F1 Topic:ホンダF1活動終了で残された4つの疑問(後編) FIA-F2で活躍する角田裕毅の今後

 ホンダのF1活動終了によって、影響を受けるのはチームや現地のスタッフばかりではない。ドライバーたちの将来にもさまざまな影響を与えることとなる。後編では、引き続き、ホンダF1活動終了によって残された4つの疑問(後編)のうち、最後の2つを考えてみたい。

その3) マックス・フェルスタッペンの去就

2020年F1第10戦ロシアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 レッドブルは今年の1月にマックス・フェルスタッペンとの契約を2023年まで延長した。その詳細は明らかになっていないが、その時点でホンダとレッドブルとの契約が2021年までしか決定していなかったことから、なんらかの解除条項があり、そのひとつとして「もし、レッドブルがホンダとの契約を延長できなかった場合、フェルスタッペンは契約を途中で破棄できる」という解除条項があるのではないかと言われている。

 もし、そうなれば、フェルスタッペンはどこに行くのか。最も有力なのが、メルセデスだ。もともとメルセデスはフェルスタッペンと契約しようとしたものの、育成ドライバーとして契約していたレッドブルがF1のシート(トロロッソ)を与えることで契約を延長し、現在に至っている。トト・ウォルフ代表はフェルスタッペンの父親であるヨスの携帯電話番号を知るほどの仲。レッドブルが2022年以降も勝てる体制を維持できない場合、メルセデス移籍は十分考えられる。

 ただし、それには2つの条件が必要だ。ひとつはメルセデスの今後の体制だ。2022年以降もメルセデスがワークスとして参戦いくかどうかがいまだ不透明で、ウォルフの去就も未定のまま。これらがクリアされないとフェルスタッペンも動きようがない。

 もうひとつは、ハミルトンの去就だ。今年と来年ハミルトンがタイトルを取れば、ハミルトンは史上最多を更新して前人未到の8度のタイトルを獲得する。そうなれば、2021年限りで引退し、その代わりとしてフェルスタッペンが移籍してくることも可能だ。しかし、もしハミルトンが2022年以降もメルセデスに残留してF1を戦い続ける場合、チャンピオンを目指すフェルスタッペンがハミルトンのチームメイトとなることは考えにくく、その場合はレッドブル残留か、その他の選択肢を模索しなくてはならなくなる。

■その4) F1昇格を目指す角田裕毅の今後

 ホンダのF1活動終了は、ホンダの若手ドライバーの発掘・育成を目的とした人材育成プログラム「Honda フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)」に、大きな影響を与えることとなる。

 過去にホンダやトヨタの育成プログラムによって、多くの日本人ドライバーがF1を目指したが、そのほとんどがホンダやトヨタのF1撤退によって、梯子を外される形となって、F1への挑戦を断念しなければならなくなったという過去がある。

 現在、ホンダの育成プログラムの一員で、最もF1に近い存在となっているのが、角田裕毅だ。すでにアルファタウリのフランツ・トスト代表は「最終戦アブダビGPが終了した直後に行われるルーキー・テストで角田を起用する予定だ」と語っている。ただし、2021年にレギュラードライバーとしての起用については「それは私ではなく、レッドブルが決めることで、その前にスーパーライセンスを獲得することが条件となる」と語っていた。

 2018年のFIA-F4チャンピオンである角田は、12点のスーパーライセンスポイントをすでに獲得。今年のFIA-F3では9位となって2点を加点とし、現在14点を保有している。もし2020年にFIA-F2で4位(30点)以上の成績を収めることができれば、スーパーライセンスの取得条件となる40点を満たすことになる。

 ロシアGPを終えた段階で、角田のF2ランキングは3位で、スーパーライセンス獲得の範囲内とになっている。そして、もしスーパーライセンスを獲得できれば、アルファタウリからF1にデビューする可能性は高い。なぜなら、ホンダは2021年もF1活動を継続するからだ。

 もし、今年のF2でランキング4位以上に入ることができなかったとしても、まだチャンスはある。それは角田がホンダの育成プログラムの一員であると同時に、レッドブルが運営するレーシングドライバー育成システムであるレッドブル・ジュニアチームの一員でもあるからだ。

 したがって、たとえホンダがF1から去っても、角田にヨーロッパでレースを戦いたいという強い意志があり、かつ、レッドブルが将来、角田をF1で戦わせてみたいと思わせる走りを、残りのレースでも角田が披露することができれば、角田の将来は必ずしもホンダの決定に左右されないこととなる。

 そして、もしそのような形で角田がF1を戦い続けることができれば、それは日本の自動車メーカーや日本企業からの援助とは関係なく、実力でF1のシートを初めて手にする日本人ドライバーが誕生することとなる。

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