住宅地周辺にイノシシ出没 防護柵設置も相次ぐ被害 長崎・大浜町

小森さん宅の防犯カメラに写ったイノシシ

 長崎市大浜町の住宅地周辺で、イノシシの目撃情報が相次いでいる。庭の畑や花壇を荒らされたほか、帰宅途中の道で遭遇した事例もあり、住民は「怖くて夜道を歩けない」「けが人が出てからでは遅い。何とかして」と不安を抱える。
 同町の無職、小森勝市さん(73)宅の防犯カメラに9月29日午前6時半ごろ、自宅前の里道を通る黒い影が映った。隣人から「新聞を取りに外に出たらイノシシに出くわした」と相談を受けてカメラの映像を確認した。イノシシは狭い道をてくてくと進んでいった。「車が来ないと分かっているのか。何も警戒せず、わが物顔で通っている」。小森さんはため息をついた。

里道に残るイノシシとみられる足跡=長崎市大浜町

 小森さんによると、周辺では4、5年前からイノシシの目撃情報が増え、近年はほぼ毎日のように出没している。夜間に石垣や畑を荒らされるのも珍しくない。里道にはイノシシとみられる足跡がくっきりと残り、帰宅途中に遭遇し、怖くて道を引き返した住民もいるという。
 昨年、小森さんは捕獲隊の一員として山での捕獲作業に同行。わなにかかったイノシシはどう猛で、大人の男性3人でやっと取り押さえた。「高齢化が進み、住民でできる活動にも限界がある」。市に相談すると、ワイヤメッシュ柵での防護を勧められた。多くの家ですでに設置済みだが、それでもイノシシは平然と山を下りてくる。小森さんは「周囲には山も川もあり、防いでも防いでもきりがない。生息数を減らす対策を強化してほしい」と切実な思いを口にする。別の住民は土が掘り返されたプランターを見詰めて「もう3鉢目」とこぼした。

「住民みんなイノシシに困っている」と語る小森さん。自宅の庭と里道の間にワイヤメッシュ網を取り付けている=長崎市大浜町

 市農林振興課によると、2019年度に市に寄せられたイノシシやシカ、アナグマなど有害鳥獣の被害相談件数は1091件で、このうち農業被害は471件、生活環境被害は620件。同年度のイノシシの捕獲件数は前年度より77頭多い3809頭で過去最多。
 同課は「防護対策や捕獲対策などで農業被害は減少しているものの、市街地への出没や石垣を崩すなどといった生活環境被害の相談は減少しない状況にある」と説明。過去の被害状況を整理して課題を抽出し、対策を検討している。

 


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