『82年生まれ、キム・ジヨン』女性たちが押し殺してきた声を、映画を通して代弁する

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 韓国で大きなムーブメントを巻き起こしたチョ・ナムジュの同名作品を映画化した作品。忙しい夫を支えながら、一人娘を育てている33歳の専業主婦キム・ジヨン。彼女はある日、“他の女性”の声で話し始めます。彼女が語る言葉は、韓国社会の中で“声を上げられなかった”女性たちの心の叫びです。キム・ジヨンを通して語られるのは、韓国の現代女性たちが担う重圧と生きづらさ。私は原作を読んでいたので、映画化が決まったとき男性監督が撮ったらいやだなあと思っていたのですが、監督に抜擢されたのは本作が長編デビュー作となる女性監督のキム・ドヨン。日本の映画界でも女性監督はまだまだ圧倒的に少ないので、このニュースは嬉しい限りですね。

 監督自身、キャリアウーマンだった時期を経て、母となり、専業主婦となってお子さんを育てていたこともある経験を生かしながら、男性社会である韓国に生きる女性たちの心情をとても繊細に描きます。ジヨン役のチョン・ユミ、そしてデヒョン役のコン・ユもまた、現代社会を生きる等身大の夫婦をリアルに演じています。

 女性であるからこその悔しい思いは、多くの女性が経験していると思います。男性も、女性が嫌な思いをさせられている現場に出くわしたことが少なからずあるのではないでしょうか。私自身、日本で過ごした40年間で何度も男女間の差や多くのハラスメントを目撃してきました。その中で、どれだけ反発の声を上げられたでしょうか? 一度もありませんでした。この映画はそんな私達の声なき声を代弁してくれている作品です。★★★★(森田真帆)

10月9日から全国公開

監督:キム・ドヨン

出演キャスト:チョン・ユミ、コン・ユ

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