読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、45歳、会社員の女性。44歳で第二子を授かった相談者。今後用意しなければならない教育費と老後資金に加え、ローンの支払いもあり、今後が不安だといいます。FPの渡邊裕介氏がお答えします。
高齢夫婦で二人目を授かり妻(私)は育児休業中。生活費を貯蓄から切り崩しており、教育費、住宅ローン、老後費用を確保できるか心配です。激務のため、私は転職を希望しています。
【相談者プロフィール】
女性、45歳、会社員、既婚
同居家族について:
〇夫 51歳、会社員 15万円/月 コロナウイルスの影響で減収の可能性
〇妻 会社員(育児休業中)育児休業給付金約22万円/月 復帰(フルタイム)は2021年4月 復帰後の月収約33万円/月
〇介護や病気による家族への支援は今のところ必要ない
〇子ども 1歳(保育園待機中)、6歳(小学校1年生)"
住居の形態:持ち家(戸建て)
毎月の世帯の手取り金額:37万円
ボーナスの有無:なし
年間の世帯の手取りボーナス額:現在はなし(妻復帰後年間約130万円,ただし初年度は減少)
毎月の世帯の支出の目安:33万円
【毎月の支出の内訳】
住居費:15万円
食費:7万円約
水道光熱費:2万円約
教育費:1万5,000円習い事
保険料:〇夫 生命保険2万円 〇妻 共済3,400円
通信費:1万円
車両費:2万円
お小遣い:不明
その他:固定資産税14万円、火災保険2万5,000円、地震保険2万5,000円、車検費用20万円
【資産状況】
毎月の貯蓄額:育休前は2万3,000円 別途、児童手当は教育資金として貯蓄
現在の貯蓄総額:400万円
現在の投資総額:個別株50万円
現在の負債総額:(1)残債不明 (2)約1,800万円
●住宅ローン:2012年開始
①借入額2,100万円 親類より貸与 返済7万円/月
②借入額2,350万円 変動金利0.775% 返済期間30年 残債約1,800万円 返済8万円/月
●老後資金:
〇夫 国民年金+厚生年金 退職金はおそらくなし
〇妻 国民年金(3か月)+厚生年金(約20年)退職金1,500万円と予測(勤続15年以上で企業年金制度あり。現在勤続9年目)
●第1種奨学金 無利子 1万3,000円/2023年9月まで
渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。
高齢出産をされたご夫婦の教育費・住宅ローン・老後資金準備、いわゆる人生3大資金準備のご相談です。まずは、お二人目のご出産おめでとうございます。このご年齢でのご出産は素晴らしいことです。教育費や住宅ローン返済、老後資金について、考えるべきポイントを整理し、今後の収入や生活費の目安を考えていただきたいと思います。
まずは目標を明確にする
まずは、優先順位付けです。
大きな目標としては、「教育費」「住宅ローン返済」「老後の資金準備」です。
今回は、
(1)教育費
(2)住宅ローン返済
(3)老後資金準備
とします。
教育費は、どこまで準備する?
では、まず教育費です。
教育費は、親として大学までは準備してあげたいのか、ご相談者も活用されている奨学金等を活用するかによって計画は変わってきます。また、公立なのか私立なのかによっても準備すべき金額が変わってきます。まずは、お子さまにどのような教育環境を準備してあげたいのかを考えることからスタートです。
教育費を考える3つのポイント
ご相談者の場合、年齢も考慮しなければいけません。高校を卒業するのが18歳です。上の子が高校を卒業する時に、ご主人様が63歳、ご相談者が57歳、下の子が高校を卒業するころには、ご主人様が68歳、ご相談者も62歳となります。
最低限、高校まで公立の教育費を準備すると考えると、中学・高校の教育費合計で約280万円、2人分で560万円となります。これらをその時の世帯年収でまかなえるのであれば、家計の収支でやりくりすることが出来ます。世帯年収でカバーできない部分に関しては、事前に準備しておく必要があります。特にご相談者は年齢のこともありますので、ご自身が何歳まで働くのか、その時にいくらくらいの収入が想定されるのかによっても準備の仕方が変わってきます。
教育費準備で考えるべきポイントは3つです。
1.どこまでの教育費準備をしたいのか(高校まで?大学まで?)
2.公立か私立か
3.年間の家計の収支でやりくりできるのか、予め教育費を貯める必要があるのか
ローン返済で検討するべき3案
次に住宅ローン返済についてです。
ご相談者は、一部を親族からの借入れ、一部を銀行の住宅ローンを活用しています。8年前に住宅を購入され、当時はお子さまもいらっしゃらなかったようなので、ある程度余裕があったのではないでしょうか。現在はこちらの住居関連費用が家計を圧迫しているようです。
ご相談者が住宅ローン返済で考えるべきポイントは3つ。
1. 住宅ローンの借り換え
2. 住宅ローンの繰上げ返済のタイミング
3. 住みかえ
借り換えでコストが下がる可能性も
まず、住宅ローンの借り換えのメリットがあるかどうかを検討しましょう。銀行からの借入金利は変動0.775%です。現在の金利は金融機関にもよりますが、変動0.4%を切るところもあります。借り換えに係る手数料等諸費用を加味すると、そこまで返済額は変わらない計算となります。ただ、最近は金利上乗せ無しでがんなどの保障が付帯される金融機関もあるので、月々の返済額は変わらないが、保障が付帯されることで、既存の保険の見直しを行い、保険料を下げることも可能かもしれません。結果、保険料コストを下げることに繋がります。
繰り上げ返済をしたほうが後が楽になる
繰り上げ返済については、ご相談者の現在のご年齢が45歳です。繰上げ返済をしない場合、67歳まで返済が続きます。下のお子様の高校の教育費をカバーした上で、ご相談者の退職金などをうまく活用しての返済となるでしょう。今のまま返済していくと、ご相談者が60歳時点で残債が800万円弱となる計算になります。退職金で返せない金額ではありませんが、教育費や老後資金と相談しながら活用する必要があります。
住み替えという手段も?
最後、住みかえはどうでしょうか。家計の支出の中でかなりの比率を占める住宅ローン返済です。子どもへの教育や老後準備と照らし合わせて、どうしても返済が厳しいようであれば、住みかえも一つの手段となります。
ただし、二人目が産まれたばかりですし、ご自宅がどれだけの金額で売却出来るのか次第となるので、あまり現実的ではないかもしれません。
老後資金準備のために確認すること
最後に老後資金準備です。
ポイントは3つです。
1.どんなリタイア後の生活を送りたいか
2.公的年金がどれだけ受け取れるかの把握
3.何歳まで働けるか、その時の収入
公的年金不安が叫ばれていますが、まずは現状の制度でどれくらい受け取れるかを把握しましょう。把握する方法としては、日本年金機構が提供する「ねんきんネット」を活用しましょう。ご自身の将来の年金見込額等を確認することが出来ます。日本年金機構
ご相談者の将来受け取れるであろう企業年金についても金額や期間も確認が必要です。
そして、ご自身が何歳まで働けるのか、特に教育費の準備とも並行して考える必要があります。現在のお仕事、もしくは転職した場合でも、最低限確保しなければいけない金額を把握し、それに基づいた就労計画を立てることが必要です。
家計の整理が十分でない部分も
お子さまが産まれて間もないこともあるかもしれませんが、今回のご相談は、お小遣いが不明だったりと、まだまだ家計を整理出来ていないように思われます。お仕事が激務であったり、コロナでの影響で収入が減ることも起こり得るかもしれませんが、まずは世帯としての経済的な目標を整理し、その為にどう準備していく必要があるのかを順序だてて考えていきましょう。