素晴らしいスティントを走ってくれたし、すごくエンジョイできて、気持ちの良いレースができたと思っている。唯一反省点を挙げるなら、19号車を追い越すときに、ブレーキングのタイミングを少しミスしたことかな。そこでタイムを少し失ったから。あとはトラックリミットを超えてしまったことだね」

「いまはまだ世界中でみんなが苦しんでいる。その中で一番大事なことは安全であることだ。このウイルスがすぐになくなるとは思えないので、注意しながら一緒に生きていかなければいけない。そのなかでスーパーGT、GTAはうまくステップバイステップで整えてきた結果、今回のようにファンの前で走ることができた。素晴らしいことだ。やっとみんなの前で走ることができてすごくうれしい。今後どんどんファンの前でパフォーマンスができたらいいと思っているよ」

「前回まではうまくいかないこともあったけど、ポイントは獲れていたし、今回は優勝することができた。今こそ負けずにこの気持ちをキープしてチャンピオンシップに向けて頑張るよ。それと、どんどんファンが増えていくことも非常に楽しみにしている。レースの週末にファンがいてくれるのは僕たちのモチベーションになるからね。これまではテストみたいな雰囲気で少し寂しかったから、今回を皮切りにどんどんファンの前で楽しく走っていきたいね」

■『ガス欠! ガス欠!』と言いながらゴールした中山

中山雄一第2スティント担当/ベストラップタイム:1分30秒921
「ヘイキさんからバトンを受けてコース出るとき、ピット入ったタイミングが8号車と同じだったので、出るタイミングも同じだろうと思っていました。ひとつ違ったのは、僕らのピット作業がすごくよかった分、マージンが詰まった状態でコースに入れたことだと思います。僕らのタイヤのウォームアップも心配でしたが、いざコースに出てみたら前の8号車のほうがつらそうだったので、アウトラップでうまくパスできました」

「8号車は全然曲がってないように見えて、グリップをつかむのがすごく難しいんだろうなという風に感じましたね。ヘアピンで抜いたときも8号車はコースアウトしそうな勢いでアウトに膨らんでいた。僕は同じスピードでもラインに乗れたのでグリップレベルはまるで違うなという感じでした」

「そのあとは後ろから37号車も来ていて『なんでこんなに速いんだろう』って少し焦ったところもありました。そのあと今度は何周かしたら燃費もキツそうだということが分かって……。後ろに対してマージンがあると分かっていても、最後までずっとソワソワしていました。残り2周になった時点でもう大丈夫だろう、楽しめそうだと思ったところでディスプレイに『No fuel』って出て、「ヤベェな」と(苦笑)」

「寿一監督からは『ガソリン平気だからプッシュして良いよ』って言われてたんですけど、その文字が出てきたので焦りました。ファイナルラップの最終コーナーを立ち上がったところでクルマがブスブス言い始めて、最後は本当にガス欠のままゴールしました。パッシングとかしながら、やったぞというところを見せつつゴールしたかったんですけど、実際は『ガス欠! ガス欠!』って言いながらゴールしましたね」

「今シーズンはチーム体制がガラッと変わって、はじめは全然意思疎通が取れないなかでのスタートでしたが、そのなかで寿一監督がみんなが見るべき方向というのを整えてくれた。それぞれの課題もチームで共有しあいました。自分のダメなところをみんなの前でさらけ出すってすごい恥ずかしい気持ちにもなるけど、そういうところも寿一さんがしっかりフォローしてくれた」

「仮に誰かが出した課題がダメだとチームオーナーが判断しても『俺が言い訳してやるからなんでも言え』って言ってくれて、みんながどんどんレベルアップできたと思います。これだけ短い時間でここまでこれたのは寿一さんのおかげだと思っています」

「また、ピット作業もそうだし、今週に入ってからギリギリまでタイヤを選ばせてくれたブリヂストンさんにも感謝してる。TRDもクルマのセットアップで細かいところまで付き合ってくれて、そのすべてを優勝という形で終えられてよかったです。お客さんが入ってくれているなかで優勝できたのはすごく気持ちよかった」

「もてぎの段階でそろそろ結果出さないとチャンピオンの芽はもうないよって言われてたけど、今回勝てたことでランキングトップまで8ポイント差にまで詰めることができた。まだチャンピオンを目指せるところにきたことはチームみんなのモチベーションになると思うので、鈴鹿も楽しみです。次のレースもみんなで楽しめるように、みんなで盛り上げられるように頑張っていきたいと思います」

2020年スーパーGT第5戦富士 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一)

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